2016
「登山への第一歩」 LESSON 2…岩稜帯の急傾斜は靴を信じ自分を信じて…リトルピッチでゆっくりと
山行前日の土曜日には地雨(纏わり付くようなうっとおしい雨)が降り、しとしとと夕方まで降っていました。「岩稜帯歩き」の講習なので雨が少しでも残っていればコースを変更しなければ危険です。天気予報では「日曜日は晴れ」と出ていましたので予定変更することなく午前8時の電車に乗るべく海老江駅の改札に行くと偶然にもヒカルゲンジさんとバツタリと出会いました。この日のメンバーはヒカルゲンジさん、登山歴第1歩の「KEI君」師匠のジョンと姫の4人です。待ち合わせは阪急山本駅午前9時です。JR川西池田駅で阪急に乗り換え、山本駅下車、時を同じくして「KEI君」も到着です

 「また~中山かぁ今年で4回目だぞっ~」そう苦笑しながらも講座に使用する恰好の岩稜帯があるためこのコースを選択しました。
中山、清荒神に比べ山本コースは距離が長いため登山者が少なく感じます。
「リーダーをする場合は参加者がひとりでも怖いと言えばロープを惜しみなく出して安全通過させてやらなければならない。それが出来なければリーダーを引き受けるべきではない」厳しい様にも思えますがロープ操作をしっかり覚えてもらうために早くも檄が飛びました。

朝の挨拶を済ませ去年同じコースを歩いたことがあると言う「KEI君」をトップにJR中山寺駅に降り立ち30分ほど街中を歩いて阪急・山本駅方面から最明寺川を通るコースを行くことにしました。 日曜日だと言うのに登山者があまりいませんでした。(やっぱり距離が長いから敬遠されるのかなぁ) 
立ち寄った最明寺の滝は前日の雨で水量が増えており見ごたえがありました。
「箕面の滝に負けてへんなぁ」信者さんらしき人達が滝に向かって手を合わせていました。滝をしばらく眺めてからいよいよ中山最高峰へ向けてスタートです。
15分ほど歩けば、山本コース名物の岩場の前に到着しました。ここで休憩を取ったのちに、いよいよ講習開始です。

この辺りの岩場で斜度30度ぐらいです。靴を信じて自分を信じてリトルピッチでゆっくりと下ります
どなたが張ったのか分かりませんがフィックスロープは朽ちかけています。ロープに頼って体重をかけて登ると切れて時に大事故につながります。
岩場を登っていく15人のグループ。トップ行くリーダーらしき人は後続のメンバーを気にすることなく登って行かれましたが、中には右往左往されている方もいらっしゃいました。リーダーの任務と立ち位置を再確認されては?と感じました。
岩稜帯の片隅を利用して「正しい岩場の歩き方」をみっちり1時間ほどかけて行いました。まずは手を使わずに登ること!時々やってくる登山者の後ろ姿をみていると残置ロープに全体重をかけて「ウンコラショ」と登っていました。残置ロープはバランスをとるために「支え持ち」はいいけれど力任せにロープに頼っては危険です。いつ張ったのかわかりませんし、雨風にさらされて、ひどいところでは大きな岩がロープの上に落石していました。
ヒカルゲンジさんもベテランの付添とは言え、受講生と同じ様にステップの練習をされていました。私は記録写真係です。高い山々には頂上直下では必ずと言っていいほど岩場に出くわします。その時「怖い」と思いながら通過するか、快適に通過するかは初歩の段階で技術を磨く必要があります。 
ほどよく実技講座を終え尾根道に入りました。しばらく歩くとまたまた岩稜帯の出現です。ここでもリュックを置いて下まで降りて「足の置き方、靴の出し方」など基本中の基本を時間をかけて学びました。再びリュックを背負い前進するのですが「KEI君」の歩き方がみるみる上達しているのがわかります。師匠の話にはメモを取り、時間があけば細引きヒモでダブルフツシャマンの練習をして、意欲があるのがわかります。ケヤキヒルズカントリーを見下ろせる展望のよい大きな岩場で休憩を取るつもりでしたが先客がいて、そのまま進み、中山最高峰手前の風の無い広場を見つけて昼食にしました。
昼食時にはレーションの話が出ました。「こうして座って時間が取れる昼食と、歩きながらパンなどをかじる方法がある」
ことを説明しました。
昼食が終わるとロープを大きな木に支点を作りブルージック移動の練習をしました。練習の中には「滑落」も想定して時々ロープにぶら下がる場面もありました。プルージック登攀が効果があると言うことを目で見て確認してもらいました。斜面を利用して滑落した人を救助する練習をしていると東大阪から来たと言う男性が熱心に我々の訓練をみていました。そして「羨ましいなぁ!教えて貰えて幸せやのぉ!ワシら教えて貰う人がおらへん」北アルプスに行きたいけれど・・・と大変興味深そうに見ておられました。
温かいと言っても時折吹き抜ける風は冷たく震えがくるほどに体が冷えてきました。
「風邪ひきそうやなぁ。とにかく動こう」後片付けをして最高峰へ向かいます。
北穂高岳東稜、通称ゴジラの背に行ってみたいとおっしゃる東大阪のおじさまと
「え~っこんなに長かったかなぁ?」歩いても歩いても到着しません。山頂近くになると行き交う登山者も増えてきました。やっとこさ山頂到着です。20人ほどの団体さんが出発するところでした。
下りのコースはヒカルゲンジさんの希望で谷筋を下りました。急な長い階段を下ります。「登るのも大変な階段だけど下りはもっと大変やなぁ」と言いながら急な階段を下っていきます。沢の源頭に降りたころ、先ほど最高峰で見かけた男性が引き返してこられました。
「中山の駅に行きたいのですが間違っているみたいで・・・」と話しかけてこられました。「いえいえ、間違っていませんよ。私達も中山駅に向かうので一緒に行きましょう」といい、東尾根コースの分岐まで降りてきました。東尾根分岐で「私達は沢沿いを降りますが岩がゴロゴロして滑り易く、東尾根コースは尾根伝いですので歩きやすいと思います」
と説明してしばらくは私達の後ろをあるいていたのですが、いつのまにか姿が消え引き返して東尾根コースを選択した様子でした。沢筋コースで1組の老夫婦を追い越すことになりました。様子を見ると、どうもおばあちゃんの方が弱っているみたいでおじいちゃんが励ましていました「こんなにきついと思わずに入ったのですが・・・」とのことで私達もこのお2人には沢筋コースは無理だと判断しました。「分岐まで引き返して東尾根コースを歩くと五月台と言う住宅地にでます。そこからバスが出でいますのでそちらを利用しては如何ですか?
と言うと「ありがとう。そうします」と言っておられました。振り向いても姿が見えなかったので引き返したのでしょう。 
前日の雨で水量が増え何度も渡渉を繰り返しながら木製治水ダムまで戻ってきました。午前中に学んだことをすべて下りで実践している様子が見受けられて「やる気」を感じることが出来ました。中山寺の梅林は見頃です。甘い香りが漂ってきて疲れが一気に吹っ飛んだきがしました。師匠が「KEI君」に「今日の君は80点!」(え~っえらい高得点やないの?)
「あとの20点は速度の問題です。同行者がトップの速度に無理がないかの判断がまだ不足している。振り向いて待つのではなく、曲がり角がきたら後ろをさりげなく振り向き、状態を見て少し距離が開いていたらスピードを落とす」次はヒカルゲンジさんに「二番手の仕事はトップの速度が早くても、釣られてついて行かない。2番手はスピードコントロール役だからね」
中山寺梅林は今が見ごろです 
今回は立ち止まると寒くて実施できませんでしたが「心肺蘇生」の講座も合わせてしようとしていました。
嘗て籍を置いていたウオーキングの会のメンバーが会社の仲間と白馬岳に登った時、白馬岳直下で「気分が優れない。ちょっと休んで行くからみんな先に小屋に行っててくれ」と言うので、仲間達は付添者も置かず全員小屋に向かったそうです。休んでいる間に心不全で亡くなったのです。通りかかった別の登山者によって小屋に通報されたそうです。何故ひとりだけでも付き添ってやらなかったのか悔やみきれません。山の中で起きる不整脈、心不全、高山病など救命救急の知識があれば助けられた命もあります。自分自身が助けてもらうためには同行する仲間に知っておいてもらう必要があります。自分で自分の心肺蘇生は出来ませんからね。 
阪急中山観音駅に到着したのが午後5時を過ぎていました。宝塚に出ていつもの中華屋さんで「反省会」をしました。
 ひめの感想

駅で「KEI君」と合流した時、リュックのパッキン詰めが綺麗だったので「いち褒め」しました。芦屋・地獄谷で荷物チェックした時は何がどこにはいっているか本人もわからなかった様子でした。しかし今回はパッキングの美しさと加えて「簡易トイレ大用・小用」(2褒め)それに緊急時の「サラシ一反」も入っているそうです。(3褒め)山の会のメンバーが23人在籍しており、そのリーダー的存在になろうとする意気込みが感じられました。受講時にはメモもしっかり取っていました。師匠の労に対して感謝の意を表していましたが「KEI君」が一人前になることが師匠の喜びになると思います。毎月1回を目途に講習が続く様子ですが、忘れていることも沢山ありベテランのヒカルゲンジさんや某山岳会会長さんも貴重な体験をされています。もし他にこの講習を希望する方がありましたら初心に戻って受講することをお勧めします。

文:美智子姫