2016
あれから 5年8カ月の月日が流れていました
平成23年4月10日から11日に遡ります。熊野古道・小辺路を歩いたときのことです。
伯母子岳を下山し、次ぎの峠「三浦峠」を目指す登山口の集落に「五百瀬」があります。
その集落にかかる橋を渡るとき、ふと下を流れる神納川に目をやると一匹の犬が泳いで渡っていました。「おっ、おっ犬掻きが上手いなぁ」と感心していると橋を渡り終えたところにその犬が、まるで道先案内人だと言わんばかりに立ちふさがっていました。「どこまでついて来るのかな?きっとすぐ諦めて帰るわ」と思っていたのですが三浦峠までの標高750mを、いとも簡単についてきたのでした。あれから5年の歳月が流れていました。紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産に追加公認されるという話から、再び熊野古道を歩く計画を立ている時、あの時の犬はどうしているのだろうか、黒と茶と白の混じった小型犬はいまは大きくなっているだろうと思うといても立ってもいられず「会いに行こう!」と言うことになりました。
朝6時大阪を出発。早朝のため高速道路はスムーズに動き午前8時には谷瀬の吊橋に到着していました。谷瀬の吊り橋は、奈良県吉野郡十津川村にある日本最長の生活用鉄線の吊り橋です。橋の銘板には「たにせばし」と刻まれていました。
 谷瀬の吊橋
十津川(熊野川)に架かり十津川村上野地と対岸の谷瀬を結ぶ高さ54m、長さ297mの吊橋。
この橋は、当時完成に800万円を要しており、教師の初任給が7,800円、米10㎏が765円であった戦後復興期の時代に、地元の住民が1軒当たり20 -30万円を出し合い、村の協力を得て建設した生活道路橋です。こんな看板をマジマジと眺め観光目的で渡る私達と違い、地元の人々の当時の苦労を想像しました。この橋ができたおかげでどれほど生活が便利になったかはかり知ることはできません。地元の人や郵便配達員などはバイク等で渡って行く光景が見られますが観光客は自転車やバイク等二輪車での通行は禁止されていて、徒歩での通行のみとなっています。(当たり前)真ん中に幅約80cmの板が敷いてありその上を歩くのですが真ん中に行くほど揺れます。「危険につき20名以上は同時に橋に乗らないように」の注意書きがあり「20人以上乗ったら切れるのか?」と思わず考えてしまいました。昨日は入口に管理人はおらず無料で往復できましたが、混雑期には一方通行規制が行われ対岸から臨時有料バスでもとに戻る処置をとっているそうです。橋の真ん中で交差することは危険だものね。
日本一の谷瀬の吊橋を渡り終え、ナビを「五百瀬村」にセットしました。いよいよコロの居る村へと向かいます。どこの家に飼われているのか全くわかりませんが村の入口にある「民宿 岡田」さんに行けば何とかなるだろうと気楽な発想であります。コロに会いたいと言う気持ちは大きく膨らんでいました。雨がシトシトと降り始め、道中は平成23年9月の台風12号と15号で被害を受けた紀伊半島大洪水の爪痕がまだ大きく残り あちこちで修復工事が行われておりました。三浦峠登山口にかかる橋のたもとに一軒の民宿があり訪ねてみることにしました。玄関は施錠はされてないものの人影はなく諦めかけたその時おかみさんが帰ってこられました。
事情を話し写真を見せるとコロはこの地区では有名犬らしくすぐにわかりました。しかし「風来坊犬のコロは、今日もどなたかの家におじゃましているのでは」と話してくださいました。
コロの写真や土産をおかみさんに託しました。帰りがけには ご親切に飲み物と柚餅子まで頂き、丁重にお礼を述べ民宿を後にしました。

帰る途中 集落のはずれで出会った小父様に写真を見ていただきました。「ああ、この犬は優秀な猟犬ですよ」 飼い主のお家はどこか訪ねてみると 「この道を上がった一番上のお宅で飼われている犬ですよ。すぐわかりますから行かれてみては」 
このまま帰る気にもなれないので、そのお言葉に背中を押されるように訪ねてみました。
ここがコロのおうちのようです こんな素敵な自然の中で自由に暮らしているコロはきっと幸せだと思いました
声掛けをしても家人の応答はありませんでした。お屋敷の中には2頭の犬がいました。一頭の犬は薄茶色一色で、繫がれていました。もう一頭はコロそっくりの毛並みをしており、繫がれておらず自由に歩き回っていました。耳が立っておりちょっと違うようでした。
コロの兄弟分でしょうか、それともどちらかがコロのお母さんなのでしょうか。コロだと判別することはできませんでした。5年8カ月の時の流れは長いですね。
2匹の犬と対面して集落を後にしました。「たかが犬、されど犬」
2011年4月に出会ったコロ コロのお母さんかも知れない犬
 湯の峰温泉 公衆浴場 つぼ湯&内湯
つぼ湯 内湯 牛馬王子の像
5年前に三浦峠を越える時、コロにどれほど勇気をもらったことでしょう。その時の様子を思い出すと胸にジーンとくるものがあります。その時の様子は下記URLからご覧いただけます。
http://www.hime8kin.net/2011sankokiroku/110409kohechi5.html
 ひめの感想
コロには会えなかったものの その地を訪れたことで、あの時の感動が蘇りました。「元気にしている」ことが解ってホッとしました。
来年行く果無山脈縦走の下見がてら果無集落まで車を走らせ、帰りには湯の峰温泉で「つぼ湯」の源泉に入り気分も身体もほこほことして 家路に着きました。
文:美智子姫