『みちのく3000q・毎日一座・1週間の東北登山』 |
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★第6日目(8月11日・水曜日) 『鳥海山2236m』 (山形県) |
ルート:鉾立登山口→(象潟口)→御浜小屋→御田ケ原→七五三掛→千蛇谷→大物忌神社→新山山頂 →行者岳→伏拝岳→七五三掛→御田ケ原→御浜小屋→(象潟口)→鉾立登山口 |
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10日の朝、白神山地の十二湖を出発して日本海沿いに南下。鳥海スカイラインを通って鳥海山5合目の鉾立てにやってきました。当初4合目辺りでキャンプの予定でしたが、国民宿舎「大平山荘」にヘリコプター荷揚げをしているの作業員のおじさんに良い場所を尋ねると、「鳥海山は国定公園のため昨年より全山キャンプ禁止になった」…との情報を得て断念。 国民宿舎「大平山荘」に行って宿泊を尋ねると大部屋ならあるとの返事。係りのお兄さんから「鉾立てに行けば素泊まりの山荘がありますよ」…との有難い情報を得て鉾立てへ。 「わー拓けてる。ここが鳥海山の登山基地や。酒田からの路線バスも入っている。ビジターセンターもある。立派なお土産やさんもあるやないの」 この一角にある「厚生年金還元施設・鉾立山荘」を訪ねてみる。 「素泊まりは1400円です。炊事場使用料1人100円、シャワー使用料5分200円です」 「わー安い。連泊お願いします」 「食料お持ちでなかったら、前のレストランで食べてくださいね」 「大丈夫デース持ってマース」 「じゃあ突き当たりの部屋を使ってください」 と案内された部屋は10畳以上はある大部屋。しかも綺麗。 「今日も、明日もお客さんの予約が無いから全部使ってください」 「わー。サイコーや」 |
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ここに泊まるとなったら昨日濡らしたテントを乾かさなければなりません。早速車から出し四万十号を覆うように車体に被せて日光浴です。ザックも靴もブルーシートも小屋の周りに並べて干します。衣類も乾燥不十分のように感じるものは部屋の中にロープを張って干しました。快適快適。 |
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今回の登山で難易度ナンバーワンの鳥海山、鳥海山は「出羽富士」、「秋田富士」と呼ばれ、庄内平野と秋田平野を分ける郷土のシンボルの山と言われています。渓谷の深い谷越しに今から登ろうとしている鳥海山が「はよぅおいでよ!」と手招きをしているような美しい姿を見せてくれるはずなんですが残念ながら全容を見ることはできません。<BR>東北地方に台風4号接近ということもあり、登山は待機になるかも知れないと前夜の山荘のテレビに釘付けになりましたが、鳥海山登山は天候は良好と判断し、午前4時30分山荘を出発することにしました。天気良好と言いましたが曇りで、頂上到着までは降らないでほしいと言う願望も含まれています。暑さ対策には曇りの方が登りやすいと判断しました。ヘッドライトを付け、登山口への一歩を踏み出しました。5合目付近標高1100bから、見下ろす町並みや、遠くに浮かぶ漁り火を眺めながら1時間ほどで賽の河原に到着しました。ここにはあちこちにケルンが積まれています。高山植物のチングルマ、チョウカイフスマ、チョウカイアザミ、ニッコウキスゲ、エゾオヤマリンドウなどが、ところ狭しと咲いていました。ここはお花の宝庫です。ところどころに雪渓も残っており頂上はかすんでいてほとんど見えません。ひょっとして瞬間でもガスが切れてくれないかと希望を持ち、天候の変化に神経を使いながら短い休憩をとりながら一歩づつ登ることにしました。鳥海山は小さな虫が多く顔のあたりを無数に、まとわりつきます。幸いにジョンの周りにだけ飛び交い私は難を逃れていましたが、途中でお花摘みのため、登山道からはずれると両方の目のあたりを噛まれたのか、かゆくてたまりません。「虫がついたわ〜まだ若い証拠やなぁ」と冗談を交わしながら、歩いていきます。 | |||
賛否両論あるようですが、この登山道はよく整備されています。この辺りで掘り出した石を適当な大きさに割り、綺麗に積み込んであります。石ノミの跡がスリップ止めの役割を果たし、安心して歩いていけます。霊山ということもあり、いろいろな信者さんが行き交う道は安全なほうが良いでしょう。白神山地では目にすることが少なかった高山植物もここでは綺麗な姿を見せ目を楽しませてくれます。 |
御浜小屋を過ぎると台地の出るためやたら風の強さが気にかかります。右手に見える雪渓が流れ行く雲に隠されたり出されたり。体を撫でていくこの雲は少々体温を奪っていくのか一汗かいた後には心地良い。 扇子森辺りまで来ると鳥ノ海が白く光っている。これも火山湖なのでしょうが、高い位置にある池は神秘的なものを感じます。 この池をぐるりと回るルートもあるのですが、ひたすら頂上を目指します。 七五三掛を過ぎると道は外輪コースと別れ千蛇谷へ急激に下っていきます。ここにはまだ雪渓が残っており涼しい風が通り抜けていきます。 此処を過ぎると濃霧の中の石積みの階段を登っていきます。 もうぼちぼち頂上についても良いだろうと思い始めた頃、登山道の左手から青いレインギアに身を包んだ70歳くらいの登山者がヌーーーーッと現れました。 |
「どうされたんですか」 「新山から下る途中で道が判らなくなりまして、もう3〜40分彷徨っています。助かりました。御室小屋に行きたいんですが」 「下山されるんですか」 「はい」 「下山されるのならこのルートです。これを下れば御浜小屋に行けます」 「ありがとうございます」 そう言って別れたのに、しばらく言って振り返ると、後ろを付いて着ています。 「下山されるんじゃぁなかったんですか」 「頂上の小屋にザックを置いてますので」 「ああ。そうなんですか。ではお先にどうぞ」 と道を譲った。 こちらとしても唐突に現れた人に道を聞かれてウロッとしたのだろうか。 |
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御室と御浜を間違ったようだ。 でも「下山されるんですか」と聞いたら、「そうです」と応えられたよね。二人で顔を見合わせる次第だった。 そしと頂上台地に到着。早速山頂本殿の大物忌神社を参拝しました。 ここで終わりではありません。新山頂上まではおよそ15分積み重なった岩を登っていかなければなりません。気合を入れてクライム・オン! 鳥海山は、日本海の波打ち際から立ち上がる秀麗なコニーデ火山だそうですが、実際に登ってみると想像していた以上に変化に富んだ複雑な地形をしていました。クライミングを習っていてよかったと思う一瞬です。 |
頂上台地に到着 | 新山の頂上は後ろの山のその向こうです |
濃霧が晴れて御室小屋が、後方は外輪山 | 岩を攀じ登ります |
バランスをとって歩きます。左側はどこまでも落ちるよ | 新山には三つの穂先があります |
どうなってるのよこの山は | いったん登って奥の割れ目を目指して下ります |
登ったり降りたり、どうにか着いた鳥海山の新山頂上です。幸いなことに一瞬濃霧が晴れて360度の大パノラマです。神様のおかげかと思うほど 10分間だけパノラマを楽しむことができました。おそらくこのパノラマを見ることができたのは、私たちと、私たちの先を行く一人の若者と、滋賀県から来たという若者。そして「最後の一歩が登れない」と言いながら果敢に頂上アタックをした二人連れの初老の男性しかこの景色に出会っていないと思います。それほどに一瞬だったんです。 |
お疲れのJON | この穂先にはもう一度行きたいです |
胎内くぐり、怖かったわー | 胎内くぐりを出たら大雪渓 |
外輪山にある行者岳 | 外輪を行きます | 外輪に積まれたケルン |
下りの胎内コースには、りっぱな祠が祀られてあり、神事の山と言うことがよく理解できました。復路はちょっと危険なコースではありましたが「外輪コース」を下山することにしました。単独行の滋賀県の若者がガスの発生を怖がっていたため一緒に行動しようと言うことになり、登山道の火山岩を落石を起こさないように細心の注意を払い下山することにしました。「ちょっとこっち向いて見て、顔が腫れてるで〜」少し視界が狭くなった気はしていましたが、あまり気にすることはなく、登り4時間50分、下り3時間50分で鉾立山荘に戻りつきました。
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外輪コースは濃霧の中でした | 伏拝岳にて | ||
七五三掛で滋賀の青年と | 七五三掛の分岐 | もうすぐ登山口 |
5合目展望台までもどりました | 5合目登山口到着 |
管理人が「早いですねぇ」と、私達にしては異例のお褒めの言葉を頂きました。山を早く歩くことは決して良いことではないのですが、息を合わせてリズムよく快適に歩いた結果だったのでしょうか。 姫の顔の腫れが気になり始めた頃、ジョンも足を数十カ所、ポチも背中や股などを数十カ所噛まれていました。炎症防止にロキソニンを飲み、塗り薬を処方し、買い物にはサングラスを着用しないと歩けないほどになりました。(もとの顔知らんからエエやんか〜) ポチは管理人のおばさんと仲良しになり夕食をご馳走になるらしいですが私は顔の腫れを理由に丁重に断り、ジョンと部屋食(お粥とラーメン)を摂り早々に寝袋に入ることにしました。(どうぞ明日の朝には腫れが引いていますように!) |
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今夜のお宿は鳥海山5合目の鉾立山荘です。 | |||
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文:美智子姫 記 |
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