●5月25日(日)
「置いてかないでっ〜!槇尾山はなかなか手ごわい貸切りゲレンデでした」
槇尾山は、大阪府和泉市にある標高600mの山。標高500mくらいのところに行基・空海ゆかりの古刹 「施福寺・西国三十三ヵ所の第四番札所」 があり、参拝登山者の多い霊峰です。
槇尾山の山頂からの展望はあまりよくないのですが八ヶ丸山頂の展望台からは、大阪湾、六甲山、淡路島、関西国際空港などが一望でき、地元での評判は高いそうです。途中には、地場産業のみかん園があり、シーズンにはみかん狩りも楽しめるようになっているそうです。 
朝陽が登り始めた午前6時45分、「野田阪神駅」から地下鉄千日前線に乗り難波経由、南海電鉄河内長野線に乗り河内長野駅7時40分着、ここでマゼンタチームと合流し車に同乗させてもらうことにしていました。関空行バス停に恰好の長椅子が置いてありこんな早朝から利用者もいないだろうと「ドッコイショ」とリュックを置かせて頂きました。それから数分後にクラクションの音がしてマゼンタチーム到着です。挨拶もそこそこに目的地の槇尾山に向かって爽快に走りました。車の中は山口百恵の音楽が流れ、同じ世代を過ぎてきたことを物語っているようです(きたおかさんはちょっと若いよ)窓を開けると柑橘類の爽やかな匂いがしてきました。地場産業でもあるみかんの花が咲いているのです。大阪の雑踏からわずかに離れるだけで自然豊かな場所がまだ残っていることに感動しました。
槇尾山登山者用駐車場で準備運動 いよいよ40分のアルバイトです 途中仏岩の見学に行ってきました
2008年ダイヤモンドトレイル(金剛山地から和泉山脈へかけての縦走路で、屯鶴峯から槇尾山までの50kmにも及びます)私達は6回に分割して歩きましたが最終回で槇尾山を訪れ山頂で休憩したとき「あれっ〜こんなところにピンがある〜クライミング出来るんやなぁ」と興味津々でシュリンゲで確保してもらい下を覗き見たことがあります。やまたび倶楽部20名ほどで賑やかに槇尾山を訪れた懐かしい地です。(参考にその時のレポートです)
http://www.hime8kin.net/yamatabi/sankokiroku/dai6.html)

「いつか行ってみたいな」そんな願いが6年ぶりにチャンスがやってきました。私達が地獄谷をトレーニングに使うようにマゼンタチームさんはアルプス等を目指す時は槇尾山にてトレーニングを積み重ねている、いわばホームグランドなのです。心強い!今回はマゼンタチームさんのお誘いを受けて槇尾山蔵岩のゲレンデを訪れることにしました。 
槇尾山の駐車場には登山者なのか、クライマーなのかわかりませんが数台の車が停まっておりました。「今日は空いてるなぁ」多いときには駐車場から、はみ出す程の多くの利用者だそうです。リュックを背負い約1時間かけて登って行くと本日のゲレンデがあるそうです。途中に仏岩のゲレンデがあるらしくリュックをデポして見学に行くことになりました。しかし前夜の同窓会で飲み過ぎたのか(飲んだ量は少なくても盛り上げ役としてはかなり酔ったかも・・)二日酔い状態で「ここで待ってる〜」と姫は早くもへたり込んでしまいました。10分ほどで戻ってきてまた狭い登山道の登りが続きました。「着きました!」見上げてみるとなかなか立派な岩壁です。
蔵岩基部に到着です 40分のアルバイトの終了です 早速ハーネスつけてガチャつけて
マゼンタチーム 姫&JONチーム 1ピッチ目のビレイはマゼンタさん フォローで登攀開始
「お二人には簡単すぎるかも知れません」そんな言葉を信じて自信満々でやってきたのですが様子が違っていることに早くも気が付きました。「登れるかなぁ・・・」そんな不安な声が喉を突いて出てしまいました。「アルパインやから行くしかないでぇここには戻って来ぃへんで〜!」何ともやさしい師匠の言葉でしょう。追い打ちを掛けるように「つるべで行こう」笑福亭釣瓶の話ではありません。登攀方法の「つるべ」なのです。支点までの距離はありそうですが1ピッチ目の、やや緩やかそうな壁を姫が登ることにしました。次はジョン、3ピッチ目はトラバースして4ピッチ目は姫、5ピッチ目はジョン6ピッチ目を担当した姫に異変が起こりました。ロープが動かなくなったのです。「どうしたんやっ?」ビレーをするジョンが下から叫びます。マゼンタチームは何度も経験したコースで問題なくリズミカルにほぼ平行しながら別のコースを登っていきます。「ダメですっ!手も足も見えませんっ!」「よぉ見て見ぃ!落ち着いたらきっとあるはずっ!」声は聞こえて、言ってる言葉は理解できますがどうにもなりません。あと5センチ背丈があれば届きそうな所に大きなコブが見えているのですがギブアップすることにしました。急遽その場に支点を取りジョンが登って来て交代してくれました。こわかったです〜!(怖かったです・その1)
6ピッチ目は姫のリードで、マゼンタチームが進んだロープ線上を参考に跡をたどって行きます。チムニーと言う割れ目の中を突き進んでいくのですが後少しのところでコースを左に取り過ぎて「二進も三進もいかない」ことになってしまいました。下でビレイするジョンからは私の姿は見えないためアドバイスも受けれません。マゼンタチームのビレイヤーが登ってくるのを待ってロープを借りることにしました。俗に言う「ずるっこ」です。マゼンタチームのロープを借りて左から右へ飛び移ることに成功しました。上でテンションを掛けてくれたマゼンタチームのリーダーが「あんなに恐ろしい光景を見たことはない。まるでサーカスや」と言われました(怖かったです・その2)
ソロの男性が細いロープを使って懸垂下降や登攀練習をしていました。ATCを使わずカラビナに半マストで下降しプルージックで登っていました。私達が昼食を終え再びロープを垂らしはじめると「お先に上がらせていただきます」と声を掛けて下山して行かれました。楽しんでる表情ではなく何かの訓練だったのでしょうか、もっといろいろインタビューしておけば良かったなぁ
最終ピッチをいくマゼンタさん きたおかさん頑張ってます
午後からは頂上直下の岩場の登攀下降を何度か繰り返し、姫グループは加齢に伴う身体機能が低下しはじめました「今日はこのくらいにしとこかっ!」ジョンの終了ゴングが鳴りましたので狭くて小さなクライミングシューズを脱ぎ足を解放してやりました。あまり長く履いていると爪先が痛くなりつらくなります。その後はマゼンタチームの登攀の見学をすることにしました。二人ともなかなかの頑張り屋でガンガン攻めていました。身のこなしも軽やかです。私達に気を使ったのかマゼンタチームも終了することになりました。リュックを置いている場所までわずか5メートルほど裸足で歩こうとしましたが痛くて歩けません。子供のころ平気で裸足で走り回っていましたのに足の裏の皮が薄く退化してしまっていました。 
 姫の懸垂下降  あーあー疲れた…年寄りにはきついなあ
荷物を片付ける前に少し雪山大好きなマゼンタチームの質問でもあるアンザイレン中の確保の仕方の勉強もすることができました。残置ロープの回収方法、相棒の滑落停止、自分自身の滑落停止などわずかな時間ではありましたが中身の濃い講座でした。「さあ帰ろう」と下山準備に取り掛かり、わずか30分ほどで駐車場に戻ってきました。
ちこっとロープワークのお勉強 
帰 路
←槇尾山登山者用駐車場から見た、仏岩です

帰り道にあるお好み焼き屋に立ち寄り反省会をしました。登山がえりの反省会は山屋の基本です。(ほんまかいなぁ?)お好み焼きを食べ終わっても今日の山の反省、次の山の目標、さらなる山と山談義に熱中していると店内に客が立て込んで来て、追い出される前に自主退席しました。帰りの車の中は「山口百恵から美空ひばり」のBGMに変わり心にくい気遣いに酔いしれながら河内長野駅でお別れすることとなりました。楽しい1日をありがとうございました。これに懲りずまたお誘い頂けると嬉しいです。
 帰りは河内長野でお好み焼きパーティ?
マゼンタチームから、仙丈岳のお土産に長英荘小屋の記念バンダナを頂きました。長衛荘は「こもれび山荘」として名前も新たに再スタートしており「長衛荘」の名前入りの品は今後手に入らないと言うプレミアものでした。夏場に虫除けとして利用している「ハッカ油」を自家製でどうぞと「消毒用エタノールIk&ハッカ油原液」も頂き嬉しかったです。スポーツ店で購入すると結構高価格なのです。いま使っている「ハッカ油」が残りわずかになりましたので10倍に薄めて「自家製ハッカ油」を作ってみようかと思っています。 
結果はまた報告しまーす。
「みんなの感想」
 きたおかさん
昨日はどうもお疲れ様でした。
JONさんたちとの初めてロングコースの登攀。ご一緒させて頂いてすごく楽しかったです。
いつもは伊東嬢と二人きりでお互い黙々と、(いえいえ時々は喧嘩をしたりぼやきながらですが)登っているのですが
姫さんたちと声を掛け合いながらの岩壁、(岸壁ではないですよ)ほんとに楽しかったです。
さすがJONさん、最後の壁なんかリードで悠々と完登。僕なんかどのルートもみんな完敗でした。
姫さんの「おっ」というようなアクロバチックなムーブも見せていただきました。
お恥ずかしい限りですが、まあ僕たちはあんなレベルですので今後共よろしくご指導下さい。
今回はお好み焼きを目の前にぶら下げましたが次回は焼き肉でもどうでしょう。どうもありがとうございました。
 マゼンタさんさん
昨日はありがとうございました。
さすが JONさん・姫さんチーム!
初見の岩場なのに 難なく登られ 脱帽でした。
こちとらチームは大師匠を前に きたおかっちは緊張したのかいつもスイスイの岩場で四苦八苦。
私も四苦八苦。でもまあ私はあんなもんです。
実は私 岩登りが大嫌いで、いつも きたおかっちに引っ張られて行ってますが、また近いうちに行って ビレイの練習と今回登れなかった岩のリベンジを・・と闘志がムクムク 負けず魂に火がついてしまいました。機会がありましたら、またご指導よろしくお願いします  。
 姫さん
「こわかった〜」そんな場面もありましたがビレイヤーの的確なアドバイスとマゼンタチームさんの声援のおかげで何とかゴールできました。初めての岩場は、登攀する岩場の経験者に同行させてもらうのが一番安全だと言うことも体験しました。ピンの位置、逆相の岩、踏ん張りの要る箇所など次に行ったときにはもっとスムーズに登れるのではないでしょうか。登攀グレードを上げるためのクライミングではなく楽しければ人に何と言われようと良いんだと強がり言ってきましたが、フリークライミングと違い、荷物を背負ってのアルパインでは、ある程度登攀技術を磨かないと迷惑をかけることもよ〜くわかりました。1か所だけ give up した箇所があり悔しい思いをしましたが自分の技術を過信せず未熟さも正直に告白する勇気もいると言うこともよ〜くわかった今回のクライミングでした。充実感はもちろんのことですが得るものが多かったです。
 ダボハゼちゃん
槇尾山蔵岩、インターネットでは度々目にしていて、実際に登って見たいと思っていました。取り付いてみるとなかなか難しい局面があり立派な岩場であり、アルパインのマルチピッチにの練習には最適な岩場でした。終わってみればヘロヘロもうあきまへん。
ロープ捌きの雑なところを暴露してしまいましたが、だいたい全てにおいてあんなもんです。手袋の使用も「今日は暑いから着用しません」と答えましたが、リードのビレイには手袋をしますがフォローのビレイでオートブロックタイプのデバイス使用時はだいたいフォロー側は手袋はしていません。(横着です)
グランドからスタート時はビレイヤーの自己ビレイは足場が良ければ取らなかったり、支点のピンが古かったりするときはビレイヤーの体を宙に浮かせてクライマーにかかる衝撃やピンにかかる衝撃を和らげたりします。
局面局面で使い分けてください。
ぜひまたご一緒できるのを楽しみにしています。しかし体重とお腹の出具合を何とかしなきゃあ、きたおかさんのスリムなスタイルが羨ましいです。次回はチーム名を大薔薇チームに変えなきゃあ。お疲れ様でした。
しかし冗談の坩堝でやかましかったなあ…ごめん。
 1ピッチ
横長のグランドから数本のラインが確認できる。今回は壁の中央にあるラインに取り付いてみる。攀り始めは少し急な感じだが
3mほど攀ると傾斜が少し緩くなる。ホールド、スタンスともに十分ある。時折礫石の抜けたあとのポケットが現れる。カムが入るほどではないが
フィンガーホールドとして活用できる。脆い所もあるので注意が必要。グランドから45mくらいのところに数箇所のビレイポイントがあるのでこの辺りで繋げばよい。
 2ピッチ
1ピッチと同じような感じ、傾斜は緩くなってくる。壁の中央辺りに小さな木があるので攀るラインによって右を通るか左を通るか判断が必要。
40mくらい上がったところに数箇所の終了点がある。ここからは右横に進んでいくので、そこのところを念頭においてビレイポイントを構築する
 移動ピッチ
3ピッチ目に向けてトラバース気味に移動、小さな谷を越える、途中2箇所のリングボルトがあるので、初心者同行の場合や不安を感じたときには、クリップしておくと良い。谷を越えると右寄りに岩を伝うように樹木との間を緩やかに下っていく。
 3ピッチ
左右2本のラインが伺える。左は20mくらいのところに凹角のある岩が飛び出している。この真ん中を抜けていくのだが、やや被り気味のため、早めに上部にクリップしてから攀じ登るほうが良い。右のラインは極端に難しいところは無さそう。左右のライン、いずれも終了点は同じような位置で、ガリーの下で構築する。
 4ピッチ
ガリーの中に入っていくが、ホールド、スタンスとともに十分ある。左側の足はガリーの左側面にかけたほうが安定するポイントもある。ガリーの終わりのほうで左に取り付ける所があるがガリー沿いにそのまま直上。
抜けたところで右の岩壁へ進む、一本の松ノ木があるが右側から交わせばよい。あと一息で終了点。
 移動ピッチ
5ピッチへ向けて右のほうへ少し下り気味に進むと細いテラスに着く。このグランドが5ピッチのスタートになる。ここから見上げると大きな壁は圧巻。
 5ピッチ
この岩壁の上部は槇尾山の縦走路になっている。
岩壁にはホールド、スタンスともに多い、ただ岩の脆い所もあり注意が必要、逆層の感じもする。取り付きから少しの間は傾斜が緩いが真ん中辺りを過ぎると90度近い状態になってくる。ここを登りきると蔵岩アルパインルートも終了です。
写真:きたおか JON  文:美智子姫