姫の山登り
乗鞍&西穂高スノーシュートレッキング
  「もう今年のスノーシューは終わりだな」
雪の無い「余呉湖・賤ケ岳」に行ったときそう思い屋根裏部屋にスノーシューを閉まった途端「乗鞍いこか?」の話がでたのです。(ICOCAカードではありませんよ)
蔵王での感動から覚めない間に、また次の感動が味わえるならと即OKを出しマイカーで出かけることになりました。
出発の日は夕方から会議があり抜けれそうもありません。万一遅くなった場合を想定して出発できる出で立ちで会議に臨みました。
それと二次会に引っ張り込まれないための先手必勝方法です。 
「ど・ど・どないしたん?その恰好?」
「今から乗鞍岳へ行きますので」
「ヘーッそりゃ凄い!ところで乗鞍ってどこっ?」

そんな間抜けなやりとりをして二次会をパスし会議場所までポチにお迎えを頼みました。
いざ出発!ということで名神高速、東海北陸自動車道を休憩を取りながら走ります。 
 
   カーナビが「2時間を過ぎたら休憩、運転交代をして下さい」と安全運転を促してくれます。ドライバーさんには大変ご苦労をかけながら、北斗七星、オリオン座がくっきりと輝いている満天の星空の乗鞍高原駐車場に到着。
到着時間は午前4時を過ぎています。事前に調査していた
「やまぼうし仮眠所」で暖を取り仮眠をとろうとしたのですが、既に先客が自由に場所を確保しているためになかなか思うようにストーブの前やコタツの前を利用することができません。それでもどうにか隅っこからツンツンと足を入れ何とか横になることができました。しかし底冷えには勝てず車に戻り仮眠をしようと表に出ると既に夜が明けていました。 
8日の夜明けです。天気は快晴です。雪が太陽に反射してダイヤモンドの様に輝いています。蔵王も素晴らしかったですが、また乗鞍の雪も素晴らしく、寝不足もなんのその朝の軽食が終わると、登山の身支度を整えリフトの始発時間8:30を待つ間が惜しく第3ペアリフトをパスして国設第1クワッドリフト乗り場まで歩いていくことにしました。スノーシューはまだ背中にくくりつけたまま壷足で登ります。地面は機械を使って踏み固められているために楽に歩くことができます。
乗鞍高原温泉スキー場にはまだ誰も踏み跡をつけてはいないのですが
 「野うさぎ」と「雪玉」が美しいシルエットをつけてくれておりました。
国設第1クワッドリフト乗り場の横からは乗鞍岳の峰峰がまぶしく目に飛び込んできます。感激。
5〜6分の空中散歩のあとリフトを降りると白銀の世界です。
「7日にここでイベントがあったんだが吹雪いちゃってよー」
とリフト係の叔父さんが晴天の日に来たラッキーな私達を歓迎してくれました。
スノーシューを装着し滝を目指します。
目的地の凍っているであろう三本滝までスノーシューイングを楽しみます。気温も高く、風もなく、太陽の恵みを受けて汗ばむほどです。途中、休憩と行動食を取りながら三本滝に到着しました。
「キャー何これー!?」
あまりの美しさに表現方法がわかりません。気絶する寸前の感じと言えば通じるかもしれませんね(笑)。三本滝に到着した時、嫁からメールが来て
「今から遊びに行ってもいいですか?」
「いまお母さんは乗鞍岳です」 
 
「うそっ?」
「ほんまです」

と写メールで凍てついた滝の写真を貼付してやりました。滝は見事に凍り太陽の光を浴びて碧色であったり青色であったり、うすいピンク色みたいであったりと光線によって、また見る角度によって違っていました。
「来て良かった〜」
心の底からそう感じることができました。
「さあ帰るとするか?」
の声に誰も反応せずしばし自然の織りなすアイスショーを楽しみました。 
 帰り道は7日のイベント用だったんでしょうか標識が多数掲げてあり迷う心配もなく軽快に足取りも軽く「子リスの径」「かもしかの径」を下り国民休暇村「乗鞍高原」付近まで戻って来ました。国民休暇村を横切るようにして「善五郎の滝」を見に行くことになり急斜面を、おっかなびっくりで下っていきます。三本滝とは違った美しさがあり凍てつ 
 いた滝の下を透き通った水が流れておりビデオがあれば、せせらぎの音をみやげに持ち帰ることができるのにと残念に思いました。途中で10人ほどの対向者があり、狭い橋の上での往来は困難のため、私達が道を譲ることにしました。しかし残りの2人がいくら待ってもやってきません。仕方がないので突っ込んでしまいましたが待たせておいて「すみません」の一言もなく、その上、酒の臭いをプンプンさせており自然の恐ろしさをなめているなぁ。
(人のふり見て我がふり直せで我々は常識のある登山をしようと痛感しました)
第1日目の予定は全て終了し旅館へと向かいます。
乗鞍の街の旅館街には番地の変わりに番号が掲げてあり観光客が迷わず旅館に入れる配慮がしてあり助かりました。旅館に入る急な坂道はシャーベット状に凍っており、スリップをしないように細心の注意をしながら無事到着です。お部屋に入り雨具を干し、何はなくともお風呂に浸かろうと風呂場にいきます。白骨温泉を思わせる白濁の泉質は硫黄の臭いがきつくいかにも温泉!という気分にさせてくれる「よか温泉」でした。後から入ってきたお友達にも先ほど発生した
「お風呂事件」のお話をしているうちにのぼせてしまうほど愉快な入浴シーンでした。
(お風呂での出来事は「ハチキンブログ」の方に書きましたのでここでは省略)
午後6時の夕食はご馳走づくしで長野県ということもあって、りんごのテンプラや山菜料理など沢山の品数で満腹となり部屋で二次会をすることになりました。会社を休んで乗鞍へ行くと言って出てきましたので「乗鞍」の銘柄のみやげをさがしに町に出て行くことにしました。勿論用心棒付きです。ツルリ〜ツルツル(ポチの頭ではありません)宿のスリッパではまるでスケートをしている状態で土産物を購入し宿に戻りました。すると玄関先でズホンとシャツを濡らしたアドベンチャーさんが立っていました。彼は奈良まで出かけて今夜の酒盛りのための「ドブロク」を買い込み、栓を抜いた途端に爆発したのだと笑います。
 
二次会の酒は「ドブロク」、酒の肴は「お風呂事件」もう楽しいったらありゃしないわ!!おしゃべりや笑いも一段落して、明日は西穂高へ行こうということになりました。当初は上高地に行く予定をしていたのですが西穂推進派が多くアッと言う間に西穂高へ向けて異議なしということになり、さすがのタフな私達も昨日からの睡眠不足も手伝って早々にお休みタイムとなりました。みんなよ〜く眠れたそうです。
夜中12時30分頃「しまった寝過ぎた!6時過ぎてる早よう起きて!」と騒いだ人がいたそうですが同室の方ごめんなさい。時計を逆さに見てたようで・・・(誰〜だ?)
9日。抜けるような晴天です。西穂高から見る白銀の北アルプスを想像するだけで心が躍ります。ロープウエイ乗り場まで来たとき
「あっピッケルを宿に忘れた〜」
「ピッケルは岳人の命だよ」

と、たしなめられるシーンもありましたが旅館への連絡、ピッケル無しでの登山は自己責任ということで計画どおりに実行することにしました。ロープウエイは観光客でことの他混み合っており予定時間をジリジリと押してリーダーが少しあせります。西穂高山荘を経て丸山までを予定しており時間との勝負になって強行軍をしないでゆとりの登山をするために心を引き締めて、山をなめないで登山をするようにミーティングをしました。途中で行き交う人を交わす時、相手のリュックからはみ出した三脚に頭を打たれ「イタッ」とよろけてしまいましたが山側に待機していたために落下は免れました(肩幅より大きな荷物のはみ出しは危険です)スノーシューとアイゼンを臨機応変につけかえ西穂高山荘へむけて登りますが、ことの他、足への負担がきついです。 
 「小股で一歩が大きい」と自分に言い聞かせリズムをとりながら時々後ろを振り返ります。目に入る山々は笠ケ岳であったり、槍ケ岳であったり、焼岳の噴煙までもがくっきりと見えています。疲れが吹っ飛ぶ一瞬です。これがあるから登山は辞められないのかもしれません。
ピッケルを宿に忘れた話しをしましたが、車にピッケルを忘れた人、スノーシューまでもを車に忘れた人が自己申告をする一幕もありました。(宿に靴を忘れた人もいたよ〜)西穂高山荘は通年営業をしているため、この場所で体力の回復を待つ待機組を作り暖かいコーヒーを飲みながら北アルプスの山々を楽しんでもらうことにしました。
さあ残りの人はスノーシューを小屋に預けて荷物を軽くしてアイゼンを装着して、丸山まで行きましょう!但し午後1時になったら引き返しますという約束でスタートしました。丸山から更に独標までは無理と覚悟をしつつも微かな期待を胸に一歩一歩前進します。丸山をすぎると傾斜もグーンときつくなり風も強くなってきます。ここで引き返す人も出てきて結局4人が独標にむけてさらに進んでいきます。私が少しだけみんなより先にのぼっており下から「お〜い姫〜時間だ〜引き返せー」と聞こえました。(聞こえない振りをしたかったなぁ)そんなことで今回の最高峰達成者は私です〜。独標は標高(2701b)で多分私の立ち位置は2600bの所であった事が帰宅後わかりました。あと100b!時間にして30分!悔しい思いをしましたが誰も言う「山は逃げない」ということもありますので、いさぎよく下山することにしました。北アルプスの山々は見晴らしがよく遥か彼方に日本一の山「富士山」を発見しました。感動です。
下山途中にリーダーがロープを出しはじめました。 
 
  「あっ、か弱い私のためにロープで確保してくれるんや」
と思いきや
「今から滑落停止のトレーニングをする」
と言うのです。この斜面を滑落すると命がないことを身をもって体験せよということらしいです。私の場合は滑落を怖がっている体制になるのであまり効果はないと思いますがサスケ先生の滑落停止訓練は見事なものでした。(筋肉痛にならなければいいがと思うほどの迫力でした)

山小屋に戻ってみると「待機組」は先発隊として既にロープウエイ駅に向かっていました。トイレと水分補給をして一気に下ることにしました。さあ今からが尻スキーの出番です。登りに何度か恰好の斜面があり、リーダーのOKももらえていたのですが時間も押していたため「復路」まで我慢をしていたので少しの斜面も見逃さず滑って滑って滑りまくりながら降りてきました。あまりのスピードに恐怖を感じ、リーダーの体重を利用してシュリンゲでストッパー対策を取りながら下ります。時々ストツパーが効き過ぎてスベリが悪くなることもありましたがロープウエイ駅近くで先発隊と合流することができました。 
こうして車中泊も含めて2泊3日の乗鞍岳スノーシュートレッキングは、思いがけない西穂高岳のおまけ付きで怪我もなく無事に終了することができました。ところどころでリーダーの怒声が聞こえましたが「安全な登山」をするために参加者全員が気を引き締めて登ってもらうための「檄」だと思っています。怒声の直球で受けた人は次なる山行では同じことのないようにすれば前進があったと喜べばいいのではないかと思っています
ありがとうございました。

★今回の成功は「2日間の晴天」であったろうと思います。
やまたび倶楽部の山行は「雨かも」という縁起でもないジンクスはこれで吹っ飛びました。