レスキュー 2 | Yamatabi Club | |
雪山登山 有馬四十八滝で見たレスキューの現場 | ||
これは山岳会の雪山のトレーニング時に遭遇したレスキューの状況です |
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山岳会の雪山に向けてのアイゼントレーニングで遭遇した時の状況です。 下呂温泉、草津温泉と並び日本三名湯の一つ有馬温泉から裏六甲山にかけて「有馬四十八滝」があります。表六甲山のロックガーデンに対しアイスガーデンとも呼ばれ人気のコースになっている所で、とくに冬は滝が氷結するため「有馬四十八滝氷瀑めぐり」として多くの登山者を集めています。 山岳会や山岳同好会の多くのパーティは雪山のアイゼン・ピッケルトレーニングにここを利用しているようです。 この日、私たちもアイゼン・ピッケルトレーニングに訪れました。有馬温泉バスターミナルから多くの登山者が列をなして「有馬四十八滝」を目指しています。 「こんなに多いと途中のすれ違いに時間がかかるかもしれない」と呟きながら列について緩やかな温泉街の道を登っていくとやがて登山道に合流。 蟇滝を過ぎ、最初の氷瀑「七曲ノ滝」に着いたころ周期的に爆音が聞こえてくるようになった。1〜2度は何気なく聞いていたが回数を重ねるうちに 「ヘリが旋回している。滑落者の捜索かなあ」 「事故があったのかもしれないな」 仲間とそう話した。 15分ほど滝の下で休憩をとり、もと来た道を戻らず、滝の左側に延びる細いルンゼをのぼる。雪が付いていればこそ登れるルートであり、トレーニングにうってつけのコースである。初心者とマンツーマンでアンザイレンしコンティニュアスで登っていく。 「上空でヘリが回っている。気をつけて行こう。危ないって感じたらスタカットに切り替えて安全策をとろう」 言葉を交わして2番目のパーティとして列に付いた。先行が危険箇所を通過するのを確認して歩き始める。一歩一歩アイゼンを雪面に噛ませ、ピッケルを確実に打ち込み歩を進める。途中1箇所危険なところがある。ここでザイルパートナーを木の根を支点に待機さる。どうにか危険箇所をパス。20mほど上で木に自己ビレイをとって肩がらみでパートナーを確保。テンションを感じることなく通過。ここからは藪漕ぎだが冬枯れしていて夏の沢の藪漕ぎほどの苦痛は無い。登山道に出る直前は木の根を踏んでの直登になる。登山道に着いたら再び肩がらみで後続を確保。確保するほどのことは無いがロープが繋がっているため安全策。全員登山道に上がって、最初のトレーニング終了。 ここから百間滝、似位滝へと向かう。山肌を縫うように付いている細い道の左側は笹に覆われていて解かり辛いが落ちると止まらないほどの急傾斜。仲間に注意を促しながら進んでいく。 しばらく進むとオレンジ色の担架をもった救助隊員が数人の登山者に声を掛けている。 「広い登山道まで戻ってください。傷病者を通してください」 「引き返してくださーい」 数人の救助隊員が異句同音に戻ることを告げながらこちらに来る。 「私たちも戻ろう。谷側には注意して」 後続の登山者にも戻ることをお願いしながら引き返した。 広い登山道は多くの登山者で塞がれている。 「広い登山道を塞がないように路肩の雪を踏み込んでそこで待機してください。極楽茶屋方面に行かれる人の邪魔にならないようにね」 リーダーから我々のグループに指示が飛ぶ。 待機してほどなく滑落者は自力歩行で帰ってきた。救助隊員から怪我の状態や滑落時の状況など聞き取り調査受けているようだ。自力歩行で戻ってきたことからして怪我は酷くはないだろう。足下はタウンユースの滑り止めのようである。途切れ途切れだが会話が聞こえてくる。 「すみません。すみません」と平謝りの滑落者。 「ご主人怪我も無く良かったですね。無事が何よりですよ」と救助隊員の声。 幾度と無く救助の場面に遭遇したが、どこでも救助隊員は優しい。 仕事とはいえ自らの命をかけて救助にあたっているのに。 だから登山者も事故を回避できるだけの技術と知識を身につけておく必要があるのではないでしょうか。雪山に適した歩行テクニック、どんな危険なところに迷い込んでも脱出できるだけの装備と技術と知識など。 今回の事故も ●6本爪もしくは8本爪のアイゼンを着用 ●登山道の笹の陰に危険があることをいち早く知る ●右の小枝を掴みながら安全歩行 以上のような点に注意をしていれば防げたかも知れない。 待機中他の登山者の足下に目を落としてみると、4本爪の軽アイゼンの人が圧倒的だった、6本、8本爪の人がパラパラ。ゴムに鋲をつけたタウンユースのものをつけていた人が意外と多かったのは驚きだった。 このときヘルメットを着用しロープを肩にハーネス(スワミベルトのメンバーもあり) を締め、12本爪のアイゼンを装着し、ピッケルを携行しているのは私たちのパーティのメンバーだけだった。私達はこの日トレーニングだからフル装備で入山していたというわけではなく、このルートに氷瀑見物に入る時は、いつでもフル装備で入っています。 しかしほとんどの登山者は不思議な眼差しで私たちを見ているような気がしますし、露骨に声を掛けてくる登山者もいます。 「そんな格好で何処に行くんですか」 逆に申し上げたいのです。 「貴方はそんな軽装で山を甘く見ていませんか…」と。 ヘルメットは一般登山でも被るようにしていますし、団体装備で8mm×30mのロープ1本と個人装備でスワミベルト、シュリンゲ2本、カラビナ2〜3枚は常時携行するように提唱しています。とくにヘルメットはもっと普及しても良いように思います。被っていても誰にも迷惑をかけませんし、ロープワークのように訓練する必要もありません。頭にのせて紐を確実に締めるだけで効果を発揮してくれます。 |
滑落、転落のような事態でなく、単なる転倒で頭部陥没骨折という事例は数多くあるようです。山で1度や2度は転倒したことがおありでしょう。 たまたま怪我に繋がらなかっただけで、そうなってからでは大変です。 セルフレスキューができなければ どれだけ多くの方達に迷惑を掛けるか知れません。 |
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