●4月7日(月)
「私が名付けた佐土新の無理壁」
じつに半年ぶりのクライミングではないでしょうか。岩肌も暖かくなってきたし久々にクライミングに出かけることにしました。
出来れば山桜の美しい場所にしたい(出来ればイドリ採りも兼ねて・・)と考え、姫路別所という所にある「佐土新の岩場」を選びました。この地には前回訪れた時に課題を残したまま帰っていましたので気になっていたのです。
クライミング道具のロープや登攀道具、それに花見気分の弁当2人前をいれると11.6s、久々のズッシリとした重みのあるリュックです。
出かけようとすると家の前でサクラの花びらを掃除している隣人に会い朝の挨拶を交わしました。
「重そうやなリュックやなぁ。ちょっと担がせて」と言うので「どうぞ」と手渡しましたが担ぐどころか持ち上げることが出来ませんでした。急にこの重さは無理かも知れませんが日々慣れると大丈夫です。
それに登攀が始まるとロープを出して、ハーネス、ガチャ類は身体に着けてしまうので少し軽くなります。
ひめじ別所駅前の別所獅子のモニュメント 
ジョン曰く「2週間も山に行かんと体がなまって山が歩けなくなる〜」そう言えば、八ヶ岳から戻って約3週間も経っていました。
「場所はどこでもエエから姫が決めて」と言うので「では鎌倉峡へっ!」と言うと「あそこはマムシが出るからあかん!」と却下されました。ならばと言うことで姫路別所にある岩場まじりの山をアンザイレンを組みアルバインクライミングを楽しむことになった次第です。
アンザイレンは相棒との呼吸が大事で普段から練習をしておかないとロープを弛ませたり踏んだりとうまく行かず危険地帯でトラブルを引き起こす
こともあります。以前、登山歴ベテランの方と地獄谷をアンザイレンで歩きましたが、まぁロープを引きづるわ、水に濡らすわと散々な目に遭ったことがあります。「人のために命は落としたくない」と言う考え方から通常アンザイレンは取り入れてない様子に驚きました。
しかし呼吸さえ合えば相棒が転倒・滑落しかけてもテンションをかけて難なく危険地帯を通過することができます。勿論自分にも同じことが適用できます。実際に北鎌尾根では大きな岩が抜け落ちてあわやの参事となるところでしたがアンザイレンをしていたおかげで無事通過したことがお互いにありました。
4月だというのに初夏を思わせるほどの暑さです。阪神淀川駅7時16分乗車、大阪駅7時46分初姫路行に乗車し加古川で乗り換え「ひめじ別所駅」で下車しました。運よくバスが来て15分ほど揺られました。(と言うかバスの発車時間に合わせて乗り継いできたのですが・・・笑)
バスを降りると、そそり立つ巨岩が目の前に現れました。ここは以前、一服剣くんのトレーニングにも使用した岩場です。
岩場は町からほど近いところにあり、バス停から歩いて20分ほどで到着です。山の香りが爽やかで、わずかしか歩いていませんがもう汗ばんでいます。 麓はソメイヨシノが満開、山に目を移すと山桜も咲いていて遠くから見ると雪をかぶったように美しく白くなっていました。おまけにツツジも満開でサクラとツツジの競演で、まれに見る見事な光景でした。
山も麓も春の装いです
岩場は見た目には緩そうですが結構厳しくロープを出してパートナーチェックを終え、いざ登攀スタートです。
すぐそばに「山神社」の岩場があるため、この場所は空いていて、ちょっとした穴場です。ここで何本かコースを変えて登攀下降を繰り返していたら11時を過ぎてしまいました。
「軽くなるので少し早いけど弁当食べてからアルパインルートに突入しよう」
弁当の重量も朝、計量しましたので2.2sありました。その分軽くなります。ところが・・・クライミングシューズに履き替え、登山靴をリュックに仕舞って歩きますので減るどころかズッシリと重くなってしまいました。(アッチャー!)
登れない…姫が名付けた 「ぬりかべ」ならぬ「無理壁」    
1ピッチ、2ピッチの馬の背をジョンがリードし、樹木がさえぎりお互いの姿を確認することはできないため、時々掛け合う「大丈夫か〜?」「大丈夫で〜す」の声でお互いの動作を確認し合いました。
3ピッチ目を私がリードさせてもらいました。ランニングビレイを掛ける箇所がひとつもなく、背中の荷物は重いし、滑るとどうなると考えると冷や汗タラタラ流しながら、やっと立木を見つけて支点を作り無事ジョンを引き上げて、あとは岩場の終了点までアンザイレンをしてゴールです。上から見降ろす景色は山桜や麓のサクラが満開でツツジの赤が花に花を添えているといった感じの豪華な景色で、田園風景も美しく心を癒してくれました。
遠くに見える播磨アルプスの桶居山・鷹ノ巣山や山神社の岩場が美しく見えています。
尖った岩峰の上にあがると周囲の峰峰を楽しめます。低い山なのですが充実感はいっぱいです。
岩場の終了点に前回課題を残した垂直&オーバーハングの岩場があるのです。
手ごわそうな岩なので危険回避のために上から巻き込み、支点を取り、懸垂下降で降りてトップロープで登攀開始です。
しかし、どう見ても歯が立たないとわかっているのですがジョンが「行ってみぃ〜!行けるやろ!うん行ける!」と励ましてくれるので下部の挑戦開始です。登り始めてすぐ「あかん!ロアダウンで下して〜」と早くも登攀を断念しました。諦めかけましたが、これでやめるには根性なしに見えるため再度挑戦し、何とか下部をクリアしました。
しかし前にそそり立つ垂直の壁とオーバーハングの壁はどう考えても無理でギブアップしました。
続いてジョンが挑戦しましたが、やはり垂直の壁もオーバーハングの壁も師匠をもっても無理でした。
「今日はこれくらいにしたろか」出ました〜終了ゴングです。
私はこの壁にゲゲゲの鬼太郎の「ぬりかべ」ならぬ「無理壁」と名前を付けました。
山神社の岩場を見下ろす 今回は姫もリードでJONを助ける
ロープや登攀道具を仕舞い、終了点から少し歩くと御着から高御位山の縦走路に出ました。
ここからは一般登山となりますが「岩の宝殿」といわれるほどですから下り道もほとんどが岩場の上を歩きます。
急な岩場の下りもありますので、ゆっくりと安全に下山いたしました。
最近「烏帽子の岩場」でクイックドロウがピンから外れグランドフォールするという事故が発生しました。重傷を負ったものの死に至ってないのが不幸中の幸いです。
私たちも事故を耳にすると自分に置き換えて原因や事故防止策を追求し、注意をするようにしています。
播磨アルプス・桶居山から高御位山へのライン
さあ、今日はこのくらいにしといたろ 帰りはゆっくり…ノロマの亀で
下山して車道沿いを歩いている姫の目つきが変わりました。イタドリを見つけようと必死の様子です。しかしまだ少し早いようですね。帰りのバスは1時間に1本しかなく、たったいま出たところの様なので駅までの歩くことにしました。民家に植えてある菜の花やスミレや水仙などの春の花を見ながら朝、降り立ったひめじ別所駅に到着すると運よく快速電車がホームに入ってきました。

この佐土新の岩尾根は変化に富み、なかなか楽しいコースです。決して歯が立たないほどの難しい場所はなく楽しく登攀できると思います。登山中に遭遇する岩場の安全通過のためには日々練習が必要であることも痛感しました。
 ちょこっと感想
(ひめの感想)
春の季節にふさわしくサクラが咲き、ツツジが咲き、若葉の芽も大きく膨らんでいました。
バス停からすぐゲレンデがあり登攀練習するには最適の場所です。しかしその後にアルパインルートを楽しむならば少しクライミングを覚えていた方が安全だと思っています。尖った馬の背に立つには勇気がいります。「普通に立って歩け」と言われますが風が吹きバランスを崩せば間違いなく滑落してしまいます。そんな時の力強い味方が「アンザイレンのザイル」なのです。
絡ませないように!、長すぎないように!、短すぎないように!毎回が初心者だった頃を忘れずに取り組んでいます。

(JONの感想)
しかし、半年も登攀していなければ登れません。ここ一つと言う所でてこずります。昔は難なく登れたのになあ、しばらくやってないとこんなに苦労するのか。高いところは怖い、冷静さを装ってはいるものの怖い、懸垂下降もぎこちない。
まあ無理をしないで楽しむしかないかなあ。
写真と文:美智子姫