2016
「安心してください!ロープ繋がってますよ!」

2016年は暖かすぎて番狂わせな幕開けとなりました。今年の初歩きはホームグランドの六甲山系芦屋川から出発です。
まだ夜の明けきらぬ午前6時12分の電車に乗り待ち合わせ場所の阪急芦屋川駅の広場に着くとまだ薄暗さを感じます。
日帰り登山でこんなに早く集合したのは初めてでした。
広場で若い見知らぬ青年が「おはようございます」と声を掛けてくれました。この広場でこんなことも初めてです。
この一言でさわやかな朝が迎えられ、楽しい1日になりそうです。

富士見平繋がりの千葉の方とジョンがフェイスブックを交信をして、ひょんなことから六甲山を案内することになりました。
ご主人の実家が大阪で正月休みを利用して里帰りしているのだそうです。銚子にお住いのお友達も同行するとの事でした。
「多分あの人だな」と思われる2つのシルエットがこちらを向いて手を振りながら近づいてきました。
「おはようございます。お久しぶりです」

あれは3年前、富士見平でレスキュー講座を開催時に丁度そばを通りかかりロープワークに興味があるのか熱心に質問していた人がこの日の客人です。

朝さわやかに挨拶をしてくれた青年は銚子の職場の後輩&山仲間らしく一緒に歩くことにしました。時間は午前7時と早いものの日曜日とあってかなりの人が中央稜を歩くことが予想されます。コースはお任せと言うことでしたので地獄谷コースを選択しました。3人共ボルダリング経験者で身体能力は抜群でロープを掛ける必要はなさそうなのですが私達の鉄則でもある
「初めての地獄谷はロープを掛ける」を遂行するために所々ビレイを試みました。ボルダリングは熟練であっても外壁は経験が浅く途中でロープワーク
を実施しながら進んでいきました。このコースはアイゼントレーニングで混雑するのですが登山者は本番の山に出掛けているらしくこの日は空いていました。

六甲山系のこのコース、ロックガーデンは近代登山の発祥の地でもあり、日本の山岳地系が有するものは全て揃っていると言っても過言ではありません。ザレ場、ゴーロ、沢、小滝、岩場、無いのは雪ぐらいでしょうか。雪の代わりにザレ場でアイゼン・ピッケルワークの練習はできますね。
A懸 尾根を行きます
いつものサメ岩で休憩。前回来た時よりも崩落が進んでいるように見えました。滝を高巻きするのか斜面には踏み跡が無数にできておりはコースが出来上がっていました。おまけに誰が掛けたのかトラロープが張られていたり様変わりしていました。「滝を迂回するくらいなら地獄谷を歩く意味ないのになぁ」と思いつつ進んで行きました。

風はさわやかで暖かく1月だと言うことが信じられません。A懸岩に出てきました。ゲレンデを見上げて「うわ〜っ凄い」と言うので「登りますか?」「はい」そんなわけで A懸岩を登攀することにしました。かと言ってハーネスも携行していません。そこでシュリングを簡易ハーネスにする方法を伝授し3人がそれぞれ登攀しクライムダウンで下降の練習をしました。
今回の練習は、いつの日かジャンダルム通過時にきっと役立つことでしょう。懸垂下降も難なくクリアしピラーロックへ進みました。

A懸垂岩の上部尾根にて A懸垂岩を見上げてちょっとびっくり…ここは入門の岩場です
Niiyan…初めての岩登りに感激かな
Hiroくん… らくらく登ってきます、若いっていいなあ
Ayakoちゃん …一番楽しんでくれたのはこの方でしょうか、さすが経験者です
 B懸尾根の北端が万物相です。今は折れてしまいましたがピラーロック跡の方が有名ですね
風吹岩です 
 花崗岩のピラーロックはテキサスを思わせる(行ったことないけど…ナ)特殊な景色に感嘆の声を上げて喜んでくれました。
銚子から来たと言う
hiro君と言う若者は六甲山 に登るために関西方面に家族旅行にやって来たとの事でした。
「ならば岩梯子まで案内すっかな」ジョンは張り切ってピラーロックから風吹岩を通りブラックフェイスの岩場を通り
岩梯子まで案内しました。
岩梯子と荒地山ボルダー群です
ここでお別れです。ここから先はNiiyanのリードで有馬温泉をめざします。 

姫は岩梯子の下でみなさんとお別れすることにしました。(と言うか腰痛の悪化を防止するための用心)ジョンはリュックを置いて岩梯子の上まで案内しお別れとなりました。岩梯子で待っていると色々な人が登ってこられ見ていて面白かったです。
あるお爺さんは「岩梯子は危ないから右手を行く
と言い残し私達が帰り道に使うコースをの登って行きました。(岩梯子の方が手足をきちんと置くところがあるのになぁ)またある人は2本のストックを手首に掛け、ストックを伸ばしたまま登ろうとしてストックが岩場につっかえて滑落しそうになりました。「危ないなぁ・・」上から人間が落ちてきては大変と待機場所を移動したくらいでした。

しばらくするとジョンが戻ってきて高座谷コースを下ることにしました。二人とも久しぶりの初歩きのためか疲労困憊…。
「息切れがする」「足があがらん」「しんどい」の連発でロックガーデン入口の堰堤まで戻ってきました。もうすぐ午後2時だと言うのにまだまだ登山者が登って行きます。
「ゴールを一体どこと決めているのかな?」
堰堤では大きな黒色のイノシシが立ちはだかり「シッシッ」と追い払いましたが猛突されたら大怪我になるところでした。
この間見たイノシシと同じかな。

JONが言うのよね。
「イノシシと並んで立って、写真撮るから」すぐそばに立ちましたがおっかなかったです。
もう少し早く出てきてくれたらみーんな喜んだのになあ。
銚子の3人組は有馬温泉に迎えの車が来るため午後4時到着予定とのことでしたが間に合ったのでしょうか?

縁とは不思議なもので3年前の5月、富士見平でわずか1時間足らず言葉を交わしただけでしたが、楽しく歩くことができました。彼らもまた「日本百名山」を目指して いるらしく今後が期待されます。

文:美智子姫