高島トレイル V  「抜土〜水坂峠」

梅雨明け宣言とともに晴天に恵まれ、高島トレイル「V」の実施日となりました。キャンプ場までの道のりに「土砂災害のため立入禁止」の看板が無い事を祈りながら出発することとなりました。2回目終了時の車の中で、高島トレイルの第3回目「抜土〜水坂峠」はアプローチの悪さから、前夜からのテント泊で、翌日午前6時に出発をすることに決定していました。アップダウン有りの歩行距離が20qもあることから「歩けるかしら?」と不安に思う参加者もいましたが、前夜に抜土でテント泊をし、朝の出発を早めて、ゆっくりと登ろうと言うことで意志が固まりました。今回も回送車係はポチにお願いすることにしました。
7月17日、午前9時にオリオン号は阪急石橋駅を出発、四万十号は今回は「キャンプ道具運搬車」と化し、山の様な荷物で、此花を午前8時45分に出発しました。雨天決行でオリオン号とは道の駅「くつき本陣」で2台が合流する予定にしています。天気回復と3連休ということもあり、名神高速道路は渋滞中で「豊中から京都南へは50分」と電光掲示板に表示されていました。ナビ嬢の指示に従い「右ルート」を利用しましたが左ルートがス〜イスイと順調に流れている様子です。オリオン号に左ルートを利用するように電話連絡をすると「いま右ルートを走っていま〜す」との返事が返ってきました。遅かったか〜!
大中小テントを3張り用意しました
女性用テントに5人は狭かったかな この次はどんな料理にするかな
途中の追い越し車線でクラクションを鳴らす車に気づくと、オリオン号が四万十号を追い抜いて通過していきました。(チックショー!ええ車には勝てんなぁ)合流地点の「くつき本陣」へは、ほぼ同一時間に到着致しました。12時30分、渋滞とは言え、ずいぶん時間がかかったものです。

予定では、マキノの奥に「在原の里」と呼ばれる地が、人知れずあり、車をデポするのに何度も通過はしていますが時間に限りがあるので、今までは立ち寄ってはいませんが、今回は昼食に蕎麦を食べたいと立ち寄る計画をしていました。在原の里は、今でもかやぶきの民家が残る集落で、集落入り口にあるため「在原そば」の幟旗をうらめしそうに眺めて通っていました。周囲には蕎麦の花が咲き、「メイド・イン・在原」に間違いないようです。軽く歩いて30分程度の集落らしいですが、皆、実際に住んでいる家なので、あまり迷惑な行為はしないように見学し、冬はまた雪景色がすばらしいと絶賛され、また訪れてみたいと感じるほどだと資料に書いていました。在原業平は、平城天皇・桓武天皇の孫にあたり、従四位上右近衛権中将美濃権守。しかし、貴族・官僚としての業平よりも、歌人としてあまりにも有名です。その在原業平終焉の地とされる場所がここ高島市マキノにあったんですね。

 ● 世の中に たえて櫻の なかりせば 春の心は のどけからまし
  ●ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くゝるとは
  ●から衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞ思
  ●名にし負はば いざこと問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと


しかし予想外の渋滞にひっかかり、今回は在原そばは断念し、道の駅「くつき本陣」で鯖寿司を買い、安曇川のほとりに木陰を見つけ、しばし休息をとることにしました。初夏の風は心地よく、このまま草ベットでお昼寝をしたいほどでした。念願の「とち餅」は何と残念なことに、売り切れていました。ところがどうでしょうか!ジョンが最後の1パックを、まんまと、せしめていたではありませんか、5個入りのパックを全員に分けるには数が足らず、けんかになってもと思い、山行中のレーションとして食べたそうな・・・・・。
今夜はカレー わーっ・このにおい「へしこやー」
イカの一夜干し…さすが地元!…美味しかったなあ…。
宴たけなわ…肴のうまさとへしこの辛さで…酒がすすむ進む…
「くつき本陣」から美浜に向けて走行中に、目に入った静かな湖面の三方五湖は、海水と真水が混ざり合う「汽水」状態で、おだやかで、集中豪雨のあとは抜ける様な空、綿みてぇにポッカリと浮かんだ雲、雨に洗い流されて深緑の木々がまばゆく、心も晴れやか気分です。美浜駅を過ぎて抜土への道を通り過ぎ「へしこ会館」に立ち寄りました。ここで福井名物の焼き鯖、イワシのへしこ、一夜干しイカなどを買い込み、その後ひたすら今夜のキャンプ地の抜土へと急ぎました。林道は、小石は転がってはいるものの、心配していたほどの崩落もなく無事抜土の「東屋」へ到着しました。こんなヘンピな場所ですが、我々より先に1台の車がすでに止まっていました。「高島トレイルのデポの車だろうか」と話ていたら我々の車のすぐ後ろに、もう1台ワゴン車が走ってきました。その車を目にした瞬間、姫のとっさの判断というよりも動物の感で「早く〜!荷物の前にブルーシートを東屋の中に敷いて!それから四隅に置く荷物!早く〜!遅いことは猫でもする〜」このタッチの差で沢登りに来ていた人たちは東屋で予定していたキャンプを別の場所ですることとなりました。リーダーが「半分使いますか?」と尋ねましたが、丁重に辞退され、デポしていた車も引き上げ、別の場所へと消えていかれました。時間は午後の3時30分を過ぎていました。(ごめんね。先着順と言うことで!)
車から荷物を全部降ろすと、すぐさま2台の車はデポ先の水坂峠に向けて往復3時間以上かけて走ります。臨時宿泊所「やまたびホテル」の拠点が決まるとテントを3張を完成さし、東屋のテーブルの上には夕食用の食材が並びます。夕食用のご飯とカレーは大阪で作ってきましたので温めるだけですが、翌日の昼食用のおにぎり作りや、朝食の用意など、みんなで共同作業が始まりました。ジョンがこことばかりに「クッサイクッサイへしこ」も遠慮することなく煙を出して焼き始めました。山小屋の様に隣の部屋から「うるさいっ!」と注意されるわけもなく、時折、鳥の声と小川のせせらぎが「あんたら賑やかでんなぁ〜」と苦笑いしているかの様に聞こえましたが今日は特別です。大いに騒いで、飲んで大丈夫です。そのうち真っ暗闇が訪れてきて、嫌でも寝るしかなくなるのですから、今夜は大いに楽しむことができそうです。車が戻ってくるまで準備万端整い、時間も午後6時をすぎた頃から、もうそろそろ帰ってくるのではと途中まで迎えに行くことにしました。20分ほど待ったでしょうか。見覚えのある車が戻ってきました。途中で買い込んだビールで乾杯し、くろねこさんの持参してくれたレモンと生姜が、塩鯖の味を引き立たせてくれ、(さすがっ!福井出身だけのことはありますね)アレヨ、アレヨという間に猫も食べるところがないほど、みんな上手く、つっいていただきました。姫のイタドリもみんな完食してくれてうれしかったです。あっこちゃんの漬物もサイコー
夕餉がすむと、用意していた歌集でみんな楽しく歌い、星が出たら星を眺めたり、懐中電灯のスポツトの明かりで今回の感想の発表をしたりと青年時代に戻った様な、はしゃぎぶりが抜土の山々に遅くまでこだましていました。朝の出発は午前6時と決め、それよりも10分でも早く、20分でも早く出発することにより、暑さ対策になるということになり、それぞれのテントに入ることとなりました。私は誘眠剤を1錠飲みましたが、川の音がドシャ降りの雨の様に耳に付き、午前2時まで寝付くことができませんでした。仕方がないので、もう1錠、追い薬を飲み、やっと寝たのが午前2時を過ぎていたと思います。そして4時前テントの外は何やら賑やかで「やっと今眠ったところなのに〜起こすんだもんなぁ」と、独り言を言いながら朝食を済ませ、テントを撤収し、荷物を四万十号に積み込みました。見送り隊のポチも大御影山登山口まで一緒に歩き、順調ならば10時間後の午後4時には、デポしてある車のところで出迎えを受けることとなります。
前回「大御影山登山口」の看板が抜け落ちていたので木ネジとドライバーを持参し修繕をしようとしましたが、既にきちんと修繕完了していました。(高島トレイル事務局に看板が落ちてるとクレームしたんは姫!アンタちゃうの?!)
キャンプ場所でもあり、スタート地点の抜土(ぬけど)は標高570bの地にあり、涼しくて爽やかな別荘地みたいです。前日の大雨で蚊などの虫たちも洗い流されたのか、蚊取り線香も必要なさそうですが一応テントの中に香取線香を1個づつ、ぶら下げることにしました。
18日、日曜日、午前6時、抜土から近江坂を越え大御影山到着が午前7時50分、みんな、まずまず快調なすべり出しです。本日の歩行距離は20q、アツプダウンのある登山道の20キロは相当な覚悟がいります。天気は快晴、高島トレイルで3回目にしてやっと琵琶湖や若狭湾が望めそうです。大御影山からは1時間もすれば大日尾根に到着するのですが、20キロと言う長丁場の歩き初めと言うこともあり30分過ぎたあたりで水分補給の休憩を取ることにしました。以後は50分経過毎に休憩を取り(頂上まであとわずか10分であっても50分経過すれば休憩)近江坂まで来ると、スタートの愛発越から約20q進んだことになります。全長80qですからやっとこさ、4分の1進んだ計算になります。カエデ、イワカガミ、山ぼうし等を鑑賞することができました。
朝6時ポッチーに見送られて出発です
大御影山(950.1b)。ここからはブナ美林を抜け、大日尾根(840b)、更に2時間で三重嶽(さんじょうだけ974.1b)に到着です。高島トレイルでここが一番高い位置になります。景色も最高に美しく、左に日本で一番大きなみず湖・琵琶湖を眼下に見下ろせば、右方向には若狭湾が見えて、驚きのビュースポットにみなさん十分楽しめたのではないでしょうか。更にブナ美林は続き武奈ヶ嶽(865b)到着です時間は午後2時20分、予定通りのタイムスケジュールに沿って順調で、一人の体調不良者も出ていません。草稜と、琵琶湖若狭湾展望が素晴らしいです。3回目にしてやっと琵琶湖や若狭湾を眼下に見ることができました。美しいっ!の一言です。!はや、秋を告げるトンボの乱舞も多くみることができました。
抜土を出発 近江坂にあがる
大御影山とうちゃく いつもの…デン
武奈ケ嶽を目指して草稜を行きます
ここで昼食です 随分来ました…あれが大御影山です
赤岩山西峰(730b)からは、ただひたすらに下ることになります。ひたすらに下ると言っても、少々のアップダウンは山には付き物です。約2時間かけて本日のゴール水坂峠(標高280b)鯖街道・九里半街道に出ることができました。ゴールの水坂峠から、逆コースで出迎え隊のポチが登ってくるのを無線で確認できました。待機中に「くつき本陣」で、とち餅を買ってきてくれておりゴールでみんなでおいしくいただきました。アンコがおいしかったよ〜。
 
荷物の整理をし、ミーティングを終え、それぞれの車で帰路につくこととなりましたが帰りも湖西線は異様な渋滞でイライラするばかりでした。帰宅時間が遅くなるからと風呂に入らずに戻りましたが、渋滞の中を走るより「比良トピア温泉」で汗を流し、少し時間をずらす方が渋滞に巻き込まれずに済むというものです。
 
今回はアプローチの関係で20qという長い山行でしたが、ゆっくり歩き、上手に休憩を取り、全員でゴールを踏むことができました。壮大なブナ美林の中を歩くとき、映画のシーンかと思えるほどの感動がありました。高島トレイルは参加者の皆様が参加をしてくれると言うことが大切なのはもちろんの事ですが、車を提供してくれるオリオンさんの協力、回送係のポチの協力がなければ実現できない秘境コースだと、回を重ねる度に感じずにはおれません。20キロと言う長い山道であったとしても「上手な山歩き」ができれば何の支障もないことを、今回は全員が感じ取ったのではないでしょうか。
今回の地図には予定時間が入っていました。とても参考になり「予定通り」なのか「遅い」のか「早いのか」がわかりました。通過時間も、ほぼ予定通りだと言うことがわかってもらえるのではないでしょうか。
GPSデータ
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GPSデータ
文:久田美智子 写真:GPSデータ 鹿島秀元