「御在所前尾根の岩場を見るだけでもいいから行こう」と誘いを受け鈴鹿山麓へと車を走らせました。大雨で小屋が流されたと言う藤内小屋の前は多くのボランティアの仲間達によって復元されようとしていました。大きな河原のあちこちには大雨の恐ろしい爪痕があちこちに残されていました。
御在所岳(標高
1212メートル)の藤内壁は日本三大岩壁と言われています。この岩壁を目の前にして、登り切れるという自信は一瞬にして消えてしまいました。心配していた通り最初の出だしからもたついてしまいました。 チムニーを背中と足のツッパリで上へ登ったり、足も手もでない箇所に出くわしたりしました。何と言っても最後のやぐらと呼ばれる岩壁は一生忘れることは出来ません。 3組の1番目に取り付き、リードの女性クライマーにも、てごわい壁の様でなかなか終了点に到着することができません。やっと「ビレイ解除」の声に、次は私の番だと、手には真っ白になる位チョークをつけ、「どうぞ!」の声を待ちます。いよいよ登ることになりました。
最終ピッチの通称「やぐら」を前にして、登りかけはしましたが私の腕ではダメだと諦めてロープをゆるめてもらいました。順番を待つ2組の人達の事を考えると時間ばかり経過するので、横から巻く方法をたずねました。「このコースに巻き道はない」と言われ再び登攀に挑戦することとなりました。無我夢中で登り、何とかあとわずかで終了点と言う手前にきて、どうしても手が届きません。下から「シュリンゲを足にかけて登れ!」と指示が飛びますがシュリンゲにかけた足は前後左右に揺れて、登ることはできませんでした。
下から見守る人達は「何をもたついとるねん」と思ったはずです。しかし私にとって初めての恐怖のパニックでした。
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