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独標の頂上あたりで無線の交信が入ってきました。サスケパーティが大槍の上から呼んでいます。 「サスケです聞こえますか〜?」 なつかしい声です。 「よ〜く聞こえます」 「どのくらいで到着ですか?」 「まだまだかかります。昼にはとても着けそうにありません。先に南岳小屋に行っててください〜」 「了解しました。先に行ってまーす」 そんな交信を終えたころ、雲行きが怪しくなってきました。「やばいぞ」そう思う間もなく。千丈沢の上空が真っ暗になり、いきなりヒョウが降ってきたのです。少し広めの場所を見つけザックを開けて雨具を出します。その頃今度は豪雨です、ザックの中は水浸し、合羽を着る時間もありません。雷光は見えませんが雷鳴がすぐ近くで弾けます。腰を降ろして岩陰に身を伏せますが、岩場を伝い地響きとなつて我々の体を揺すります。恐ろしい、恐い。 |
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「伏せろ!危ない!」豪雨の中、雷が鳴りやんだスキを見て前進、音を聞いて岩場に伏せ、そして安全なところを求めて進みます、生きた心地がしないとはこのことを言うのだと実感しました。本当は雷鳴より雷光の方が早いので、音を聞いて伏せていたのでは遅いのですが、少しでも安全なところを求めて進みます。 ヒョウも豪雨も恐怖を与えただけでは有りませんでした。我々にとって恵みの雨だったのです。 ほとんどの水を飲み干していたため合羽にたまつたヒョウをすくって口に含み、合羽についた僅かな水滴をすすり水分を補給したのです。雷は恐ろしいもののヒョウと豪雨は天の恵み、我々を助けてくれました。 |
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北鎌の14番目のピークを越えた頃でした。突然稜線が切れ落ちていました。岩には10本以上の残置シュリンゲがあり懸垂下降をした痕跡が残されていましたが、私達は千丈沢側のほうが難しく見えたので天丈沢側をクライムダウンして降りることにしました。上からビレイしながら姫がクライムダウン。続いて姫が通ったのと同じルートを下降しましたが、中ほどに有った40cmほどの岩が突然抜けたのです。「ラクー」姫の大きな声とともに天丈沢めがけて落ちていった。その瞬間体がずり落ち、姫の確保するザイルに助けられたのです。 | |||||||||||||||||
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当然リーダーがトツプを行ってくれるとばかり思っていましたが 「何、甘えてんねん。トップは姫や!いけ!」 「足をかけるところがありません!」 第一歩の踏みだしがどうしても見あたりません。緊張と疲労と、不安で迷っていると 「今までに全てクライミングで教えてある。自分で探せ」 「ありました!行きます!」 「よっしゃ気をつけてな!」 崩れ落ちそうな岩場を上り詰めいままでは槍の穂先だけしか見ることがありませんでしたが今は槍の根元に立っています。一歩登れるとあとは慎重にではありますがスイスイと上り詰めていける自信が沸いてきました。上で人の声がします。槍の頂上が近いのです。 「あっあんなとこから人が登って来てるよ」 槍ヶ岳山頂には多くのギャラリーがいて「槍の祠」のすぐ後ろに登りつくことが出来ました「登ったー」そう叫び、そのまま泣き崩れてしまいました。後ろを振り向くと鬼コーチの目にも涙が浮かんでいて感動の瞬間を味わうことがてきました。関心のある登山者はどこから来たかと訊ねるので「北鎌尾根から」と答えるとそれはすごいと絶賛し、関心のない観光客登山者は「北鎌倉からですか」と答えたのには全身の力が抜けた気がしました。槍ヶ岳山頂からの下山ルートは1時間も渋滞しサスケパーティとの合流場所の南岳山荘には無理と判断し槍ケ岳山荘泊まりにすることにしました。 |
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【パートナー・JONの声】 | |||||||||||||||||
北鎌尾根は急峻なところだった。地質的なものかどうかわからないが割れている岩が多かった。見た目にはどうも無い様に見えれも、触ると外れてしまう岩が多かった。ガレ場も多く歩くのも、ままならない状態だった。北鎌平あたりから上部の岩はしっかりしていたが浮石も何箇所かは踏んだので、バランスには注意を要するところである。水場は全く無いのでビバーグをする場合は、一人5リットル以上の水を携行しなければなりません。 | |||||||||||||||||
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