鷲峰山 金胎寺の行場 2019.04.09
 
行場体験 
修験者の荒行道場に足を踏み入れてみました
金胎寺(こんたいじ)は、京都府相楽郡和束町原山にある真言宗醍醐派の寺院。山号は鷲峰山(じゅぶせん・標高682m)開基は役小角(役行者)と伝えられていますが詳細は不明らしいです。大和(奈良県)の大峯山に対し「北大峯」と称された、山岳信仰の霊地であり、山内には現在も奇岩怪石が連なる行場(ぎょうば)があります。

大昔に行った記憶がありますが、どんな所を歩いたのか覚えていません。ただ亡くなった舅を連れて行った記憶があります。最近「行場シリーズ」に凝っているのか岩場ばかり選んでいる気がします。(笑)Junkoちゃんは宝塚6時34分の電車に乗り、我々は海老江駅で合流します。靖ちゃんは今回はお休みです。下車駅は「JR加茂駅」8時33分到着です。ここからはバスを利用します。加茂駅でトイレを済ませ、階段を下りているとジョンが「早く!早く!バスが出るぞ!」待ち時間なしでスムーズにバスに乗れました。「原山バス停」で下車、のどかな山村といったところです。バス停前に大きな案内板がありました。
▲加茂駅からバスに乗り原山で下車 ▲地形図とイラストマップを照合中 ▲あっちですよ
『和束に初めてお茶の木が植えられたのは鎌倉時代原山と伝わります。これは茶業興隆の祖とされる明恵上人から種の分与をうけた海住山寺の承認により栽培されたと言われています』と書いてありました。なるほど見渡す限りお茶畑が広がっています。この茶畑の中の道を登って行くのです。今までに無いロケーションに気分も高揚し観光気分で歩いていると集落のおばあさんに出会いました。「おはようございます」「おはようさん、円形茶園にいくのかね?」「いいえ鷲峰山の行場に行くのです」と言うと「つい最近、事故がありレスキュー隊がきていたので気を付けて行きなされや」と声を掛けてくれました。 
▲原山の集落を抜け、茶畑の中を進みます 
 ▼円形茶園 ▲ ホオジロが出迎えてくれます
茶畑を歩いて行くと「円形茶園」への道標があり、少し回り道をして見に行くことにしました。茶畑と言えば真っすぐに植えられているものしか見た事がありませんが円形茶園は美しい半円を描くように作られており朝日が当たってとても美しく感じました。「もうここから引き返しても充分値打ちがあるね」と言いながら写真に収めました。新芽の出るころは若葉色が美しいのだろうなぁ・・・。 
▲茶畑が終わると山道に入ります
▲鷲峰山・金胎寺山門前に到着です ▲役ノ行者木像
ゆるやかなようで、きつい登り道の茶畑から離れてしばらくすると「鷲峰山・金胎寺登山口」の看板がありました。「いよいよやね」茶畑で癒された華やいだ気分からチェンジを登山モードに切り替えて、きつい九十九折れの道を黙々と登って行きました。「こんな山の上に金胎寺があるの?」1時間以上かけて登ったと思います。やっと山門らしき建物が見えてきました。金胎寺到着です。受付で入山料300円を支払い、入山帳に記帳し、スワミベルトとヘルメットを装着しいざ行場へ。 
▲鷲峰山金胎寺 山門 ▲安全ベルトを装着して行場に入ります
▲かわらけ投げ ▲行場の入り口 ▲迎へ行者さん…ここから行が始まります
入口にかわらけ投げの場所があり・・そう言えば大昔ここで瓦投げをしたことがあるような・・・遠い遠い昔の記憶を引っ張り出していました。瓦投げは、厄よけなどの願いを掛けて、高い場所から素焼きや日干しの土器の酒杯や皿を投げる信仰の一端です。 
▲東の覗から沢まで下降します ▲後ろは断崖です ▲怖いなあ
行場までは20分ほど平坦な道を進んで行くと、分岐点にさしかかります。「迎へ行者」の像があり微笑んでいる様に見えました。みんなで手を合わせ無事を祈願しました。行場は左から沢方面に降りていき、登ってきます。赤い矢印岩場につけた赤いマークを見落とさぬ様に歩いていたのですが 胎内くぐりを見落としていきなり千手の滝に到着してしまいました。地図で確かめたら、少し引き返して行けば辿り着いたのですが登り返すことは誰も好んでいないため胎内くぐりはスルーすることにしました。(失笑)千手の滝は小さな滝ですが、大きな巨木に挟まれなんとなく神秘的です。 
▲フィックスロープも使います ▲鎖も使います ▲千手の滝
 ▲五光の滝に到着。 決して美しいとは言えませんが黒光りがしていて、左右の仏像が神秘らしさを演出していました。
▲五光の滝から護摩壇の取り付きまで沢沿いに歩きます…途中苔むしていて滑りそうなところではロープを使います
護摩壇と書いてある看板の所から、また登って行きます。ここからは岩登りの連続です。
伊勢山上・飯福田寺も結構な行場でしたが、あの行場の数倍難しい様に感じました。修行場だから、手とり足とりの安全策は無いのです。自己責任で行けと言う事なんでしょうか。それこそが修行だと言わんばかりの難行苦行でした。
ここからが本番なのかきつい。ほぼ垂直な岩を登ります。困難ならば巻き道ルートがあるのですが、師匠が巻き道を選ぶとも思えません。危険地帯はロープを出して安全通過。鎖を思いっきり握りしめながら、登りきりました。岩を登り終える度に喉がカラカラ・・「鐘掛岩」と書いてある岩場で後ろからソロの男性がやってきました。「小鐘掛岩」で先を譲りましたが初めてらしく悪戦苦闘していました。行き詰まりジョンに手足の置き場を教わり何とか通過していかれました。ここをソロで通過するのは危険すぎる。
次なるは一枚岩の「平等岩」のお出ましです。ここは登攀禁止らしく鎖が撤収されていました。きっと過去にここで事故があったに違いないと思うほどの強烈な岩場でした。ここは大人しく巻き道を取ることにしました。だいぶ疲労困憊してきており足場の良い場所で握り飯を流し込みました。美味しくいただくと言う余裕はありませんでした。ただシャリバテ防止のための食事です。

まだまだ続く岩場・・「もうしばらくは行場コースは歩きたくな~い!」と叫んだほどでした。「蟻の門渡り」を通過する頃は足がヒョロヒョロしてきました。「あかん休憩しよう」
上を見上げれば岩、岩、岩、いったいいつになったら平道になるねんと少々怒り気味に歩いていると先を歩くジョンが「分岐に出たどぉ!」と叫んでくれました。やれやれ。
▲あとは「迎へ行者」の所まで帰って来るとゴールしたも同然と足取りも軽い。行場入口を通るとすぐに寺の建物が見える。入山帳に下山時間を記入。おわった~!
 ヘルメットを脱ぐと汗でボトボトに濡れていました。多分冷や汗も混じっていると思います。境内にライトバンが停まっており「ひとり千円で乗せてくれないかなぁ」と本気で思いましたが交渉に行く勇気がありませんでした。九十九折れの険しい下山道を膝をかばいながら茶畑に戻るまで約1時間。ジョンが「15時37分のバスか16時37分のバスやなぁ」と時間を告げた途端に「15時37分に乗ろう」と足が速度を増しました。しかし勾配のきつい下り坂を、到底間に合うはずもなく、あきらめて茶畑で長めの休憩を取りました。
▲キセキレイに見送られて ▲鷲峰山参道入り口まで下りてきました ▲あーあー良い一日でした
バス停に到着したのが16時前、少し肌寒くなってきました。バス待合室で残りの弁当を食べていると犬を散歩中のおばさんが話しかけてきました「ここらあたりは猿、猪、鹿が出て困っている」と話てくれました。猿も猪もお茶は好まないらしく被害はないそうです。しかし鹿は茶畑の中をピョンピョン飛んで穴をあけて困ると話しておられました。増えすぎて被害が出ると憎たらしい動物にしか見えません。
私達だけしか乗っていなかったバスも停車する度に外国の方が乗り込んでこられました。観光客らしくなくて定住している様子です。最近は茶畑が外国の人達の間で人気になっているらしく宿泊施設や体験茶摘みなどもあるらしいです。

いつもなら「反省会」をするのですが今回ばかりはその元気もなく「次回にまとめてしよう」と言うことで解散しました。結構運賃もかかりも距離も遠かったです。
 
今回の教訓
このコースで何か悟りの様なものを感じたとすれば、仲間との信頼関係が何より大切と言う事ではないでしょうか。
登山というものに同じ考え方を持ち、知識や安全についても共有する。同じメンバーでトレーニングを繰り返し、技術を向上させてきた仲間たち。僅かなミスでも補い合い失策を無くする。だから安心。
 「姫の感想」
いやぁ参った!参った!が本音です。想像以上にきつかったです。ロープが無ければ通過できなかったと思います。ハイカーたちは気楽に通過されていますが怪我をすると救助困難な箇所なので下調べをしっかりして、コース経験者と一緒に入山して欲しいものです。全行程、気を抜かずに、しっかりと修行体験できました。しばらく夢に出そうです。「また行きたいか?」と聞かれれば今は「行きたくありません」と答えると思います。
 「Junkoちゃんの感想」
靖チャン、残念やったね(?)伊勢山上よりまさにup ・down、up ・down の繰り返し。肉体的にもスゴカッタ。岩場は正に修行の場、いつも新しい体験をさしてくれるお二人に感謝、今日1日は疲労困憊、暖房を入れた部屋でスローに過ごすのが自分へのご褒美で~す😅はじめてみる尾根までとどくかと思う美しい茶畑に感動。最近は外人にも受けるらしく帰りのバスに乗り合わせました🎵
  「JONの感想」
前回行ってから既に20年以上経っています。記憶の中では簡単に行けました。ポッチーの親父さんを連れて行ったのですが、こんな所をよく行かせたものだと反省しきり。若いからできたことかも知れません。あそこは修験の道場であって物見遊山で行くところではありません。50歳の頃と今では、体力も体のバランスも大違いです。
しかし行きたければ行けばいいと思います。ただ絶対に事故が無いように十分な訓練を積み、装備は完璧にして。
事故が発生したらリーダー、サブリーダーともに責任を問われます。訴訟問題にまで発展する場合もあるようなので、くれぐれもお気を付けて。