人は「まだ六甲の岩場で練習してるのか〜!?」とバカにするが、六甲はクライミング発祥の地だぞっ!」
奥高座の滝・キャッスルウォール・ブラックフェイス・荒地山岩石群
テレビ番組で「お山に行こう」という番組があり六甲山を山岳ガイドと山ガールが登山をするという内容のものがありました。スポンサーはアウトドア専門の登山用品店ということもあり「水に濡れないブーツ」や「保温性の良い魔法瓶」、または「機能性の良い衣服」など商品の宣伝も抜け目なく入れています。六甲山の山歩きということで馴染みのコースもあり親しみがあるため楽しく見ています。「保倉神社から風吹き岩」「高座の滝からキャッスルウオール下を通過し荒地山からテーブルロック(チーズロックとも言う」からの景観を紹介していました。「行ったことある〜!このコース知ってる〜」と楽しいのですがひとつだけどうしても気になることがあります。それは山岳ガイドが無帽であること、山ガールの帽子がいつも首からぶら下がり背中のリュックの上でブラ〜ン、ブラ〜ンしていることです。帽子をかぶる意味はあるはず。テレビ撮影なのだからあれはまずいっス!このことについてはスポンサーに抗議文を放送後に送信しました。
前回、芦屋から東お多福経由宝塚のコースでヘナヘナと力が抜けてから2週間が過ぎました。ポチが元気に有馬越えをこなす中、なかば自信喪失デーが続いていました。そんなある日「地獄谷行こうか?」とお誘いを受け「喜んで!」と回答をしました。
登攀道具をリュックにつめ(約13kg)12日の土曜日、阪急芦屋川駅前の広場を通過しました。時間はまだ午前9時前ということもあり人はまばらです。って言うか出発した後なのかもしれません。

駅から30分かけての高座の滝までの緩やかな登り道では、早くも汗がしたたり落ちてしまいました。ここが一番の難所の様です。しかし高座の滝まで行くと子供連れや「山ガール&山ボーイスタイル」の若者がわんさといます。いつものようにお地蔵様に挨拶を済ませ地獄谷と中央稜の分岐まで来てみると渋滞が起きていました。中央稜への道も、地獄谷への道も、混雑している様子なので、堰堤でヘルメットを付け、いのししコースの高座谷に入りました。
このコースは木立もうっそうとしていて涼しくハイカーもいない為、静かなものです。いつものところで3頭のイノシシが出迎えてくれました。山ツツジは終わりを告げ、新緑がまぶしく時折爽やかな風が吹いてくれます。荷物は師匠が15s、姫が13sは背負ってると思います。「久しぶりにここを登ろうか」と指差したのは奥高座ノ滝の岩壁でした。
高座谷の左側を高巻きしたことは何度もありますが高座谷を登攀するのは初めてです。高座谷でハーネスをつけ登攀道具をセットし、ロープを出しました。下から見上げると簡単に登れそうですがそんな考えの人達がロープフリーで登攀し滑り落ちて死亡までには至っていませんが、大怪我をした例がいくつもあるのだそうです。「行くぞっ!」師匠が手にチョークをつけリュックを背負ったまま登攀開始です。ビレイをする私にも緊張が走ります。ピンにロープを掛けなければビレイをしていても下まで落下したら大怪我です。リードで行くジョンも「岩が磨かれていて滑る〜ピンがない〜カムも入らない〜」と悪戦苦闘していました。立木を利用してやっと1本目のランニングビレイを取れました。ビレイやーもホッと一息できました。「登って来て!」と上から声がかかりました。トップロープであってもツルツルと滑る岩に細心の注意を払いながら大きな谷間にさしかかりました。右足と左足を谷に掛けながら高度を上げて行くのですが「足が短いです・・・あと5p欲しいです!」そんな雄叫びを発しながら何とか支点ポイントまで到着しました。左側からキャッキャと若者の声がします。

高座谷の左側を高巻きしている様子ですが危険個所通過なので静かにしてもらいたいものです。 やがてその若者たちと同じ道を前後して歩くことになりました。もうすぐキャッスルウオールだと言う手前で「クライミング馬鹿」と言う言葉が聞こえました。いままでも相当うるさく騒いでいたため少しいらだっていた姫がクライミング馬鹿と発した若者を振り返り、とてもこわい目でにらみつけました。ハッとした他のメンバーのひとりが「すみません。僕のことを言ったんです。あなたの事ではありません。すみません」と謝りましたので「じゃあ不用意な発言は山では慎むように指導しておいてね」と促しました。(結構怖い目だったかもしれません)若者たちはキャッスルウオール横を登って行きたかったようですが一刻もその場から早く立ち去りたかったのか、そのまま下っていきました。
   見ると登るとでは大違いの奥高座ノ滝・北壁⇒
 キャッスルウオールには一人の若者が60mのロープを垂らしソロで練習を積み重ねていました。挨拶を交わし、師匠が登攀器具の話を交わしているあいだに姫がリュックを置きクライミングシューズに履き替えていました。「何してんねん?ここは通過だけや。荷物背負って登り、次行くぞ!」(え〜っここをフリークライミングするんとちゃうの?)登山靴をリュックに詰めたら荷物がまた重くなりました。そうしているうちにクライマー爺さんがソロでやって来てキャッスルウオールを登攀下降するらしいです。若者にアドバイスやら注意やらをし始めました。(はよ・・・ここから逃げよう。)
師匠がリードで上がり、キャッスルウオールの第一ピッチで支点を取り
「よっしゃ〜上がっておいで〜!」
と声がかかりました。ここは数年前に、私が帰り道に転倒してあばら骨を折り、次の日サスケ先生がのこぎりを持ち、「にっくきあばら骨を折った枝」を伐採して下さった思い出の地です。ありました〜あの枯れ木も!あれ以来ここには来ていないためキャッスルウオールの岩の感触は忘れています。
ギャラリーは若者とクライマー爺さんで「お手並み拝見」とばかりに見上げています。どうしょう。プレッシャーも半端じゃありません。「どうぞ〜!」上からは早く来いよとばかりにロープにテンションがかかります。
よっしゃ行くしかない! 
 キャッスルウオール
そう決心して斜めの切り込みに体を乗せました。斜めだから岩から身体がはずれそうです。「あかん〜右側のやさしいところに登り返したい!」と言うとクライマー爺さんが「そのルートがここで一番難しいところや!落ちることはあるまい」そう野次馬根性のコメントを背中に浴びさせてくれました。ナニクソという気持ちと早くここから脱したいと思う気持ちとで難所をクリアーし、師匠の1ピッチ目の棚にたどりつきました。師匠はそのまま最後まで登攀し支点を作り私をビレイしてくれました。右側の壁では若者がシャントを使い登攀中です。時々私と声を交わしながら、ほぼ同じスピードで登って行きました。上に到着したらクライマー爺さんが到着しており左側の棚を利用して登り、今からロープを垂らし練習をするつもりらしいです。若者が懸垂下降時のイロハを師匠に尋ねてこられました。師匠は何故そうするのかと言う理論を交えて説明をしクライマー爺さんも何かと助言をしたそうでした。「あの若者の60mに垂れたロープを借りて懸垂がしたいなぁ」と言うと師匠は「ロープは借りるものではない。今日の目的に懸垂下降は入いってない!」ハイわかりました。

キャッスルウオールの上からはクライミングシューズをはいたままアンザイレンの恰好でブラックフェイスに移動しました。
ブラックフェイス 荒地山ボルダー群
ブラックフェィス、ここは誰もいません。リュックを背負ったまま1ピッチ目を師匠がリードで登攀し、続いて姫が登りました。ここはわが倶楽部でも初心講習の時に、よく訪れていて懐かしい岩場です。2ピッチ目は姫がリードしていきます。ランニングピレイを2箇所とって、2ピッチ目の終了点に到着しました。ここは支点が構築できないため、両足を岩に踏ん張って、腰がらみでビレイします。そうして間もなくJONが到着。ここから見上げると3ピッチめが視界に入ってきます。岩場を眺めていた姫が唐突に「私ここをリードしてみたい」と言いました。師匠としては自分が行く方が安全だし、まだリードするほどの腕前がないし、。それに上で支点がきちんと取れるのかどうかも心配だったと思います。しかし「よっしゃ!自信に繋がる〜行って見ぃ!1ピン目をかけるまで気を抜くなよ!気を付けて!」
下でビレイをしてもらうも、1ピン目がかからないと落ちれば大怪我のため気が気ではなかったと思います。
 ブラックフェイスの最上部から見た街並み
ブラックフェイスの最高部に到着した時は緊張で喉がカラカラになっていました。岩場に支点用のピンがありましたが、かなり古く安全性が確信できない為大きな木の幹に支点をつくりロープアップをして、ジジを使い師匠に「どうぞ!登って下さい!」と声をかけました。2ピッチと3ピッチは私がリードをしたことになります。私にとっては凄いことなんです。赤飯でも焚いてお祝いしたい気分なんです。(笑)

一度も懸垂下降していないためブラックフェイスで懸垂下降を楽しませてもらいあとは座学と実技を交えて貴重な時間をすごしました。ジジを使って一度に二人をビレイする方法も学びました。

「今日はこれくらいにしといたろか」「出た〜師匠の十八番や!」使用した道具類をリュックに仕舞い、道畦北尾根コースを下山することにしました。
途中でテーブルロック(チーズロック)やサンデーモーニングスラブ、猫岩などをを眺めながらボルダー群を抜けて岩梯子荒地山ルートに入ります。
道畦谷のルートは工事中のため通行止めになっていたため、芦有ゲートルートから道畦北尾根を通るルートに変更しました。

道畦北尾根に入り、次なる展望台で美しい神戸港の景色を堪能していると「お先にどうぞ」と小さなリュックを背負った5人連れのハイカーに出会いました。「えっ?道を譲ってもらうなんて初めてやね」と言いながら「お先に」と声をかけどんどこと、どんどこ進んで行くと目指す方向には蜘蛛の巣が張り、人が通過した形跡がありません。大きな岩の根本には木の枝で作った杖が10本以上投げ捨てられていました。ここまできつい道を通過してきたことが伺えます。先ほど道を譲ってくれた人達はいく手がわからなくなり、どうも私達を先に行かせて様子をみたに違いありません。後ろで声がしますので付いてきていることは間違いありません。
10分ほど藪漕ぎをして軌道修正ができましたが後ろの声はしなくなりました。大丈夫でしょうか?
 チーズロック辺りから見た芦屋の街並み
 
 道畦北尾根のルート 道畦谷は工事中のため通行止めです 
 
高座谷の上空を舞う県警ヘリ   宝泉水  冷水を見つけて思わず洗顔
芦有コースは道のりが長く、あまり利用されていない様子です。途中崩壊した道を工事しているのか荷物搬送用のケーブルが走っていたり、空には兵庫県警のヘリコプターが、遭難者を探しているかのように旋回していたのが気になりました。
山ツツジは終わっていたものの薄紫色をした藤の花が美しく舞子さんのかんざしにも似た可憐さに思わずシャッターを押しました。長い登山道を経て動物霊園に出て芦屋川駅の時計を見ると午後4時30分になっていました。随分とクライミングの練習に打ち込んでいたものです。
2週間前の「ヘナヘナ体力」は嘘のようで、元気に回復してるようです。バッチリ!。
(教訓)
●他のパーティを追い越したり、すれ違ったりするときは、気持ちのいい挨拶をして、あとは静かに通過したいものですね。
  クライミングゲレンデの側を通過するときはクライマーの妨げにならないように静かにしていただきたいものですね。
(姫の感想)
初めてのぼる奥高座ノ滝の北壁は見た目より難しかった〜。19日から始まるクライミング講座のアシスタントとして頑張れることでしょう。

(ジョンの感想)
久しぶりのキャッスルウオールを体重プラス15kgで攀じ登るのは怖かったよ〜。

0 美智子姫:記0000