行場巡り
 ●第1日目 10月16日水曜日) 霊峰石鎚山登山 四つの鎖場を行く
石鎚山へは2005年の7月にウオーキング協会の人達100名連れて登りました。山は初めてと言う人もいて鎖場で身体が動かなくなりロープで救助に行く場面もあり、いま思うと恐ろしい企画でした。当時の責任者に「トレーニングをして体力具合を見たい」と提案したら「そんなことしたら参加者が減る」と却下されました。白馬岳の時も同じ事の繰り返しで、私達はその時の事を教訓にウオーキング協会から卒業し、自分達の安全・安心の山の会を発足しました。だからトレーニングには人一倍時間をかけることを学んで今日に至っています。
何度も訪れているはずなのに記憶に残っていない不思議な山・・・今回こそ石鎚山を楽しく記憶に残る思い出いっぱいの山行にしたい、気の合った仲間同士で、ゆっくり、のんびり景色を楽しみながら、鎖場も楽しみながら登りたいと、贅沢にも山頂小屋に一泊することにしました。既に紅葉便りも届いています。
10月15日22時50分ハービス大阪前から「せとうちライナー」の夜行バスでの出発です。翌朝の6時に伊予西条駅に到着予定です。
 夜が明けた頃、高速バスは予定時間よりも30分も早く到着しました。まずはコインロッカーを探して帰りの入浴用の着替えを預けました。早朝だと言うのに太鼓の音が聞こえ、ハッピ姿の人達が大勢行き来しています。駅前には「西条まつり」の神事が執り行われる様子でした。
ロープウエイ行きのバス発車まで2時間あるので、まつり見物となり、雄大な御神輿(だんじりと言うらしい)の出陣式(?)に立ち合えてお得感が満載です。
早朝から営業していると情報にあった、さぬき県名物の「うどん」は、残念ながら見つかりませんでした。町行く人に下山後に入る温泉「武丈の湯」を聞くと首をかしげられ、タクシーの運転手に聞くと「たけじょうの湯」ではなく「ぶじょうの湯」の事でした。地名はむずかしいのぉ~
▲伊予西条まつり▲ 
▲ロープウエイで成就社へ▲
午前7時43分発せとうちバスでロープウエイ乗り場まで約1時間かけて走りました。車窓からは少し色づいた木々が見えます。バスの中は登山者と四国霊場詣りの人達が乗っていました。ロープウエイ乗り場前でバスを降りると、登山口と記した急な階段を登り、役行者像が立ち並ぶ異様な光景の中を歩き、ロープウエイ乗り場に到着しました。20分間隔で運行しているため待ち時間も少なく、一気に標高1300mの地、石鎚神社成就社駅までやってきました。
午前9時、身支度を整えていよいよ出発です。土の感触が心地よいです。大きな鳥居をくぐり、そこから先は石鎚神社の神域となります。道中の無事を祈願しいよいよ石鎚山めがけて出発です。
夜行バスの疲れもみせず、みんな元気です。70歳過ぎではありますが永年山登りとクライミングを続けている仲間達です。みんな快調なスタートをきりました。 
▲試し鎖場の頂上・前社ケ森▲ ▲四国山地遠望▲
古くから修験道の山として知られる石鎚山。弥山山頂、中腹、麓には石鎚山を神体山とする神社があり、麓の石鎚神社本社、山頂の奥宮頂上社、中腹の成就社と土小屋遥拝殿の4社を合わせて「石鎚神社」というのだそうです。
石鎚山(1982m)は、役小角が最初に登ったといわれ、空海も修行したという古代からの山で、富士山や白山、立山、大山などとともに日本七霊山のひとつに数えられています。登山道は北側伊予からの表参道と南側土佐からの裏参道があり、私達は北側伊予からの表参道を選びました。
いずれのコースからでも鎖場の手前で合流します。そして、一の鎖、二の鎖、三の鎖をよじ登り(無理な時は迂回路あり)弥山に到着です。山頂はその先、天狗岳という岩峰があり体調を見て翌日の朝に登ることも考えています。山頂付近から望む瀬戸内海と土佐湾は絶景らしい。
石鎚山と言えば何と言っても有名なのは鎖場です。修行用の鎖だから険しく厳しく、下から試の鎖(74m)、一の鎖(33m)、二の鎖(65m)、三の鎖(68m)の4つの鎖場があります。これらは登山用に設けられたものではなく、修行のためのもの。試の鎖はその名の通り上り下りできるかを「試す」ために備えられているので、上がっても下りてこなくてはなりません。どの鎖場も垂直に近いような岩場をまるでロッククライミングのように登っていくことになるので、みんな気合が入っています。
山裾の紅葉はまだの様で「テレビで見頃って言ってたけど少し早いかなぁ?」と言いながらも色づき始めた山々は美しく、高度をあげるたびに美しい光景が迫ってきました。今回は山頂小屋で泊るため、ゆっくり時間をかけて登りました。 
▲八丁坂を登っていきます▲ 
▼長い階を登ると試し鎖場です▼ 
 やっと「試し鎖」に到着です。見上げると終わりのない様な長い長い鎖に少しためらいながら「こんなに長かったかなぁ?」と言いつつ、安全対策でヘルメット、スワミベルト・カラビナを装着し74mに挑戦です。登り始めると途中でギブアップしてもお助け道はありません。今なら迂回道を行くことができますが、みんな迷わず鎖に取り付きました。身体が馴染んでいないのと鎖の輪に足が入らないのとで時間がかかりましたが何とか登り切りました。
今度は鎖を使っての下りです。「ロープがあれば懸垂下降でスーイスイなのになぁ!」と言いながら悪戦苦闘で鎖を降りてお休み処に到着しました。美味しそうなあめ湯の小旗が風に揺れており、ジョンが「あめ湯飲みたいなあ・・・」と言えば「帰りにね」と、はぐらかされて通過しました。(帰りは閉まっていました・・・笑)
▲試し鎖場の頂上・前社ケ森▲ ▲試し鎖場の頂上・前社ケ森▲
▲夜明峠▲
▼一の鎖場▼
 12時30分夜明け峠を通過です。「一の鎖」は33mと距離も短くアッと言う間に通過しました。この頃になると身体も慣れてきて感を取り戻した気がします。「一の鎖」を過ぎるとしばらくは登山道を進みます。
▲一の鎖場▲
の鎖場▼
  「二の鎖」取り付き手前にある展望台までやっとの思いで歩いてきました。「なぁ!お昼にしないっ?」私だけが疲れているとは思いたくなくてみんなに同意を求めました。「よしっ!飯にするかっ!」階段状の見晴らし台は「土小屋」やスカイライン方面への分岐となっていました。
「二の鎖」は65mあり「試し鎖」よりも少し短めですが斜度がきつくなってきた気がしました。鎖も大小、三角と混じっており、どれに掴まるか人によって違うので前の人の足の置き場などは参考にはなりません。そんな中、岩場の陰にリンドウの花が咲いていました。カメラを出して撮影するjunkoちゃん、余裕あるじゃん!
▲二の鎖場▲
▼三の鎖場▼
 
▲三の鎖場を終了して頂上へ▲  
 そしていよいよ最後の鎖場前に到着しました。長めの休憩を取り「三の鎖」を登るため気を引き締めて取り付く準備をしました。多くの登山者がいるのに鎖場には前も後もだ~れもいません。みんな紅葉目的で来ているらしく鎖場は見上げるだけで通過して行かれます(あるいは過去に鎖場体験済み?)(あるいは恐ろしくてスルーか?)おかげで慌てることなく68mを思い思いに登って行けそうです。(後ろから人が来ると焦るしね)
この三の鎖を登攀すれば弥山、頂上小屋です。途中に細い鎖がかかっており「おっこれが三の鎖かぁ?」と言うと「そんなわけあるかぁ!」と檄が飛んできます。三の鎖への通過点にも細い鎖が垂れ下がっており道なき道を進んで行きました。
目の前には、ほぼ垂直に立つ、どこが終了点かわからないほどの長さの「三の鎖」が待ち構えていました。「ヒョーっ!これは手ごわいぞっ!」ほどほどに疲れも出始めています。68mを登れる元気が残っているかどうか思案のしどころです。「岩を登る技術は教えてある、後は各自の体力やっ!無理せんと一歩づつ丁寧に進めっ!」ジョンの声に勇気を奮い立たせ、トツプを姫、続いてjunkoちゃん、靖ちゃん、ラストをジョンと続きます。
小さめの鎖の輪には足が入らない事、トライアングルの様な三角の鎖は足を入れると揺れる事、大きめの鎖の輪には足が入り快適である事を学習し、みんな黙って黙々と登ってきます。私は時々行き詰って「ちょっと待って~間隔を開けて~」と後続に声をかけながら進んでいきました。
「こりゃあ手ごわいぞ・・・」初めてそう感じました。岩場が濡れているのです。足の置き場を間違えるとズルッと滑ってしまいます。「間隔あけてね!」何度も、そう言いつつ鎖の中に足を突っ込んだり、安定した岩場に置いたり、置き場のない時は不安定な三角の鎖に足を入れたりと一歩一歩の現状が異なり、足の置き場を考えながら進みました。
背中の荷物が、やたらと重くなる感じがしました。すぐ後ろにjunkoちゃん、少し距離を置いて靖ちゃんとジョンが見えます。上を見上げてもまだ終了点は見えません。「ハァー・・・まだかぁ!」足場の良い所で2度ほど屈伸運動をしてやっとの思いで鎖場終了です。登ったー!
すぐに自己ビレイを取り、後続者の写真撮影をしました。こんな光景逃がしてなるものかと言う思いと、ジョンの代わりに私が撮っておかなくてはと言う思いでした。全員が登り終えたら、私達を見ていた若者達から拍手が沸き起こりました。彼らは鎖を下っていくらしいです。(オドロキ・・・)
▲ 夕陽に映える天狗岳▲
山頂小屋からの天狗岳の雄姿はまさに「絵にも書けない美しさ」でした。写真やテレビ映像とは違う生の感動をしばし満喫しました。至福のひと時です。このまま続けて天狗岳とも考えましたが疲れ果てた身体で行っても楽しくないと判断し天気も崩れそうにないため、翌朝天狗岳を踏むことにしました。

チェックインを済ませお部屋に荷物を置くやいなや、ドデーーーーンとひっくり返りました。この大満足感は鎖場通過したからこその感動だと思いました。山頂の温度10度です。何もせず立っていると体の芯から冷えてきます。午後5時の夕拝を済ませてから食事となります。山小屋では珍しいバイキング方式でカレーライスの美味しかったこと・・ビールで乾杯、夕日を見たり、お月様見たりしましたが午後6時38分にはジョンは夢の国にいっていました。山小屋の夜は早く午後の9時消灯を知らずに就寝いたしました。