岩登り講座に参加希望者無し…それでは晴天めがけて岩トレに…
岩登り例会としてクライミングのご案内をしましたが、だ〜れも参加希望者がいなくて、体調不良の隊長(シャレかいな?)と姫の2名でホワイトフェイスへ岩のトレーニングに行ってきました。
クライミングのゲレンデを六甲山の「ホワイトフェイス、A懸岩、ブラックフェイス、キャッスルウオール」等で、実施していると言えば「な〜んや!まだそんなところで練習かいな?」と初歩の段階で利用するゲレンデだとあざ笑う人もいますが、なかなかどうして!。私達はいつでも、どこのゲレンデでも真剣そのものなのです。
そもそも我々は(耳にタコができるほど言ってるけど・・)フリークライミングを楽しむのではなく、アルパインクライミングを目的としており難易度の高いゲレンデよりも「正確に安全な通過」をするために「ホワイトフェイス、A懸岩、ブラックフェイス、キャッスルウオール」でトレーニングを重ねているのです。夏山のアルプスには行きたい!と希望する人は岩登りは必須科目なのですが、ここにきて参加者が激減し寂しい限りです。去年の赤岳しかり、鹿島槍しかり、クライミングの練習を積み重ねたからこそ、楽しく頂上を踏むことができたと思っています。「一般登山」と資料などに書いて
あるため安易に登る人がいますがクライミングの経験が有る、無しでは恐怖感が違います。どの山も頂上直下は必ずと言っていいほど岩場に突き当たります。

阪急芦屋川駅広場のトイレはグレードアップして完成。花時計のところはまだ工事中の様子でした。川沿いの桜の蕾はまだ硬く、川面ではサギとカモが仲よくエサ探しをしていました。歩き始めのウォーミングアップには、長くてちょっときつい芦屋の高級住宅街を抜け茶店手前の駐車場近くに来て異様な雰囲気に気が付きました。警察車両、消防車、広域車、関係車両が駐車禁止の迂回スペースをも埋め尽くしていました。「あっこれ昨日新聞のニュースで見たわ!捜索やな!」
新聞のニュースとは
『尼崎の74歳無職の男性が26日に日帰りの予定で六甲山系に登山に出掛けたまま自宅に帰ってないことが27日わかり、兵庫県警東灘署などは遭難した可能性があるとみて35人体制で捜索を始めた』とありました。朝の電車の中でこの話題に触れていたので、すぐに捜索活動がまだ続行していることがわかりました。滝の茶屋前では駐車場にテーブルを置き、地図や配置図を広げ隊員たちに指示をしていました。
高座ノ滝の広場では7〜8人の男性登山者の会話から 「なんで、あんなところで」、「考えられへんなあ」そんな会話が聞こえてきました。そうですそんな所で、考えられない状況で事故は発生するのです。
明日は我が身と考えるのか、まったく他人事と考えるのか、考え方によって各自の危機管理は大きく変わってくるのではないでしょうか。
地獄谷に降りたところにもテーブルを置き無線で各方面に捜査網を張り必死の捜索が繰り広げられている様子がよくわかりました。
「ごくろうさまです」そう声を掛け、崩落しているゲートロック脇を速やかに通過し、地獄谷に入って行くのですが久しぶりなのと荷物が重いのとで
「あれっ?前は簡単に行けたのに!」と、ぎこちない足取りではありましたが、あっと言う間にホワイトフェイスのゲレンデに到着です。
ホワイトフェイスは散髪したての坊主の様に、枝に木の葉は1枚も無く、とても見晴らしがよくて、ロックガーデン中央稜線を行き来する捜索隊の人達の動きがよく見えます。ただ寒さも余計に感じ、流れ行く冬の風が身にしみます。
ガチャを付け靴を履き替えて準備OK。朝から着ているヤッケは、この寒さではまだ脱げません。久しぶりのホワイトフェイスです。この岩壁は多少崩落傾向にあるため左側にある登下降路を使って岩壁の最上部にあがり支点を取る箇所や、足元の崩落の進み具合を点検に行きます。
姫が10.5mmの50mロープを背負い、目まいのJONが20mの補助ロープを背負って登下降路に入ります。
登り始めてすぐの所にトラロープがフィックスしてあり、登山者のハイキングルートになっているようでした。「えっ?こんなところにトラロープがあるよ〜!一般登山で通過しているみたい!落ちたら大怪我やし、救助困難やなぁ」と事故を想定して身震いをするほどでした。ここはクライマーでも緊張して通過する場所なのです。ホワイトフェイスに通い始めて十数年になりますがフィックスロープが張られたのははじめて見ました。ロープ上部の支点を確認しましたが、細い木に括ってあり、安心できるものではありませんでした。此処を登下降するのにフィックスロープは必要ありません。ロープに頼らない正しい登り方、降り方を身に着けてほしいと思う次第です。

山を歩いていると、時々必要が無いと思えるところにロープが張ってあります。それもほとんどがトラロープと呼ばれている工事現場などで境界などに使用されているロープです。
トラロープの市場販売価格は9mm×100mで900円〜1000円のようです。
クライミングに使用する9mm×50mは15000円〜20000円くらいはしています。それも9mmならほとんどダブルで使用するため2本必要になってきます。価格から見てもその強度はお解かりいただけると思いますし信頼度はその比ではありません。私達はハイキング中でも9mm×25mのロープを携行していますで、危険と思しき場所で、たとえフィックスロープが張ってあっても利用することはせず、必要なら自分達のロープで安全確保をしています。みなさんもそうしていただけることを望んでいます。
登下降路の途中には緩んでいる岩もあり、また岩の上に花崗岩の岩屑が散らばっており、踏めば滑る状態です。気をつけてあがります。
上がって見ると岩壁の上部は思いのほか安定しており、大丈夫のようです。終了点に使う尖った岩とその強度を確認し、バックアップのために奥の大きな木から補助ロープを引き出します。
上部の安全と支点の補助を構築して完了です。

50mのロープを松の木にセットして此処から懸垂下降です。途中の岩壁に浮いた部分が無いか確認しながら下降します。
大丈夫です。いつ打たれたか解らないハーケンやリングボルトも多々ありますが、ナッツとカムを入れながら登っていけば大丈夫でしょう。
支点を作り、懸垂下降で2〜3回、リード&ビレイで2回トレーニング後、90mの雪壁を想定し、懸垂下降中にロープの結び目を通過する場合のエイト環とバックアップ用ロープ2本で交わす「新わざ」を学習しました。雪の多い時にはATCは不向きで8環の方が良いようです。
本来 「8環は下降器、ATCは確保器ですが、ATCも下降器として機能することからATCを兼用していました」
両方の器具を、素早く使える方法を何度も何度も練習しました。
体調不良の隊長も水を得た金魚の様に生き生きとしています。やはり荒療法が効果ありそうです。
岩登りは後5p身長が高ければ!手が長ければ!。そう思いながら届きそうで届かないホールドを必死に探します。ちびこいと苦労の連続です。
何度か繰り返していると登る時間も短縮され身体が慣れてきます。
手も足も寒さでシビレて危険です。ホワイトフェイスの半分登ったあたりから指先がしびれて感覚がなくなりそうでした。岩を掴んでいるのかどうかわからなくなるのです。クライミングは、もう少し春になってからがよさそうです。久しぶりのクライミングは岩の冷たさには勝てず 「今日の講習はこれくらいにしといたろうか」 と言うことにしました。ジョンの目まいもクライミング中は不思議と意識から消えていて快適そうです。荒療冶成功です。
相変わらず無線の音は地獄谷付近に飛び交っていました。まだ遭難者は見つかっていない様子です。、地獄谷に降りて行くとまだ消防署の方達はテーブル付近で捜索隊からの連絡を待っていました。ロックガーデンと地獄谷の分岐地点の日当たりで遅めの昼食休憩を摂っていると、警察官20名(ちゃんと数えました)が降りてきて「こんなにきついとは思わなかったなぁ」と同僚たちで囁いていました。
捜索本部とみられる駐車場付近には警察官40名ほどと広域本部の人達で打ち合わせをしていました。ジョンが「地図にない道も沢山ある。必要なら捜索のための地図にないコース案内をしてあげてもいいなぁ」と言うことで声をかけましたが「芦屋署、東灘署他沢山の人数が捜索していますので、お申し出には厚く感謝申し上げます」とのことでした。

「六甲山に行ってくるわ」こんな簡単な会話を家族に残し散歩モードで出かけたかも知れません。実際に私達でさえ、ポチが六甲山に行くと送り出しても、どのコースなのか、どこをゴールにしているのか詳しく聞くことはありませんでした。下山報告はするように言ってますが、今回の様に下山できない場合もあります。家族の方は「どこから登ってどこがゴールなのか」を聞いておく必要があります。家族にコースを言ったら変更しないでそのコースを歩く。そうすれば万一、遭難したとしても捜索隊に多大な迷惑をかけることも少ないと思います。一人暮らしならばメモで行先を残すのも必要です。
・六甲山は携帯がかからない。
・登山着は原色の明るい服を着る。
・いくら天気がよくても合羽、ツエルト、非常食は持つ。

 体力を温存して一晩中じっとしていれば、翌朝自力で下山できるかもしれません。(但し怪我等がなければ)
 ちっぽけなリュックで雨具などを入れず六甲山に入るのは危険です。雨具は雨の時だけの物ではありません。 今日、捜索隊の皆様のご苦労を見て、私達登山者自信がもう少し山の装備に注意をする必要があると痛感し ました。早く救助されますように祈っています!。救助隊の皆様お役目ご苦労様です!。
今年の夏山は参加者である私達がしっかりと技術を習得し、体調不良の隊長を連れて行ってあげる山行にできればいいと考えています。目指す山は「不帰の剣」そして「笠ケ岳」・・・かな?

ロックガーデンの入り口にある 『滝の茶屋』 の横に芦屋警察署のチラシが置いてありましたので、下記バナーを押してご覧ください。
0 美智子姫:記0000