一峰の頭で先行のパーティを追い越し、二峰の急登をこなす。一峰の頭から見た二峰はどう登れば良いか解らないくらいだったが、いざ取り付いてしまえば技術的にはどうということはなかった。ただ騙し騙し体を使っているのが辛かった。上りきるとしばらく水平の痩せ尾根の上を歩き、少し下って二峰の懸垂場へむかう。こんなスカイラインばかりだと山も楽しいいのだが。右手には八ッ峰がくっきりとその稜線を浮かべている。来年はあの峰を通して見たいと思うが、ここでこの有様ではとうてい無理かも知れない。

懸垂場には3組が待っていた。まあ30分はかかるだろう。
みなとさんの懸垂
ゆあささんの懸垂 二峰の懸垂場 寛リーダー懸垂下降中
頂上への急登道から二峰をうを振り返る 源次郎尾根二峰 懸垂の手順
剣岳山頂へはあと1時間 まだまだ急登が続く 別山尾根と奥は薬師岳・北薬師岳
剣岳山頂にて 剣岳山頂から見た源次郎尾根
別山尾根を下る 早月尾根との分岐
剣沢から一気に駆け上がる 源次郎尾根 全景
カニのヨコバイや前剱あたりはどうにか足が進んでいたが、途中のケルンのある広場では、ほとんど脱水状態だった。みなとさんに水をもらい、会長に水をもらって凌ぐが一服剱のコルでは待った足が動かなくなってしまった。ゆあささんとせんせいに荷物を軽減してもらい どうにか一服剱の上に立つことが出来た。一服剱の上にあった茶色くなった雪の塊を会長からもらい ボンの窪を冷やす。すこし楽になってきた。
ここからは剣山荘が見える。20分もあれば下りきるだろう。歩くほどに山荘が大きく見えてくる。なんとか陽のあるうちに下山できそうだ。

別山尾根を下りカニのヨコバイから前剱、一服剱と通って剣山荘に辿り着いたときには陽は西に傾いていた。水分切れでヘロヘロ、此処でオレンジジュースを買い求め一気に流し込んだ。それでも水分切れした体は元に戻らない。これからテント場まで30分はかかる、途中沢の水をヘルメットで汲んで頭からかぶるがまったく効果なし。それでも何とかパーティについて歩き 新しくなった剣沢小屋に到着。
目前に見える剱岳本峰と源次郎尾根がはっきりと見える。あれを登って一周してきたのか。感慨もひとしおだ。ここで全員ビールを飲むと言う。二本も飲む猛者もいるが、私は350mlをどうにか飲み干した。それにしてもこんな短時間で飲み干したことはなかった。常々「350mlは致死量だから」そんなことを言ってみんなを笑わすのだが今回は冗談ではなかった。
飲み終えてテント場に向かうみんなの後について歩けない。脱水症状時の水分補給にアルコールは絶対にいけないと耳にしたことがあったが…そのようだった。10分ほどでテント場まで上がれるのだが、一歩また一歩、後ろから誰も追いついてこないことを祈りながらテント場に向かっていた。
夕食後メンバーは遅くまで呑んでいたようだ。源次郎尾根ルートを登頂した満足感に浸りながら話しに花が咲き、口元に運ぶカップの回数も増していったことだろう。私はテントに帰るなり震えをおこしシュラフに入って一時間ほど唸っていた。せんせいに紅茶を作ってもらい一欠けらのパンをかじって夕食とした。


右上の×印で戻ってください。