姫の山登り
Yamatabi倶楽部・山行報告
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九重連山を訪ねて旅立ちの日、九州地方に『梅雨入り宣言』された。気象庁の天気予報も大分県地方は雨と発表している。雨とはいえ警報が出ているわけではないので「雨の新緑も良いだろう」と、予定通り出発することにした。
26日(金)夜 8時ごろから参加者が集まってくる。「雨模様やね-」「天気悪そうやね-」挨拶は空模様のことばかり。行くしかない、行って状況に応じた山行をすれば、良い思い出作りができるだろう。

26日(金)夜 8時30分
バスは予定通り大阪を離れ、阪神高速、中国道、山陽道を乗り継いで九州を目指した。
車中で目覚めるたびに外に目をやるが、暗黒の空が広がるだけで、遠くの町明かりと外灯がぼんやりとにじんでいた。
下関ジャンクションで再び中国道に乗り移るころ、空にところどころ明るい切れ目が見えるようになってきた。「ひょっとして晴れるかもしれない」そんな希望が僅かながらわいて来る。
関門大橋を渡り九州自動車道に入った頃には雲の切れ間に星が瞬いていた。「晴れるかもしれない」一縷の望みが夜行バスの疲れを癒してくれた。
鳥栖ジャンクションで大分自動車道に入り、しばらく走るとバスのフロントスクリーンにポツポツと小雨が落ちてきた。遠くの山々に目をやると、山頂は濃霧に隠れている。九重インターから県道40号を南下、飯田高原から県道621号・田野庄内線に入ると、九重連山もぐーんと近くなり雨も濃霧もきつくなってきた。こうなると晴天を望む者は一人もいなくなっていた。
27日(金)朝 7時30分男池登山口より入山。
男池湧水群のせせらぎを渡り少し入ったところで誰がつけたのかショートカットルートに踏み入れた。ガーミンのGPSはルートを外したことを示し復帰するように指示を出している。平治岳と黒岳の間の沢筋を上がっていくのだから大丈夫他に分け入ってしまうことは無い。そう確信しながら少しずつGPS指示する方向に軌道修正をしていった。そして僅かな時間でルートに入った。
8時50分 ソババッケ通過。
石を踏んで行く道は足場が悪い、そのうえ濡れているため歩行速度がまったく上がらない。一歩また
一歩と進んでいく感じ。風に煽られた木の葉から大粒の雫が小雨に混じって落ちてくる。まるで大雨の様相。
9時30分 大戸越への分岐通過。
この頃になると体も馴染んできて、少し歩く易くなってきた。以前雨は降り続いている。若葉が雨に洗われ新緑を一段と神秘的なものにしている。道は悪いが不平はでていない様子、それぞれに雨の原生林を楽しんでいる
10時40分 風穴到着。
ここから右に折れて大船山を目指す予定だがルートが不明瞭。高塚山黒岳方面へのルートは標識があるが大船山への指示が無い。樹林帯のためGPSが正常に機能していない。
もう少し奥へ入り岳麓寺への分岐まで行って見る。この分岐には新しい標識が設えてあり、男池、高塚山、岳麓寺と鮮明に書かれていつが、大船山への表示が無い。辺りを見回していると、大岩に大船と黄色のペンキで書かれているのがぼんやりと確認できた。書かれてからもうずいぶん経っているのだろう、どうにか読める程度だ。その矢印は、いま自分が来た道、男池の方を指している。やはり風穴の方に違いない。風穴で待っているメンバー達もルートを探してくれていたが確認できないようだった。「ルート不明瞭」ということで少し戻って大戸越を目指すことにした。
11時30分 大戸越分岐通過。
ここからの道が難問だった。道とはいえ踏み跡程度。その道も倒木と土砂流出により寸断されている。跨ぎ、潜り、滑り、跨ぎ、潜り、滑りの連続である。いくつの沢筋を越えただろうか。いくつの尾根筋を回っただろうか。少しずつ高度は上がっているものの先は見えてこない。濃霧のため木々の間の遠望も無い。GPSも機能していない。コンパスがかろうじて方位を示すものの正確な位置を把握できない。「この辺りに違いない」そう確信して歩を進める。
13時50分 男池ソババッケからのルートと合流。
先ずは一安心。10分も歩けば大戸越だ。この辺りにはミヤマキリシマが僅かながら咲いている。右を取れば平治山。左をとれば大船山。いずれの山も山頂は濃霧に閉ざされているためピークハントは断念して坊がつるを目指して下山することにする。
15時25分 坊がつる避難小屋前に到着。
坊がつるには一張りの黄色いテントがあり、数人の後続者が追い抜いていっただけで、人っ子一人いない。天気がよければ多くの岳人が小屋に急ぐことなく、ここで楽しんでいることだろう。晴れていれば法華院温泉山荘も目にすることができるだろうに淋しい限りだ

16時00分 法華院温泉山荘 到着。