●6月19日(木)
はじめての「歯痛い」・・え〜っ!ネパールのイモトアヤコかっ?ごめん、ごめん「歯痛い」じゃなくて「敗退」や!
いつもは芦屋川から一軒茶屋を経て有馬に抜けるコースの常連でしたが、今回は少し変化を付けて「菊水ルンゼ」コースを歩くことにしました。
ダム工事で長い間遡行が不可能だった菊水ルンゼコースは今では工事も終わり、踏み入ることも可能とのことで初めて挑戦することにしました。
資料によると難易度は芦屋・地獄谷の2倍とも3倍とも書かれており緊張が高まりました。既に行かれた人たちの山行記録を熟読し下調べはバッチリです。
鈴蘭台駅 一般登山口はスルー ダムへの標識 神鉄の車庫
車止め 神戸電鉄 標識 烏原大橋
名号岩の全景 クライマーの姿を見ることもあります。
菊水ルンゼは、六甲山・菊水山の西側の急峻な斜面に位置するルンゼです。ルンゼとは、ドイツ語起源の登山用語で「水の浸食作用で岩壁にできた急なけわしい溝」のことをいうのだそうです。ダム工事で、長い間、菊水山の西側の斜面は進入路が閉鎖され、麓からの遡行が不可能だったそうです。
ダム工事が着工から四半世紀を経て完成したことを受け、平成18年11月19日からダム周辺のコースが一般に開放されたそうです。 阪神淀川駅午前8時集合し尼崎駅で直通特急に、新開地で神戸電鉄に乗り換え、鈴蘭台駅で下車。鈴蘭台到着9時20分、結構な運賃とアクセスに時間がかかりました。駅前のコンビニで弁当を買い菊水ルンゼ進入口へと向かいました。
線路に沿って南に進むと電車の通過の多いこと、多いこと、ひっきりなしに走っています。そういえば平日の通勤時間帯だもん電車の本数が多くて当たり前の話ですね。(年金組は呑気でいいなぁ)
「石井ダムへ」の看板を確認しアスファルト道を線路沿いに歩くと資料に書いてあった烏原大橋(からすはらおおはし)を渡り、ガードレールを乗り越えて有名な妙号岩の見学に行きました。「ガードレールをまたぐってほんまにここが入口なの?」と疑うほどの不可解な入口です。短い足でやっとこさ妙号岩の下部に立ちました。
大きな岩に「南無阿弥陀仏」の妙号が彫られています。いったい誰が何のために彫ったのか不思議に思いながら妙号に手を合わせました。
昔はこの岩壁を登るとバチが当たると言い伝えられてきたそうです。
南無阿弥陀仏の名号が刻まれている名号岩
見学を終え、元来た道に戻り、烏原大橋を渡り直し、いよいよ菊水ルンゼへの進入路です。進入路と言ってもバリエーションルートのため看板があるわけでなくうっかり見落としてしまいそうでした。ここでヘルメット、スワミベルト、ロープなどの準備をし、いきなり急な斜面の進入路に入りました。事前調査によると分岐で道間違いをするとソーラーパネル観測機器の保守管理用の道に迷い込みUターンを余儀なくされると書いてありましたので気を抜くことなく進んで行きました。

とても登山道とは思えない荒れた果てた斜面に、微かにある踏み跡をたどりながら、ひとたび滑り落ちたらダム湖に滑落してしまいそうな危険な道を通過し「これでほんとに合ってるかい?」と何度も疑問に思いながら、かと言って他にルートがあるわけでもなく踏み跡を頼りに全身イバラに刺されながら藪漕ぎをしました。本来ならここら辺で「道間違いや!危険だ!引き返そう」と判断するのですが装備が整い少しばかりのクライミング技術を習得していたため「行け〜!行け〜!行くも地獄。戻るも地獄や〜!」と、つるべ方式でジヤングルの中を彷徨うように前進しました。かと言ってさほどの不安もなく道なき道を進んでいきました。
ここから入りまーす 今はルンルン
痛い!痛い!痛い!…サルトリイバラとの格闘の連続だーい
ウルシもあったよ…首の周りがカブレたよ。
帰路遠目に見た菊水ルンゼ…これがルンゼやぁ
さすがに道迷いしていることを感じながらもルートの無い新ルートを開拓していきました「次に来た人は私達の踏み跡を見て安心して登ってくるやろうなぁ」と少し罪の意識も持ちながら私達はロープを持参していたから進めたと思っています。「あっ帽子を落としたっ!」「えっ〜こんな危険なとこで?」「テンションかけて!」「ゆるめて!」の繰り返しのため、ビレイ方式は「Jiji」や「ATC」を使わず半マストでビレイをし藪漕ぎをほぼ2時間続けました。
展望の良い場所から隣の谷に目をやると菊水ルンゼらしき谷が見え隠れしました。「行き過ぎて取り付いたみたいやなぁ」二人とも体力の消耗が激しく足場が悪くてもロープで身体を確保し休憩をとりました。

1時間以上もイバラの洗礼を受け続けジョンの手は傷だらけで血で赤く染まっています。姫のスパッツの膝も破れてしまいました。「ジョンの手の傷は治るけどスパッツはもとにもどらな〜い!高かったのになぁ!」開き直り精神からか、そんな冗談を飛ばす余裕が出てきました。「おっ!ロープが掛っているぞ登山道に合流したな!」やっと先が見えてきました。「菊水ルンゼは次回リベンジすることにして今日は取り付き点を探そう」とルートらしき下山道を30分ほどくだりルンゼ合流の道に出ることができました。進入路からは雑草が生い茂り見落としても無理ない様子です。朝ここを通過しているのですが全く気づきませんでした。
しかし藪の中を彷徨ったなあ 菊水ルンゼ側から見た、南無阿弥陀佛の名号
道路に転がって毛虫状態やー…どれが一番美しい蝶になると思いますか…一番左、二番目は蛾、三番目は脱腸
リベンジする時の参考にとカメラに周囲の風景を収めアスファルト道に倒れこむようにして寝転んでしまいました。
しばらく放心状態でしたが気を取り直してロープを仕舞い登攀道具を仕舞いもと来たアルファルト道を引き返しました。「ギャー!」姫の悲鳴にジョンが「きっとヘビに違いない!」と猛スピードで走りました。元気回復した様です。「そっちにヘビがおるのに〜」ヘビは高さ10メートルほどある石垣に
ホールドを探しながら上手に登っていきました。「りっぱなクライマーやなぁ」
鈴蘭台に到着したのが午後2時コンビニでビールとキャンデーを買い込み電車に乗り込みました。冷えたビールは五臓六腑に染み渡り生気が蘇りました。
電車の中で登山靴の紐を緩め、常時テンションのかかった状態の足を休めてやりました。靴に蜘蛛の巣や泥が異様についていたため帰宅後登山靴をジャボンと水浴びさせてあげました。勿論リュックも水没です。夏のリュックは肩紐部分が汗を吸い込み異様な臭いを発します。使用した都度お風呂に持ち込んで清潔にしておきましょう。
菊水ルンゼ ルンゼ見つけられへんかったけど…イタドリ見っけ 本日の収穫…超一級品だよ
●多発する六甲山での遭難
市街地から近いこともあり手軽に登山が楽しめる地理的条件を備えていますが、急峻な場所もあり毎年六甲山で遭難する事例が後を絶ちません。
滑落事故や転落事故は元より、道に迷ったり午後から登山を開始して明るいうちに下山できず懐中電灯等を装備していないために日没後に一歩も動けなる事例が多発しています。六甲山は手軽な登山コースではありますが山を甘く見ることなく十分な注意が必要です。菊水ルンゼの単独行は絶対危険です。資料にも「マニア向け」と表示されているぐらいですからクライミング技術のある登山者のルート経験者と同行するのが安全かと思います。
【ちょこっと感想】
●ジョン
まいったなあ、まいったよ。ルンゼに入れなかったとは…まいったなあ。このリベンジは夏が過ぎて涼しくなった頃、こそっと行きましょうか、今度はマゼンタチームにサポートしてもらって、藪漕ぎの無い様にね。
●ひ め
いやぁ〜!笑って誤魔化すしかありません。(大笑)ほんま力尽きました!ロング藪漕ぎはオーバーに言うと北鎌尾根以来でしょうか。正面に見える妙号岩に書かれた「南無阿弥陀仏」が見守ってくれたのでしょうか。何とか登山道らしい場所に出た時は感動しました。山はどこでどんな感動があるかわかりません。「苦あれば楽あり」とはこのことでしょうか。パワーも燃え尽き暑さも加わりヘロヘロ登山でしたが愉快でした。 
写真: JON  文:美智子姫