登山の基本は悪路を歩くことと心得て…
  登山をスポーツと考えるなら、美しいフォームとリズミカルな動きがキーポイントとなり、スムーズな歩き方を心がけることが大切です。
  良い歩き方が出来ると
  @バテが無くなり登山が楽しくなる。
A健康状態やその日のコンディションがわかる。
B悪路や岩稜帯でも不安無く歩ける。
Cけがをしない、安定した登山が可能となる。
  山の歩き方は街の歩き方とは全く違いますが、幼年期、少年期において生活の移動手段を歩くことで過ごしてこられた、中高年の皆さんならすぐに覚えられると思います。
少しづつ練習してみてください。

それぞれの歩き方が万人に向くものでは有りませんので、自分なりにアレンジすることも必要となります。 
  一般ルートならどの山域でも歩けるような歩行技術を習得して下さい。
   @ 歩行技術を知らない初心時は、凹凸の少ない、やや水平な登山道の多いルートから始め、一定のリズムで歩くこと習得してください。
   A  初心者レベルの山にもの足りなくなったら、山岳雑誌(岳人、山と渓谷など)やガイドブックから自分の好みに合う山域を探して徐々にレベルアップをしていきましょう。
自然が持つ地形の変化や山域の特徴に触れながら、登山に親しんでいってください
旅行社やガイドの行う登山ツアーに参加するときは、その山行のグレードを見極めることが大切。自分の技術、体力で行けるかどうかよく判断してください。
山岳会に加入するのも良い方法です。
   B 山野の素晴らしさ、恐さが分かってくると、自分に何が不足しているのか、何が必要なのかが分かってきます。登山は歳をとって歩けなくなるまでできるので、あわてず一歩一歩登山歴を重ねていくと、広範囲に山域を楽しんでいくことができます。
自身の知識、技術、体力の不足個所を補いながら登山を続けることにより、トラブルに遭わず、事故を起こさず、楽しい登山ができるようになります。 
  C 登山を歩くスポーツと考え、スタートを低い水準から始めれば、スポーツから遠ざかっていた方々でも簡単に取り組んでいくことができます。
登山レベルを徐々に上げながら、縦走登山、雪山、岩稜帯登山、沢登りなどへとステップアップをしていけば、安心かつ安全な登山を楽しむことが出来るようになるでしょう。
神戸を中心とする阪神大震災においても登山経験者は各方面で強い力を発揮したと言われています。
登山レベルをステップアップする時、知識、体力、技術などワンランク上のものが必要となってきます。一度や二度は苦しい思いをすることがあると思いますので、徐々にステップアップしてください。
   健全な登山の第一歩は「山の歩き方」を覚えてから。
  @  歩き方のポイントは「歩く姿勢」にあります。
  A  その場所、地形、状況に合ったリズムで歩く。
  B  足元だけを見ず、周りを見ながら余裕のある足運びをする。
  C  この時、たえず全身軸をイメージしながら、メリハリをつけ体重移動をコントロールをすることが大切です。
  D  リズミカルに美しく歩くことが出来る。
  街の歩き方と山の歩き方
  常々私たちが生活している街中は、登り下りの坂道が少なく、階段にいたってはエスカレータ、エレベータが設えてあり、上り下りする必要がほとんどありません。昔のような柔らかい土の道はほとんど姿を消し、アスファルトを敷いた道になっていますが、アスファルト道は、歩きやすい道ですが足や腰にかかる負担がすごく大きな道なのです。
   @  街中の歩行は、障害物や段差が少ないので早く歩くことが出来る。
   A  足を上げなくてもラクラク歩くことがでる。
   B  歩きやすい街の道に慣れた人が、歩きにくい登山道を街と同じ歩き方と速度で歩 くから間違いがおこるのです。
   C 登山道は99パーセントがアップダウンといってもいいほど水平な道が少ない。 
   D  雨や風の影響から道のデコボコは激しく、岩が露出したり石ころが無数に点在し木の根が道を這い、木の枝が落ち、倒木が道をふさいでいるから、街の歩行に比べ数倍歩行が困難です。
   E  歩行は自分の体を前に進めることが目的です。このとき、下半身が上半身を完全に支えた状態で歩くのが良い歩き方であり、バランスのとれた姿勢です。
   よくない歩き方の一例
   @  良くない歩き方は、腰を折り曲げて前かがみの「くの字の姿勢」になった歩行です。
   A  このとき上半身を支えているのは下半身以外の背筋、腹筋などです。
人間の体で下半身は一番強靭な筋肉です。下半身は、日常生活の歩く運動から筋力強化のトレーニングを無意識のうちに日々行っているからです。
   B 毎日使っている強執な筋肉を使わないで、日常あまり使っていない筋肉を急にそれも強く、上半身の重量を支え持つために使おうとするから、全身の筋肉はもちろん内臓にも負担がかかり疲労が倍増するのです。
   C  歩行のポイントは、「歩行姿勢」。
   D  歩行姿勢を保つとき もっとも大切なのは「歩幅」です。
   E 「歩行姿勢」と「歩幅」が歩行の基本。
基本動作に関節の応用動作を交えながら歩 くのが「山の歩き方」といえます。
   F 登山道をの登下降も、岩稜帯の登下降も、歩行姿勢がポイントになります。
  ※山での歩行姿勢と街中での歩行姿勢の違いを よく理解してください。
    街の歩き方…エクササイズウオーキング(後側の足を蹴る)
    街をゆっくり歩くとき、また急ぎ足で歩くとき、だれもが一方の脚と反対側の腕を同時に交互に出しながら歩いています。そのとき人の歩行中の姿勢を横から見ると、頭と腰は同一重力線上に重なっていますが、両脚は開いた状態で上半身を支えています。つまり、上半身を二本の脚で支えた格好となるため、重心(腰)はいつも二本脚の間にあります(注意:行動中、体の重心は絶えず移動するため腰を重心と仮定します)このときの姿勢が、街の歩き方「エクササイズウオーキング」です。
生まれたときから無意識のうちに覚えた街の歩き方は、両脚で身体の上半身を支えているため、もし片方の脚がスリップすると身体の均衡を失って、ひっくり返ってしまいます。
エクササイズウオーキングでは、歩きやすい道を一定の速いスピードで上半身を移動しながら歩いています。
    エクササイズウオーキングで山を歩くと。
    ところが、凹凸が激しく傾斜の多い登山道では歩きにくいため、スピードが遅くなり上半身の移動が困難になります。この上半身の移動が困難になるとバランスを失い、体勢を立て直そうとして余計な筋肉を使い疲労が倍加するうえ、スリップして危険な状況に陥ったりもします。街の歩行は、歩きやすいアスファルト道ではスピーディーに歩け、合理的ですが、山道ではどうやら不合理な歩き方といえるようです。
しかし、いくら登山道といえども、水平で凹凸や石ころのない歩きやすい道を軽登山靴で歩くときは、脚出し二本脚歩行が合理的といえるでしょう。
    山の歩き方… ショートステップ歩行。片足に体重がかかっている
    歩きにくい登山道をバランスよく歩くには、「ショートステップ歩行」で身体の体軸を作って歩くのが合理的です。この歩き方は、後側の脚を前に出すとき前膝を上方に上げることによって、頭、腰、後側の脚が同一重力線上に重なって、身体の「軸」をつくりながら歩くことに特徴があります。この軸づくりはあくまでも姿勢作りであって、実際の歩行のときにはこの姿勢で巧みな関節の使い方が要求されます。(このとき腰が前に移動して膝が前に出ないよう注意する)

強いて欠点をいうなら、エクササイズウオーキングに比ベスピードに欠けることです。脚力に自信があって、グイグイとスピード感溢れる歩き方のできる人は、たとえ急傾斜の登りであっても危険のない登山道なら、この歩き方は必要ありません。しかし、たとえ脚力に自信のある人でも、クサリ場の通過や丸木橋を渡る危険な登山道では、 ショートステップ歩行でなければ身体のバランスを崩しやすいのです。
ショートステップ歩行の利点は、脚で上半身を支えているので、バランスの崩れが少なく安定した姿勢で歩くことができます。万一バランスを崩しても、脚が自由に動くのでぐに立て直すことができます。特にナイフリッジ(両側が鋭く切れ落ちた尾根)などの危険な岩稜の登下降や、ロングコースで疲労をなるべく軽減したいときには、打ってつけの歩行テクニックといえるでしょう。
山の歩き方「膝を上げて片脚で立つ歩行」は、登山での歩き方すべてに共通する要素を兼ね備えています。縦走での一般登山道の歩行に始まり、崩れやすいガレ場やザレ場の登り下り、岩の露出したクサリ場や沢登りでの岩登り、そして冬山のアイゼン歩行や輪かんじき歩行、氷壁登りなどなどの基本姿勢は全て軸をつくることから始まります。基本姿勢である「膝上げ片脚立のショートステップ歩行」をマスターすれば、いろんな歩き方、そして岩登り技術を習得するのは簡単です。歩き方に自身のない初心者や中堅者、もしくは歩行でのトラブルに遭いたくない中高年登山者は、早く身体の軸が作るように心がけてください。
    良い歩き方
@見ていてスマートな美しい歩き方。
A歩行中の姿勢がよく、登り下りが自然にできる歩き方。
B山の指導者やプロの山岳ガイド、長年多く登山を続けてきた登山者に良い歩き方が多く見られ00ます。
C不規則な登山道をバランスよく歩ける。
D全身の軸を作りながら頭のテッペンから足の先まで、全関節を使って歩く。
E目は常に行く手を見ながら時折足元を見る。
F中高年になってから登山を始めた人でも、山を歩く回数を増やし反射神経を養い歩き方のトレー00ニングを積めば良い歩き方になっていきます。
G山を歩くだけでなく、目標を持って歩くと登山が楽しくなります。
H自分の登山を面白くし自分の身を守り長い間、登山ができるよう山の歩き方を覚 えてください。
  ウオーキング ステップについて
 ショートステップ歩行(小股歩き)
   @ 足元を見ないで前方、左右を見ながらいつも同じ歩幅で歩ける。
   A 不安定な登山道でバランスの維持が簡単にできる。
   B 疲労を軽減する。
    というような効果があり、登山では主要な歩行技術で、その使用頻度はすこぶる多いものです。
「そんな大股じゃダメ、もっと小股で歩かないと」山歩きのアドバイスを、耳にしたことがあると思います。
今まで歩きなれた大股歩行(普通の歩行)を小股に変えるとなると、口でいうほど簡単にはいきません。
靴の長さ分だけ進む歩幅で歩くのは難しいものです。諸先輩から注意をいただくのですが、なかなかそのようにうまくいきません。歩行技術は、その方法が分かっていても身体が思うようについていきません。
ショートステップ歩行するには、前側足の膝を真上にスッと上げ、そのまま真下に爪先から静かに着地させるだけです。前側の足が着地したとき、前側の足首は膝より前に出ていてはいけません。仲間に横から見ていてもらうと、できているかどうかが簡単に判断できます。
膝より足首が前に出ていればストライドステップということです。
ショートステップ歩行は前側足の踵と後側の足の爪先の間隔が、登山靴2分の1個〜1個分ぐらいが適当ですです。これは傾斜角度によっても変化します。
この二点が小股歩行のポイントです。
右足と左足の間隔は自然に立っているときの状態が理想ですから、個人差があるものの、立ったときに登山靴が5cmぐらいの間隔が歩きやすでしょう。
以上の事柄を覚えてもらおうとすると
★こんな小さな歩幅だと皆について歩けない。
★歩幅が小さいとイライラして歩きにくい。
★歩数が増えるから疲れる。

  こんなお叱りをよくいただきます。

1年以上も山行していてもショートステップが踏めない人も多くいらっしゃいますし、
2〜3回の山行で出来るようになる方もいらっしゃいます。そう難しい技術ではないので、出来る出来ないは技術的にどうこう言うのではなく、人の言うことを聞くか聞かないかと言う事に尽きるように思います。
ショートステップ歩行は、平坦で歩きやすい登山道以外ならどこでも通用する歩き方で、とくに登りと下りの緩斜面や歩幅の狭い石段などに威力を発揮します。
重複しますがショートステップ歩行は使用頻度が一番多い山の歩き方です。
 ストライドステップ歩行(大股歩き
    登山道の中には、大股で歩かなければならない場合があります。例えば
   @  ガレ場やザレ場の登り。
   A  急な斜面の登り。
   B  足場の離れている登山道の登下降。
   C  40〜50cmの高段差階段の登り。
   D  急傾斜の木の根道。
   E  大きめの石がゴロゴロしている登山道の登り。
   F  沢筋や川原での飛び石伝いの登下降。
     こういう場所ではストライドステップ歩行が有効です。
ストライドステップ歩行は、後側の足を前に出すとき直接前方に踏み出さないよう気をつけてください。必ず後側の足を前側の足 に一度そろえて、体軸を作りバランスをとってから、前に踏み出してください。この点が、ストライドステップ歩行のコツと言ってよいと思います。
 45度外開きステップ
    右足と左足が開脚したスタイルで歩きます。踵よりつま先を開いて、逆ハの字で歩行します。急傾斜の登山道では踝の関節の負担を減らし楽に歩くことができます。
足首の曲げに十分な余裕をもたせ、関節を存分に使って重心の移動が楽にできます。45度外開き歩行は、斜面の登り歩行が長く続く登山道に有効で、中高年者には最適の歩行テクニックです。

この歩き方のポイントは、進行方向に向かってつま先を45度前後外側に向けることによって足首が楽になります。とくに足首の前側のストレスはなくなり、踵も上がる量が少なくなるので滑りにくくなります。つま先を45度外開きにするというのはあくまでも目安で、急勾配になればなるほど足を開き、緩傾斜になればなるほど開脚角度は少なくします。

ザレ場の登りには靴の内側を利かせ、下降には外側を利かせると楽に上り降りでき、滑りにくい歩行ができます。
45度外開き歩行はスピードに難があるので、緩斜面での歩行はショートステップ歩行や、つま先立ち歩行も併用しながら歩くとよいでしょう。
 クイックステッ
    クイックステップはつま先を使って歩きます。軽登山靴では完全に足のつま先で立つことはできません。つま先から指の根元ぐらいまでの靴底の広さを使って立ちます。踵が上がった状態ですので、急斜面でのつま先立ち歩行の靴底の接地面積は少なくなります。

クイックステップは、軽登山靴のように親指のつけ根辺りでよく曲がる靴のほうがやりやすく、靴底の堅い靴は不向きです。
短い距離の急斜面の岩場をスーッとリズミカルに登りたいときに、つま先立ち歩行は効果的に威力を発揮します。

歩き方は、ショートステップの基本姿勢で真っすぐ立ち、靴底の接地面積が少ないから、後側の脚で蹴ることによってスリップを少なくします。ショートステップ歩行よりもっと小刻みで歩き重心移動を軽減します。

足首の曲げをできるだけ大きくして、つま先(靴底)に身体の荷重力が最大になるようにします。
前傾姿勢になると、重心が垂直線上より前方に移動して、踵が上がり自然に後にスリップしやすくなります。
重心が後ろにかかりすぎると、後ろに引っ張られるようになり、恐さも感じますし、転倒もあり得ますので注意してください。

トレーニングを始めた頃は、恐怖感から身体が前のほうにいきやすいのですが、何回も繰り返しているうちに真っすぐ立って歩けるようになります。山行中適当な場所を見つけたら、5分でも10分でも練習されることをすすめます。
登山道がぬかるんでいる所や、濡れている岩稜帯では、滑りやすいので靴底をフラットに置いて逆ハの字歩行でエッジを利かせて滑らない歩き方をトレーニングしてください。
 ローリングステップ
    ローリングステップは腰を少し回転させるようにしながら歩きます。つまり「ナンバ歩き」に似た歩き方です。
街や山を歩くとき、右脚と左脚、右手と左手を交互に出して歩いています。
身体を前側の脚の筋力で前に引き付け、同時に後脚の筋力で前に押し出し、脚の筋力で身体を前に運んでます。街のように水平歩行なら、大股でも苦にならない運動量ですが、登山のように登りが長い歩行となると、歩き方によって疲労度に大きな差が出ます。以前、山に荷を揚げる強力さんに教えてもらった歩き方が「ローリングステップ歩行」でした。脚の筋力を使用を少なめに、体重移動と腰の回転を利用して脚を前に交互に出して歩きます。腰の回転は街の歩行同様に、疲労をほとんど感じない運動量といえます。
ローリングステップを、何人かの中高年登山者に試してみてもらったところ評判は良いようです。今までの歩き方に比べ片脚で立ちやすく、疲れも余り感じられないという意見が多かったのですが、物事なんでも長所には短所があるもので、疲労が軽減できる反面スピードに欠けます。聞いたからといってすぐには出来ません。しかし、慣れてきて腰の向転を小さくして歩けば、一般登山道で十分利用価値のある歩き方といえます。

歩き方は、両脚を逆ハの字形に開き、そして左右の腰を体重移動を交えながら回転させ、身体の軸を保ちながら交互に脚を前に出して歩きます。脚を出すというよりは膝を高く上げるといったほうが適切だと思います。脚をぶっきらぼうに前に出すと、バランスを崩しやすいからです。
ローリングステップ(1)左脚が着地してから右腰を前に出す
ローリングステップ(2)右脚が着地してから左腰を前に出す
膝を中心にして脚をコントロールすると、片脚で立ちやすく身体の軸作りが簡単にできます。コツとしては、急斜面で腕や肩も回して腰の回転を助け、緩斜面や中斜面では小さく腰を回転させるとスムーズに歩けます。この歩き方を要約すると、片脚で立って身体の軸を作り、その軸を回転させながら道を登るというわけです。
ローリングステップは、身体の回転力を利用して体重移動を行うから、歩くときに筋力はほとんど使わず疲労は非常に小さくて済みます。また片脚で身体の軸を作るため、バランスも保ちやすく、体力やバランス感覚に自信のない中高年には、非常に力強い歩き方ができます。

ローリングステップは、日本古来の歩き方であり、刀を差した武士、小脇に風呂敷包を抱えた奥方などこの歩き方に近い物であったようです。
テレビの番組でも腰を回して歩く歩き方を実践していたそうです。
 リトルピッチ
    「少しづつ歩くリトルピッチ歩行」は、下りに適した歩行方法です。斜面の下降には最適で、滑りやすい急斜面の下降には、特に効果的のようです。早いリズムで曲げと伸びを繰り返し、身体はスピードの影響から頭と腰と足が同一線上に並び、前傾や横プレのない姿勢で歩きます。
リズムを保つために20〜30分おきに休憩をとりストレッチをしながら歩のが良いようです。
石の多いつまずきやすい登山道や、雨や雪でスリップしやすい登山道の下りには、重心移動が極めて少ないリトルピッチが最適です。
リトルステップは、急斜面では5cmくらいずつ歩くようにしますが、歩行中は重力の法則により、5cmの前進のつもりが20cmくらいの歩幅になります。
登り同様にショートステップで下りると、歩幅が更に広がってストライドステップになりかねません。注意して歩行してください。
  階段の登下降について 
 階段の登下降
    もともと登山道には階段はありませんでした。斜面がほとんどであり、時折デコボコの激しい階段に似た段差はあっても、長く続く階段の登山道は無かったのです。
最近ほとんどの登山道で何らかの階段を見かけます。地元の人たちや山小屋の人達が、土砂流出防止用の階段を造ってくれています。
それは木材、コンクリート杭、鉄杭などで施工されています。

山を遠くから眺めていると、その雄大な姿には何者にも動じない凄さを感じるのですが、実はとても繊細で弱く、崩れやすいものなのです。雨が降ると土はたっぶりと水を含み、草木に命の水を与えます。だから、降雨後の山は土が緩んでくるから、土砂崩れの危険が予測されます。降雨中の登山道の草木の無いところを水が流れ土砂を流出しています。登山道をよく観察してみてください、両側が人の背丈ほど高く、登山者は低くなっているところを歩いています。かつては同じ高さに有った土壌が流出され現在に至っている証なのです。
そんな登山道を数千人もの登山者が通れば、登山道が崩壊していくのは当然のことでしょう。崩れた登山道をそのまま放置しておけば、さらに道は崩れ登山者の危険は大きくなります。登山者を危険に遭わせたくない、崩れた山を元の姿に戻したい、そんな思いから階段を施工しなければならない事態が発生しているのです。
鳥取県西部にある大山の山頂近くの木組みの階段、奈良県と三重県の県境にある大台ヶ原・日出ケ岳の山頂近くの木組みの階段、奈良県大峰山系弥山北稜の木組みの階段など、数多くの階段が関西で見られます。
これらの山に今から40年ほど前に登ったときの記憶では、現在ほど木組の階段は見られず、駆け抜けられるような斜面だったように記憶しています。
階段が増設されたのは、中高年登山ブームのあおりからか、近年のようです。滑りやすい斜面の登山道を、歩きの苦手な中高年が滑らない策として、階段造りが増えたのではないでしょうか。そうとは知らず、歩きの苦手な中高年から、「階段はしんどい、歩きにくい」と文句を聞きます。滑ると、反射神経が鈍く骨の堅くなってきている中高年は、骨折が危惧されトラブル発生が考えられます。怪我で人命を脅かされるより、スリップによる事故を防いだり、土砂の流出を防ぐためには木の階段を作る方が解決の早道だったのでしょう。
階段に文句を言わず、階段の登り下りが上手になれば、問題はすぐ解決するわけです。
    山行中、橋、階段、梯子、鎖場などを通過するとき、それらの設備が無く、自分の手足と持参の道具でその場所が通過できるかどうか絶えず自問自答しながら歩いてみて下さい。
 階段(段差)の登り
   @ 筋力に自信のない人や中高年者は、ローリングステップで、ゆっくり同じペースで登れば、ハアハア・ゼエゼエしないで楽に登れます。この歩き方は、低い段差(高さ約20cm〜約30cmくらい)で、上段の足場がデコボコがなく平面で歩きやすい段差に適しています。とくに木の階段では有効です。
   A 筋力に自信のある中高年は、靴先を進行方向に向け膝を上げ片脚立ちの基本歩行で、前方への体重移動を交えながら歩いて行く方法をお勧めします。このとき注意したいことは、前脚が着地するとき下から入っていかず、いったん足場より高く脚を持ち上げて身体の軸を作ってから、脚を上からゆっくり音を立てずに降ろしてください。膝の上げかたがポイントです。段差が高くなるにつれ、膝をスーツと高く上げると上半身が起きて、体重移動や背骨や腰の関節が上手に使えます。この歩行方法は全ての登山道に使えますが、体重移動と関節の使い方は少し難しいので、練習をしてください。また、この歩き方はとくに上段の足場が傾いていたり、デコボコで歩きにくい段差や高段差(高さ約40cm以上)に有効です。
   B 高段差を「よっこいしょ」とひと声かけて登る中高年は、進行方向に対し真横に身体を向け、上段に脚が着地してから、腰から上半身を前に曲げ、そして起き上がりながら上段の脚に体重移動しながら立つと、高段差の段上に楽に立つことができます。
段差登りは、@ローリングステップとAショートステップを上手にコントロールしながら歩くと疲れずバランスよく、リズミカルに歩けます。 
 階段(段差)の下り
    登りはいいけど下りが嫌という中高年登山者をを多く見かけます。下りでは恐怖感が先に立つという理由から、下りを苦手としている方が多いようです。滑ったら怖い。頭から転がり落ちそうで怖い。それで尻込み姿勢になって、腰が引けていのです。またその時の恐怖感から、前脚の足首と膝のクッションが使えず、逆に膝を突っ張って身体柔軟さを使わずに下りてしまいます。だから膝を痛めることに繋がるのです。
下りでは、登りのように重心を上に運ぶ必要は無く、力の法則にしたがって、進行方向に身体が運ばれます。だから身体が前方に落ちないよう、支えながら下ろうとする意識が下半身の関節を突っ張らせて、スリップや膝痛の原因になるのです。階段の下降では、特にこの危険行為が恐怖への防御として、中高年に多く見られます。悪い歩き方は早く直して下さい。
階段の下り方には、三つの方法があります。
  @  階段を下るとき、低段差ならほとんどの人が問題ないはずです。ところが、この段差が低段差より高くなったときに、膝を痛めたりスリップしたりするわけです。だから、中段差だろうが高段差だろうが「低段差にして下りる」ようにすればよいのです。その方法は、階段を下りるとき腰を後ろ脚上に置きながら沈み込みます。前脚が着地ま20cm(低段差の高さ)くらいの位置になったら、後ろ脚上にある腰を前脚に移動させれば、低段差の下り方と同じになります。階段を下りるときは後脚に腰を乗せて沈みこむのがコツになります。
  A  低段差や中段差の階段をリズミカルにスッスッと下りたいときは、腰を常に後ろ脚上に保って一本脚で立ちそして速く下ります。この下り方は、スピーディーなため重心である腰の位置がポイントになります。上半身の荷重が、前脚に掛からないように下りなければいけません。常に腰を後ろ脚上に位置させる意識がないと、重力の法則に身体の下降運動のスピードが加わり、腰を前脚の先に押し出そうとする力が大きく働いて、適度な下降スピードと重心の後ろ位置の意識が、下りのときに一本脚で立つコツといえるでしょう。
  B  中高年初心者にお勧めしたいのが「横向き下り」です。高段差を下降するとき、@の動作に自信が持てない場合、進行方向に対し身体を真横に向けて下りる方法ですこの時、下の脚が着地してから重心移動することを、忘れないでください以上のように階段下りのポイントは、前脚の足首と膝のクッションを使って、前脚への衝撃力を緩和させ、そして同じ前脚の足指関節の曲げによるバランス保持にあります。このとき、後ろ脚は上段の縁に付けているのが基本姿勢となります。
  橋を安全に渡る歩行
    日本の山岳地形には、谷や沢があちらこちらに見られ、その谷筋や沢筋に沿った登山道も数多くあり、そこにはいろんな形の橋が登山者のために架かっています。鉄製の橋をはじめ、木製の橋、近くで伐採した太い木を数本並べていかだ式に並べた木橋、細い木を何本も並べた短い木橋など、場所に合わせて設置されていますが、そのほとんどが機械を利用して造られた橋ではなく、自然の中で人間の知恵と力による手づくりの橋です。機械を利用しない手づくりの道や橋には、えてして凹凸や滑りやすい障害があるものです。そこで山に架かるいろんな橋は、どう歩いたら安全に渡れるでしょうか。
太い角材を縦に渡し、横木を多く打ち付けて作った平橋は、傾斜に合わせて横木に踵を乗せてたり、つま先を乗せてなるべく靴底を平らに保って歩けば歩きやすいのです。丸太を組んで造ったような橋は、表面に凹凸があるので、ちょっとしたコツが必要になります。丸木橋から足を滑らせ沢に落ちたり、骨折した例もすくなくありません。「橋を渡るぐらいで心配はいらない」とナメてかからないようにして下さい。
橋の上の歩くには、どこに注意点を置けばよいでしょうか。
     危険個所の歩き方なので、必ず身体の「軸を作ってショートステップで」で歩いてください。
小股で片脚立ち歩行をすれば良いのです。太い丸太を組み合わせた木橋なら、脚は逆ハの字がよいでしょう。
    不安定な登山道は、重心を下げることによって安定した姿勢が作れるから、重心を下げ足首と膝のクッションをよく利かし、少し背を丸め、首、肘、手指を軽く曲げリラックスした形で歩きます。
    身体全部の関節の運動が必要です。
形づくりができたら、緊張感を保ちながら身体のカを抜いて歩いて下さい。
    木橋の上に棟木が付けられていたら、必ず棟木を活用してください。使い方は、水平であれば踵で、下りであればつま先で、登りであれば踵で棟木に乗ってください。言わんとすることは、棟木を使ってつま先と踵が水平になるようにしてみてください。
    橋を渡る前に、大きく深呼吸してから渡ってください。
緊張の余りガチガチになって、思うように体が動かなくなり、今にも落ちそうな人を見かけます。たぶん恐怖感が先だって身体の力が抜けないのでしょう。
以上が橋を渡るときの注意点ですが、自信がないときは人目をはばかることなく、膝を着いて前進して渡ってください。 
  風雨の中を快適に歩く
    雨の中を歩く
    雨の日は、どのように歩けばよいのでしょうか。
いつもと同じ歩き方で歩けばいいのですが、それが最初は難しいのです。
普段の生活では雨降でも普段と同じように生活をしているのに、登山となると簡単に中止する人が多いようです。
・景色が悪いから。
・濡れるのがのがイヤ。
・登山道が滑りやすいから。
いずれにしても雨の日の登山は人気がありません。
だから、雨の日の歩き方を知らない中高年登山者が増加しているのではないかとも思います。
では登山中に雨が降ってきたら、雨嫌いの人はどうするのでしょう。今日はここで「中止です」というわけにはいきません。一年を通して山中での降水(霧や雪も含む)確率は50%をはるかに超え、登山中に雨が降るというのは別に不思議なことではありません。
雨が降ったら「登山は中止」と、当然に思っている初心者の皆さん、このように山で雨が降るのは当たり前なのです。
気象庁の天気予報も、平地での的中確率は高いのですが、気象変化の激しい山岳地帯では、予報も出ているのが少ないですし、予報が的中しないときも多々あります。
登山では雨の日の歩き方を知っていないと、危険な状況を自分で作ってしまうこともあります。
雨の日の歩き方を、必ず覚えていなければいけないということです。

雨の日の歩き方に、特別な歩き方はありませんが
・雨が降るといつもの登山道に水たまりができたり、ぬかるんだりします。
・低山に雪が降った後にはぬかるみができます。
このような水溜まりやぬかるみのところを跳んだり、迂回しようとして、恐る恐るぎこちない歩き方をしている初心者をよく見かけます。
跳んだりぎこちなく歩くのは、スリップしたり疲労の原因になります。
水たまりやぬかるみの登山道では、その中をそのまま歩いてください。
何も無理に水たまりに入りなさいと言っているのではありません。跳んだりぎこちなく歩いてケガをするよりは、汚れたほうがましですよと言う意味です。
いつもと違う動作をすると知らず知らずのうちに、筋肉が緊張し過ぎて疲労がたまります。水たまりやぬかるみの通過で登山靴や衣類が汚れたら、乗り物に乗る前に汚れを落とし、帰宅後、きれいに洗濯してください。跳んだはずみに足首を捻挫したり、恐る恐る歩いてバランスを崩して尻もちをつくよりは、いいと思いませんか。
   強風の中を歩く
    天気のよくない日の稜線上では、強風に見舞われることがあります。こういう場合、動かないでジツと強風がおさまるまで待機しているのがよいのですが、いつ弱まるか予測できない場合、チャンスを待っているわけにもいきませんので、こういう場合は動かざるを得ません。もちろん、強風といっても立っているのがやっとという、強風をいっているのではありません。でも独立峰(富士山、大山)の上では、動くのがやっとという強風は意外にあるものです。
人間が立っていられる限界は風力7(強風、風速13.9〜17.1m/s、大きな木の全体が揺れ、風に向かって歩きにくい)までといわれます。
この風に耐える姿勢は足を肩幅より少し開き、腰を落として、少し前傾して形を作ります。
ストックを持っている場合は低い位置を持ち少しづつ歩いていけば良いでしょう。
登山中はいつ強風に見舞われるかわかりませんので、強風のときの耐風歩行技術を覚えておいてください。腰の高さは、風の強さに合わせてコントロールしてください。
    少しの風ならちょっと膝を曲げるくらいで歩く。 
    強風になるにつれ腰をより落として歩く。
    腰を落としてもさらに飛ばされそうな時は安全な所まで四つん這いで動く。
    状況によっては匍匐前進(ほふくぜんしん)も必要です。
    その場が比較的安全と判断したら待機して様子を見る。
  雪渓の中のアイゼン歩行
    冬に雪がたくさん降る山では雪が解けきれず、夏になっても大きな沢の中や日陰に雪が残ります。これを雪渓といいます。雪渓は夜中から朝方にかけて、気温の低下とともに表面がカチンカチンに堅くしまり、昼間は気温の上昇とともに雪が解けはじめ、表面がグズグズに緩んできます。この時雪渓は、表面の雪解けと、底部と谷の両岸側から解け出して空洞状態になり、崩壊しやすくなって危険な状態になります。また谷筋の屈曲点辺りにはシュルントができています。雪渓が崩壊して雪魂の下敷きになると、多分登山者は最悪のトラブルになります。雪渓の破片はともすれば、トン単位の重さも考えられるからです。
山岳雑誌や夏山の長次郎谷雪渓のポスターでは、雄大な雪渓の上を登山者が長蛇の列を作って登っているのを目にします。雪渓は夏山の風物詩の代表ですが、雪渓は崩壊の危険が潜んでいるので、できるなら雪渓歩きは避けたほうがよいでしょう。時期によっては無理に一般登山道を歩くより、白馬岳の大雪渓のように、上を歩いたほうが安全な場合もあります。
白馬の雪渓をほとんどの登山者が4本爪でのアイゼンで歩いていますが、緩傾斜の雪渓歩きでも六本爪アイゼンを着用してください。
アイゼン歩行は、靴底全部を圧着させるフラットフッティング歩行をしてください。
  快適な歩き方 
   疲れにくい歩き方
     体力に自信のない中高年登山者が疲れにくい歩き方をマスターしたからといって、どんなロングコースでも歩けるものではありませんが、体力に自信のない中高年登山者ほどマスターする必要があります。
同じ距離をあるいても疲労の度合いが違うからです。
・背筋をすっと伸ばし全身の筋肉をリラックスさせます。下半身だけの脚の筋力で無理やり登っていくのではなく、バランスよい姿勢で歩くことです。脚が力強〈動いても上半身の筋肉がこう着していては良い歩行はできません。関節の曲げと伸びを上手にコントロールすることです。
斜面や階段を楽に登るにはどうすればよいか。
片脚で直立しもう片方の足の膝が90度に折れるようにします。この状態で体重移動の推進力を使って、前に倒れ込むようにして移動、上がっている足を真っ直ぐ下もしくは少し後ろに下ろします。
これを繰り返すわけですが、この時のコツは上がっている足に少しタメをつくって着地のタイミングを遅らせます。こうすることによって下ろした足に推進力がつきます。
   ジェエジェエ ハアハアしながら歩かない
    バテずに山を歩くには。
    歩くスピードに緩急をつけること。
    自分のペースで歩くように。
    自分自身の力にあったペース配分ができていない。
    ジェエジェエ  ハアハア呼吸の乱れになるような大きな歩幅、早い速度で登らない。
    山はゆっくり歩けばよい。ゆっくりと歩いても辿りつくような計画を組む。
山は山の歩き方で歩くことが一番大切です。
急斜面や高段差を自分の力以上の速さで登っているのがハアハアする要因。
登りではゆっくりとしたペースで登る。
周囲の速度に惑わされること無くコントロールしながら歩く。
「登りはゆっくり」と意識しながら登る。
スピードの調節方法は、登山道の状況、個人の体力、そして登山方法(日帰り、縦走、沢登り、岩稜帯など)によって異りますが、平地の水平歩行を基準にして、抵抗の大きい登りではスピードを緩め、下りでは重力に逆らわずその力を利用して速く下りましょう。
呼吸を乱さないためには歩く速さに緩急をつけ、スピードコントロールする必要があります。
    膝を痛めるような歩き方はしない
    中高年登山者の悩みといえば、「膝痛を治したい」が圧倒的に多い。
その膝痛になる要因は、初心者が下りで「ゆっくり歩く」方法にあるように思われる。友だちから誘われて登山を始めてみたけど、山の歩き方がわからないまま見よう見まねで歩いているうちに、だんだん膝が痛くなってきた。はじめのうちは我慢して歩いていたけど、登山回数を重ねるごとに激痛を感じるようになり、ついには歩けなくなってしまった。こういう経験をお持ちの中高年が、意外に多いようです。膝を痛める人たちはほとんどがこのパターンであり、しかも下りが鬼門のようです。
できれば膝を痛める前に、正しい歩き方を身につけることです。万一、膝を痛めても少し時間はかかりますが、もとに戻りますからご安心ください。ただし、故障を起こしてから自然治癒で治す前に、膝痛を我慢して登山を繰り返していると、もとに戻らない場合があります。また、膝を痛めながら歩いていると、姿勢が悪くなりスリップして尾根から落ちることも考えられるので、歩行時間の短い登山コースで「ショートステップやリトルピッチを」をマスターしてから、中・長距離コースへすすんでください。
街を歩いているときは何の支障もないのに、登山では何故膝痛問題が生じるのか。少し考えてみてください。歩き方のポイントは、関節の曲げと伸びにあります。街の歩行では、関節の曲げと伸びを意識しなくても、関節の機能は難なく果たしていまが、登山では関節の曲げと伸びが十分なされているのでしょうか。

下りでの関節の機能は、足首と膝関節の曲げ伸び運動で、身体を前に進めるのは登りと同じなのですが、下りではも、「二つ働きが加わります。それは、重力の法則から体重による脚への衝撃力を、関節の運動によって和らげる働きです。
ところが膝痛になる登山者は、膝を曲げず反対に膝を突っ張って、身体が前倒しないようにするから、加速のついた全体重を膝関節でしっかり受け止めてしまうのです。前脚が着地してから前脚の関節を曲げなければいけないのに、逆に伸ばして突っ張ってしまうから、筋を損傷して膝痛になるのです。
膝痛になる中高年の方で勘違いをしている人がいます。「ちゃんと膝が曲がっているのに膝が痛い。おかしいじゃないか」という人です。この人は着地のときから膝が曲がっているのです。
曲がっているから良いというのではなく、曲げる動作、つまり曲げる運動が前脚の着地後に働くことが肝心です。
「膝を曲げる」運動が重要なのです。
前脚の足首と膝のクツションを使えば膝を痛めない膝痛防止には、膝の運動がポイントです。
この運動ができない人は下りで軽く走ってみてください。「まさか」と思うほど、簡単にできるようになりますよ。
反対から登ってくる登山者と交差するときは、20mくらい手前で普通の下降スピードに戻して、「登り優先」のマナーは守ってください。
この方法はハイレベルの歩行テクニックです。
    歩行中身体のバランスを意識する
    歩行バランスの良し悪しは、歩行中に自在に片脚立ちでストツピングできるか。
両脚で身体を支えるのではなく、片脚で身体を支え、バランスを崩したときに反対の片脚で、体の崩れをフォローする。危険な岩稜上やクサリ場で、身体のバランスを崩して転落しないためと、バランスを崩すことで余分な筋力を使って疲労するのを防ぐ効果があります。身体のバランスを保持するには、歩行中の「運動をゼロにしない」ことです。その理由は逆のことからいえます。つまり、身体のバランスが保てていないと、10分、20分という長い歩行運動の継続ができないからです。初心者は、登りで体力の限界を知り、下りで技術のないことを知らされます。これには、いずれも身体のバランスが深く関係しています。急な登りでは、常に崩れる身体のバランスを一歩ごと立ち止まって、無理に維持しようとするから他人より余計に筋肉を使い、人一倍疲れる歩き方になってしまうのです。また下りでは、スリップしたくない、これ以上膝を痛めたくない、ここで落ちたらどうしよう、と恐怖心だけが頭をもたげ、下りては止まり、また下りては止まる歩行から、脚と腰と頭が同一重力線上に重ならないため、身体のバランスが崩れてスリップしやすい姿勢になります。
ではベテランはというと、カの配分を行いながら流れるように登ったり下りたり歩いています。ベテランと初心者を見比べると、身体の動きにその違いが分かります。ベテランは常に動いていますが、初心者は動いて止まり動いては止まる、ぎこちない歩き方をしています。バランス良い歩き方は、見てカツコイイ姿勢でリズム感も伝わってきますが、バランスがよくないと見た目が悪いのです。
歩行中 「運動を停止しない」そのコツは、スピードの緩急にあることをお忘れなく。
   体重移動の力を利用する 
    疲れない歩き方は、自身の筋力を使わず体重移動の力を利用して歩くこと。登山では、体重移動の力を歩行と岩登りに使っており、その使い方の優劣が尾根道や岩稜の歩き方、そして疲労に大きく関係しています。
体重移動のカはどのくらい大きく、また登山以外のスポーツではどういうところで使われているのでしょう。力は腕と脚から作るのが一番簡単です。日常生活では小さな力で済むことがほとんどだから、この二カ所で事足ります。腕だけで動かせない物は、体重を移動することによって作り出されるカを使って動かします。そのパワーは、腕だけではびくともしないタンス、冷蔵摩、ベッドなど、数十`グラムの重量の物を動かす威力を秘めています。
スポーツは競技だから、力の大小が勝敗を決める鍵となります。腕の筋力は大きいですが、脚の筋力となると腕の比ではないでしょう。大きなカを作るとき、腕と脚の他に腹筋と背筋の筋肉も使います。身体から作り出される力は、ほとんどこれがMAX状態になると思います。このカは、だれでも作り出すのは容易なことで、スポーツでは身体から作り出すこのカのほかに、体重の移動を利用して大きな力を作っています。

登山では、岩登りテクニックの巧みな体重移動の方法、また歩行テクニックとしては力を使わない楽な登り方として、体重移動の力をいかに使いこなすかがポイントといえるでしょう。登山は前に歩くスポーツだから、体重移動は後ろから前に行うようになります。前傾体重移動の力を利用すれば歩行姿勢も良くなり疲労度は少なくすみます。
下り階段では、低段差(約20cm) の高さまでは爪先がタラツと下がった状態ですが、着地のときは靴底全体で着地します。靴底全体で着地したら、体重は踵から入って土踏まずを通りそしてつま先に抜けますが、このときけっして蹴らずに引き抜くようにすると、スリップしにくくなります。
このとき、後ろ脚の膝が前脚の膝に変わるとき、膝を持ち上げるのがコツになります。 
   足場を選ぶ
     一般ルート登山道
ほとんど歩きやすい道と一部歩きにくい個所で構成されています。部分的に凹凸が激しかったり、1〜20mにわたり岩がゴツゴツ露出していたり、1〜20mの極めて急斜面な登山道がそれに該当します。
バリエーションルート登山道
バリエーションルートは逆に歩きにくく危険な道が続く登山道です。一般ルートの登山道とはいわず「一般ルートから外れた、より困難な登路」と登山用語では言ってます。初心者や中級になりたての中高年がこのルートにトライすると、頭の中が真っ白になり恐怖感で身体が金縛り状態になりやすいので事前に充分なトレーニングを積んでください。ガイドブックに紹介されている登山ルートの中には、このバリエーションルートに属する登山ルートが、含まれている場合もあるようですのでご承知置きください。
登山道で、下ばかり見て歩いている人は登山初心者です。そして、前方と周りの状況を視野に入れないで、山道を歩くのは非常に危険です。人間のバランス感覚は、目や耳から伝わる身体中の神経と触覚(皮膚から伝わる触感)の働きが大きく作用します。ですから、登山中よく耳にする「足下をよく見て」というアドバイスは、神経を足下だけに集中させるため、バランス感覚を狂わす原因にもなりかねませんが言葉の言い回しはともかく、そういう注意をうけたら滑落、転落、転倒などしないように心掛けてください。歩きにくくしかも危険を含む登山道は、中級程度の中高年登山者でも目の方向が下に集中しやすいものです。
初心者をバリエーションルートに誘う前に、もっと歩きやすい登山コースを選んで、歩行トレーニングも兼ねた誘い方をしてください。
ショートステップ歩行を基本に、リトルピッチ、ストライド、キックバック、逆ハの字、ローリングなどいろんな歩行方法を覚えたら、次は歩きづらい登山道を選んで、その足場に合った歩き方の練習をして、上級を目指してください。足場を選びながら歩けるようになれば、安定した歩き方から安心できる登山ができます。
憧れの剱岳や穂高岳のバリエーションルートの登攀も夢ではなくなってきます。
   出っ張りを利用する 
    木の根や石、そして階段の縁の出っ張りなどを、上手に使いこなすと身体のバランス保持に役立ちます。
スリップを防ぎかつ疲労が軽減される歩行テクニック
木の根や石を登山道で見つけると、拒否反応を起こすくらいイヤなものでも自分に有利な方向に変えられれば、不利なものがだんだん減って登山が次第に安全になります。
登山道に木の根が土から盛り上がっていたり、石がボコボコと飛び出ていたりすると、そこを避けて通過する登山者がとても多いようです。その時の重心は障害物の反対方向に逃げて、バランスを崩しやすい姿勢に変えています。バランスが崩れそうになれば、反射的に身体が崩れないように筋力で支えようとします。またバランスが崩れたときは、スリップしたりつまずきやすくなります。できるだけ木の根や石の出っ張りを避けずに歩くように努力しましょう。
木の根や石の出っ張りを登りでは踵の下にして、下りではつま先を乗せるように歩くといいでしょう。
   滑りやすい場所は避ける
    土の斜面が続く登山道は滑りやすく危険です。
一歩ごとに靴のエッジを利かせてゆっくり歩いててください。
傾斜のある土道は雨で濡れているときが最もスリップしやすい状態です。
    土の階段は特に注意、土砂の流れ防止の横木に乗っても滑ります。横木と土の間に靴を置いてゆっくりと下ってください。石段は先端に下手な乗り方さえしなければ大丈夫、注意をして歩行してください。
    岩稜が続く登山道、岩の表面は小さな粒子が多くまた凹凸も所々にあるので、恐怖心さえ取り除ければ、靴底の摩擦がよくきいて問題なく歩けます。
へっぴり腰になっては鉛直線がずれますので注意のこと。
    ガレ場やザレ場の続く登山道は、ガラガラですのでスリップしそうに思いますが、大きく脚を取られるような滑り方はしないので、バランスよく注意をして歩行してください。
   歩行時間と休憩の取り方を一定にする
    登山は楽しくなくてはいけません。
生活の息抜き場と考え、ストレス解消にはもってこいの行動ですので登山は、いろんな目的に応えてくれる万能スポーツともいえます。
登山は長時間行動する運動だから、体力配分には充分注意して行動しないと、疲労からいろいろな失敗をする恐れが出てきます。
登山は他のスポーツと違い、途中で棄権したり中止することができません。登ったら降りなくてはならないのです。計画と準備を十分整えてから登山しなければいけないのです。

登山は、歩いてそして休憩するパターンを繰り返します。以前は五十分歩いて十分休憩するパターンが一般的でした。最近は中高年登山隆盛からか、歩行時間や休憩時間には余りとらわれず、その場に合わせて臨機応変で構わないという意見も聞かれます。
基本的な歩行時間と休憩時間は、登山計画の段階でメンバーの力量、ルートの困難度にあわせて決定しておくとよいでしょう。
時間は50分歩いて10分休憩にとらわれることはありません。これは一つの目安です。
@今回の登山は1時間歩いて5分の休憩をとろう、と計画しメンバーがそれに対応できればよいと思います。
A今回は40分歩いたら疲れを覚えたから、次回は35分歩行で計画する。そのような計画をするとよいでしょう。

時間設定をした計画や、自分の体調に合わせた計画も快適な登山に繋がります。
   たえず呼吸を意識する
    ハアハア荒い息づかいで登る登山者は正常な呼吸をしていないと考えてください。これは初心者がスピードオーバーで歩いたのが原因です。
「呼吸をよく意識する」するとスピードオーバーをコントロールできます。
呼吸方法は「時々細く長く吐き、時々早く大きく吸い込む」ようにしてください。
空気を深く吸い込むのではなく、長く吐いて肺の中を空にしておけばその反動で、吸うことは簡単にできます。また早く大きく吸い込むことで肺の中の空気を循環させます。
呼吸は常に意識してください。人間の身体は、酸素なしでは動くことはできないのです。
体内の酸素が少なくなると、
@身体に異常事態が発生します。
A脳に異常事態が発生する。
B頭痛や顔のむくみが発してきます。これを脳浮腫といいます。
C夢中で歩くとハアハアゼエゼエ呼吸困難症状になり、酸素不足で顔から血の気が引いたり、歩行不能にもなる。
D過呼吸により体内の炭酸ガスが減り呼吸困難を起こす。


登山で大切なことは、
@ハアハアしない
A体調を維持する
B自分のペースを守る
C疲労しない
Dバランスを保持するには

「呼吸を意識する」ことがポイントです。特別な呼吸法はありません。必要なのは正常な呼吸をして、登山に支障のない酸素を無理なく体内に摂り入れることです。
  歩行中の目の位置
    目の配分は、動作のキーポイント。
動作はゆっくり動くほどむずかしく、早くなるほどやさしくなる。
理由は力の大小が関係しています。ゆっくり動作は力が弱いからバランスの保持がむずかしく、速い動作は反対にカが大きいからバランスを保持しやすいのです。
自転車に例えるとゆっくり走るほど方向性が難しく、早くなるほど方向性はよくなります。
緩急がコントロールされた力が継続すると、リズミカルな動作が長く続けられます。平衡感覚を保持するには、時間当たりの動作が多いほど難ししいのです。
例えば、 ターンの多いスキーでは1秒間の動作が細かく要求され、走行距離も1秒間に数m進むため、目は常にはるか先を見ていなければ早い動作に身体が対応でません。登山はスキーに比べ、時間当たりの動作ははるかに少ないのですが、バランス保持に要する目の方向はスキー同様に要求されます。
尾根から脚を踏み外したり、急斜面でスリップする時は姿勢が関係しますが、姿勢を良くするには目の方向が大きく関係しています。

普通の登山道での目の方向。
歩きやすい登山道というのは、凹凸や急斜面また急階段が、全体を通して少ない登山道をいいます。こういう登山道は、初心者がまず選ぶのにぶさわしい道といえます。
登山道難度でいえば★★★★★評価のうち★〜★★ぐらいでしょうか
歩きやすい登山道では、ほとんど目の方向は15m〜20mほど先を見て、高段差や凹凸の激しい個所そして急斜面を通過するとき足元を見ます。見るといっても2〜3歩先程度で、それ以上長く悪路が続くときは歩き方を変えます。
歩きやすい登山道での目の方向は、ほとんど道先と周りをよく見ながら時折足元を見る程度です。
ポイントは、歩行中の緊張感を抜きリラックスした歩行をすることで、筋肉のストレスを和らげるつもりで歩くことです。
@歩きやすい道では前方をよく見ながら
A歩きにくい道では下方全体をよく見ながら歩く

目の位置が悪かったり、注意が散漫になると事故につながる。
登山における遭難事故の要因は種々多様にあります。
@不注意と技術不足による岩稜でのスリップや尾根からの滑落。
A体力不足から歩行不能による疲労凍死。
B知識不足から緊急時対処ができず遭難になる。
C経験不足から事故に遭う。
など、細かくいえばこのほかにもたくさん考えられます。
中でも@が多く見られますが、少し気をつければトラブル回避は簡単です。
ABCの技術不足は初心者に多く見られますが、@の不注意は初心者はもちろんベテランにも見られます。
歩きにくい道や危険な登山道では、歩きやすい登山道とは反対に、ほとんど下を見て歩きます。
ここでいう危険な登山道は、スリップすると致命的な事故になるような個所や、凹凸、急斜面、急階段が長く続き、そしてそれらが入り交じった登山道を指しています。
歩き方は、三歩先をつねに見ながら、バランスを取りやすい足場の良いところでスピードを緩め、とっさに前方を見てすぐ目の方向は下方に戻ります。歩きにくい登山道、危険な登山道ではこの繰り返しになります。
また、体力に自信があり、岩壁登攣や氷壁登攣そして冬山の経験豊富なリーダーは、メンバーの様子を見ながら歩くので、場合によっては歩きやすい歩き方でも構いません。その時、左右の目は前方を見ているので、意識的に足元を見ることも必要です。
頭の中で、「足元に気をつけろ」という指令をたえず出していれば大丈夫です。

登山では、目の方向がトラブルの有無に大きく関係していることを、よく認識してください。