台風8号が石垣島付近で大暴れしている最中ではありましたが、急遽、沢レンジャー部隊は8月8日、比良山系八淵ノ滝へむけて出発しました。
土曜日とあって「高速料金千円」効果なのか名神は午前7時30分頃には早くも渋滞。今日の沢は行程が長いため少しでも早く入渓したいと気が焦ります。湖西道路に入ると比叡の峰峰や比良の連峰は重い雲が漂っています。今回もダメか。そんな弱気が脳裏を走ります。
今回はサスケ先生と、うららちゃんは唐松岳&五竜岳登山中のためお休みです。(と言うか、知らない間に実施したのでバチが当たったかな。ゴメンナサイ)
オリオン号は前回と同じメンバーを乗せてガリバー旅行村へ、四万十号は姫、ポチ、ジョンの3人でガリバー村へ向かいます。

予定時間を大幅に遅れ10時20分ガリバー村到着。

しかし現地に行き水量次第では変更もあると言うことを念頭にいれて入渓点に向かいます。
メンバーみんな「沢レンジャー」に、はまった様子で声をかければ「OK」サインがすぐ返ってきます。
ガリバー村駐車場で2台が合流し、朝の挨拶を済ませ、沢靴、スパッツ、ハーネス等を装着し沢登りの入り口までをウオーミングアップモードでゆっくりと歩いていきました。水量も問題なさそうです。
前回は全行程の五分の一くらいのところにある貴船の滝で、水量が多くリタイヤしていますので今回は全行程進む予定です。
初めて沢に入ると水の冷たさに驚くのですが慣れると、丘の上のウオークよりも快適でみんな「中高年のカッパ」みたいに水を見るとジャバジャバと入り込んで行きます。
6メートルの魚止の滝は前回登攀しなかったベガさんが挑戦しました。時を同じくして高島地方のスポーツクラブの人達が5〜6人で来ており(ギャルばかり)魚止の滝を譲りました。鎖場を登ったり、滝を高巻きしたりしながら障子の滝にやってきました。
障子ノ滝をジョンが勢いよくリードして行くのですが、苔が行く手を阻み危険きわまりない状態になりましたが何とか登り切りました。
「姫!おいで!」「えっ?」と疑いながらも障子ノ滝をセカンドで登ります。他の人達は登らずに高巻きをし、見物することになりました。
途中「ロープを右へ廻して!」と叫ぶのですが水量の多さでかき消されてしまいます。写真撮影をしていたオリオンさんが急場を察知しジョンに大声で伝えてくれ、どうにか意志が通じて、やっと一歩が踏み出せました。次の二歩目は苔をつかみましたが根からガバッと抜けてしまいました。持つところが全然ありません。リーダーは「これは上がってこれないなぁ、ヌンチャクを一つ残置しないといけないなぁ」と考えていたそうです。
突然に目の前が明るくなり、わずかな岩場に手がかかりました。「行きますっ!」リーダーも私のヘルメットの頭が見えてホッとしたそうです。落ちたらロープが斜めになっている分だけ振られることになります。その時は顔を擦らぬ様に手でしっかりと保護して・・・と落ちる段取りを考えていました。

「よくやった!」あまり褒める事のないジョンが褒めてくれました。手と足がブルブルと震え、涙が出てきたほどの怖さと感動でした。
「よお頑張った。これなら前穂・北尾根にも北穂東稜にも行けるぞ」

そうかぁ、前穂・北尾根のテストをされていたのです。合格してよかったです。いつか今日の訓練が役立つ時がくると信じています。与えられたチャンスに感謝しています。
唐戸ノ滝はパス、登山道に向けて突き進みます。登山道を少し進むと大擂鉢です。此処で少し休憩をして屏風ノ滝を目指して水線をすすみます。屏風ノ滝の手前で登山道に上がって貴船ノ滝へ。貴船ノ滝の手前で三人の中年婦人が鎖場を通過できず遠目に滝を眺めていらっしゃいました、手を差し伸べるのは簡単ですが、此処を通過できても難所は更に続くため会釈をして通過しました。
貴船の滝からは、きつい鎖場を高巻きすることになります。木の根を掴んだり、鎖を掴んだりして登っていきます。クライミングを学んだ私達は平気で通過できますが、岩場の経験の無い人達はきっと苦労するだろうと思えるほどの悪路です。岩場を登り切って振り返る貴船ノ滝の眺めは素晴らしく何度きても感動する一瞬です。水の中ばかり歩いていると太陽が恋しくて、陽がさしてくるとホッとした気分になります。真夏では考えられないけれど温もりが欲しい気分になります。
「お弁当にしよう」といったのが午後1時20分。午後はまだ半分以上残っています。昼食後も、それぞれが気の向くままの水の中コース、岩場コースを楽しみました。コースが長いため少し疲れが出て来たのかスピードが落ちてきました。朝の渋滞で出発が1時間30分も出遅れているために、日没にならなければいいがとジョンの心にあせりがでで来ました。懸垂下降をする箇所があり「ATCをセットして!」「持ってきていません」そうこうしていると「ATCを落としました」もうジョンの顔色が変わっています。下山の登山道は悪路続きで、何としても暗くならない間に駐車場に帰らなければなりません。姫がビレイをして引き上げている間にジョンが次ぎのセットをして時間短縮を試みました。
「先に進んで〜!」懸垂下降の指導をしている間に他の人達はゴールにむけて、ひたすら歩き続けます。
「みんな頑張ろう。もう少しで丸太の橋が見えてくるからね。そこがゴールだから」
と励まして、浅いせせらぎ歩きをすれば広谷の丸太橋が見えてきました。「ゴールやで〜」
ここで遡行終了となります。時間は午後4時45分。今までで一番遅い到着時刻です。あとは駐車場まで1時間ちょっとの下りがあるのみ。沢靴を登山靴やウオーキングシューズに履き替える時間も惜しくて、みんな沢靴で下ります。今日の遡行を振り返りながらゴールの駐車場へ着いたのが午後6時00分でした。朝の渋滞を考えると今から帰っても、またまた渋滞に巻き込まれるために温泉にはいり食事も済ませることでみんなの意見が一致しました。温泉を出たのが午後8時を過ぎていました。
渋滞は解消され、快適に大阪に戻り付くことができました。長い距離の遡行ではありましたが、充実した一日でした。満足、満足。少しづづグレードを上げていき、今日は、きついルートだったかも知れませんが安全で楽しい遡行でした。悪路を歩くとき「水の流れている中が一番安全」と思うのですが沢レンジャーのみなさんはどうでしたでしょうか?沢では「ここが通路」と言うことはなく、好きなところを歩けるのが魅力です。
次回は沢レンジャーの卵がひよこになっています。
今回の反省  
●ATCは必ず携行する。
●ATCを落とさない方法を教科書を読んで勉強する。
●いかなる時も、ヘッドランプ懐中電灯は携行する。
●カラビナを片手で上手に使える訓練をする。
●沢用のスパッツを着ける事をお奨めします。
皆さん1回目より2回目、2回目より3回目というように確実に上手くなっています。水遊びのようで水遊びではありません。沢の中は危険がいっぱいです。習ったことを反芻しながら基本に忠実により安全に沢登りをお楽しみください。沢の中では厳しい声を頻繁に飛ばしますが「転ばぬ先の杖」と受け止めてください。
文;美智子姫0写真協力;鹿島秀元0000

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