09夏山・甲斐駒ケ岳・仙丈ケ岳
2009.07.18

●第2日目の7月18日(雨)
朝4時起床。
窓越しに外に目をやると薄明かりの中に降雨が伺える。残念ながら外は雨です。出発しようとしているパーティもあり少々雑然としている。まだ眠っている人も多くいるだろうにガラガラと熊鈴を鳴らしてウロウロしている登山者がいる。無神経にもほどがある。
午前5時15分、「一足お先に」チームの出発を見送り、後発チームも出発の準備をします。午前6時には甲斐駒岳2967bを目指して、長衛荘を出発しました。北沢峠が2032mですので、935m登ることになります。不要な荷物は長衛荘に預けて行くことができるため、雨で疲れが予想されるため少しでも身軽くして出発することにしました。朝食にもらった弁当は途中雨の中で食べるのは大変なため、出発前に無理矢理、お腹の中へ流し込んでいきました。「一足お先に」チームとは駒津峰で追いつく計算です
先発隊の出発です。 後発隊の出発です・
雨は予想以上に降り続き、おまけに強風も吹き視界も悪く甲斐駒岳頂上を諦めなければならないかも知れません。しらびそや、ダケカンバの樹林帯の中では風は上で」音を立てているだけなのですが、尾根筋に出ると体を揺らします。きついとにかくきつい、森林限界を抜けると歩行が困難になるかもしれない。「駒津峰まで行こう。そこで判断しよう。登頂を諦めたらゆっくりと仙水峠に下りよう」と言うことになり雨の中をゆっくりと登っていきます。
ところどころ小川のように水が流れており「こんな時、沢歩きを経験しておけば怖がらずに平気で通過できる」と言いながら全員無事通過していきました。六方石から上は、岩場の直登コースを予定していたのですがこの風雨では下山も仕方がありません。
駒津峰で全員が合流し、リーダーの下山の決断に従うことにしました。北海道の事故が脳裏をよぎり、安全のために迷わず下山することにしました。
 「ここからは姫がリードしてくれ」
今まではアドベンチャーさんがリードでしたが体力低下者も出て来たためリーダーのサポートをしてもらい、去年登山した経験から姫がトップを歩くことになりました。
下山中も容赦なく横風が頬を殴りつけていきます。このルートは木の根道を落ちるように下っていきます。雨に濡れた木の根はすべり、土は泥と化しているため下手に足を置いては滑ってしまう状態が続きます。登ってくる登山者も多く、狭くてゴロゴロ石の道や木の根道ため交差するのに大変苦労をしました。高山病にかかった者、膝を痛めた者、体力が低下した者が続出したものの、どうにか下って
いきます。まもなく仙水峠というころ雲が切れ視界が拡がります。「ウアーッ」誰言うとも無く感嘆の声が上がります。栗沢山の山容や摩利支天の基部がくっきりと現れます。
晴れるのか
下山を選択したのは間違いだったのか。そんな弱い気持ちが心の中を走ります。そうこうしているうちに仙水峠に到着。仙水峠も風は穏やかではなかったが、しばら休憩をして摩利支天の基部にあたる岩場の景色や峠一帯に広がる異様なガレ場をしばらく楽しむ。
ここから仙水小屋を通り北沢峠へと下って行きます。ここできつい下りは終わったものの、ここからはゴロゴロの石道を延々と1時間以上。沢筋と合流するといくつかの堰堤を越え北沢峠に向けてひたすら歩きます。山を下りたと言う気分からか、話しも弾み始め、高山植物を見つけては立ち止まる光景が多くなりました。後ろからリーダーがちょっと!スピート落として!」と声が飛びます。「私は同じ速度でゆっくり歩いているのだけれど」と独り言を言いながら、列詰め休憩を何度も取りながら下ります。丸太橋のところでは最後の人が渡り終えるまで待ち、ロープが垂れている悪路では最後の人が通過するまで待ち、孤独なトップ役を黙々とこなし続けました。こなし続けたとは自分自身にだけ通じていることで、それでも「早いぞ」と声が飛んできます。いつかこの体験が身に付くことがあると信じて同じ速度を保ちながら歩き続けました。
あとでリーダーに歩行状態を尋ねると、「リードに問題は無いんだが、疲れた人と悪路を上手く歩けない人がいるため列が分断していたのでつなげるように指示をした」とのことでした。
ウオーキングが身体に染みついている人は、平地になると、俄然足が速くなり北沢峠間近になるとトップをを追い抜くほどの元気が回復していました。
山小屋「長衛荘」に預けていた荷物を受け取り、2泊目の大平山荘へむけて歩きます。北沢峠から100メートル下に位置する大平山荘への道は九十九折の長くて遠い道のりの様に感じました。
雨はまだ降り続いており、明日の天気も期待できそうにもありません。明日も「一足お先に」グループを作り30分早めに出発することを打ち合わせし、都会では信じられない早い時間の
午後7時には、消灯となりました。

文:美智子姫  写真協力:鹿島秀元
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