13日月曜日から天気は崩れるという事で「よっしゃ今日は天気間違いなし!武奈ヶ岳に行こう!」…
ジョンの山岳会の友人から声をかけてもらい、目まいのジョンの荒療治に 急遽、武奈ヶ岳登山に行くことにしました。
尼崎駅午前6時30分集合です。
阪神尼崎駅に降りると既に迎えの車は到着しており、挨拶もそこそこに名神尼崎ICから山科ICを目指します。渋滞もなく順調に走っていきますが、湖西道・真野出口を降りた辺りから白いものがチラホラ。途中の集落を過ぎ、花折トンネルを抜けると、辺り一面真っ白な雪景色でした。
安曇川に架かる曙橋を渡った所にある駐車場に到着。駐車場には前夜から停車しているのか車の屋根が雪にスッポリと覆われている車も数台ありました。滋賀ナンバーではなかったのでテント泊でもされているのでしょうかそれとも比良山荘にご宿泊でしょうか。
私の天気予報では晴れのはずなのですが、小雪が降り続いており武奈ケ岳方面の山々はうすぼんやりしています。
「とにかく行こう」 合羽を着こんでのスタートとなりました。
何度か訪れていますが坊村の集落で舞い落ちてくる雪に出合ったのは今回が初めてでした。
武奈ヶ岳は、滋賀県大津市にある、標高1214.4mの山で比良山地の最高峰であり琵琶湖国定公園の一部で、釈迦岳を最高峰とする北比良、同じく蓬莱山を中心とする南比良に対して、比良山地の北部を占める奥比良に位置しており、かつては山麓から山頂に比較的近い北比良峠までリフトやロープウェイで結ばれていて、スキー客や登山者などで賑わっていましたが、今では全て廃止されているため自分の足で往復しなければならない結構ハードな山となっています。武奈ヶ岳の名前は、中腹部にブナの木が多く生えていることに由来していると言われていて、頂上からは360度の展望を楽しむことができ、晴れた日には遠く、御嶽山や白山をも望むことができます。
到着時間が午前8時と早いこともあり下りの登山者には出くわさず、後に続く登山者もまばらです。今日のリーダーは「kanさん」メンバーは[さっささん]「JON」「ひめ」で都合4人のパーティです。リーダーから、私がトップを歩くようにとの指示があり 「登りはツボ足の練習をします。アイゼンもスノーシューも履かずに行こう」 という事になりました。登りはじめの木立の中は溶けかけた雪が冷えて凍り、ズルッズルッと滑ります。
ほとんどの登山者は登山口でアイゼンを装着したり、急傾斜のややこしい所でアイゼンを出しています。
「ちょっと怖いけどこれくらいなら歩けるやろ」 リーダーの声に、躊躇することも無く登山者を交わしていきます。
雪の深いところでもよく絞まっていてズボッとは、はまらないのですがキックステップをきちんと踏まなければズルッと滑ります。
標高690mにある小さなコルで突然トレースが無くなりました。よく見るとトレースは北側に折れてやや下り気味に続いています。テープもあります。こっちで間違いが無いと思い進んでいくと 
「ひめ、停まって、おかしいそっちはルートが違う」
後からJONが叫びます。リーダーのkanさんも「おかしい」。JONがGPSと睨みっこしていますが画面に雪が凍りついていて剥がれないのでよく見えないとの事。JONが犬のカンで少し戻ってルートを探します。JONの返事を待っている間にも後続のパーティは、どんどん北方向に進んでいきます。
「トレース有ったよ。強風で消えているわ、こっちで合ってるよー」
「あんなに沢山登っていったのに」
「トレースなんて10秒もあったら消えてしまうよ」
「へー。怖いもんやなあ」
感心しながらジョンのところまで戻ってもまだ信じられない。「よし行こう」といってJONがトップを歩き始めるがまだ信じられない。しかし足元が固いような感じがする。少し左右に足を置くと軟らかい。そうか先行の登山者が踏んだぶん固くなっているのか。
解ったような、信じがたいような気持ちで、付いて行くと風が静かになったと思ったら、トレースもはっきりしてきて膝下辺りまで雪がたっぷり。
kanさんは山岳会のベテラン講師だが、JONは鼻の利く犬なのかなあ。
途中で一度休憩を取り御殿山直下に差し掛かると強風はさらに強く、雪も横殴りに変わって目に入ってきます。つらい登りです。
「天気だと思ったのになぁ!武奈ヶ岳は吹雪いてるなぁ」
途中でひとりだけ下山する人がいて「武奈ヶ岳まで行ってこられたのですか?」と聞くと「吹雪いていてとても!とても!」と降りていかれました。とにかく御殿山(1097m)まで行くことにしました。登りはじめてから3時間ほどで御殿山に到着です。すると途中で追い越して行った登山者達でにぎわっていました。強風を避けるためにツエルトを張る人、雪を掘りくぼみをつくり休憩をする人とさまざまですが誰も武奈ヶ岳に向かう人はいない様子です。吹雪いていて、よしんば武奈ヶ岳にたどりついたとしても自己満足のみの山行となるのでしょう。
御殿山の山頂は狭い台地に登山者がいっぱい…↓
私達も試案をしていると武奈ヶ岳方向から登ってきた男性がいて頭から湯気を出し荒々しく吐く息は、いまにも呼吸が止りそうで、顔面は苦しそうにゆがんでいました。その人の顔の歪み具合から判断し、天気の良いときの西南稜も体験していることからリーダーの「kanさん」は「御殿山から引き返す」の判断を下すことになりました。意義なし!です。
下りはアイゼンを装着することにしました。強風で凍りつくような頬が痛いです。アイゼン装着時は「手袋をしたまま」が基本ですが手袋をしたままだと、うまく金具がかかりません。手袋をはずして装着するのですが片足がどうしても上手く出来ない為、よく見ると登山靴に雪がこびりつきアイゼンが取り付けられなかったことがわかりました。登山靴の雪を落としアイゼンをつけて吹雪の御殿山から下山することにしました。登りのツボ足とちがって快適です。この快適さを味わうにはツボ足のつらさを体感していた方がアイゼンの有り難さが解りますし、万が一の時、少々の雪道であれば対応できます。「こわい〜」なんて甘えは許されず貴重な体験をさせてもらいました。
御殿山の頂上でアイゼン装着時に少し長めの休憩を取りましたが、とりたてて「昼飯時間」もなく、自分でコントロールしながら行動食を頬張るのです。雪山での昼食はライス類よりパン類の方がどんなに吹雪いていても容易に頬張ることができます。おにぎりは冷凍ごはんの様になり食べづらくなるようです。御殿山を下りはじめると強風で顔がひきつり鼻水が意識なしに流れています。鼻水が凍りそうなほど寒いです。
ヘルメットからはみ出した髪の毛はツララの様に凍ってしまいました。強風の吹き荒れる場所を過ぎ急な斜面では尻ソリを楽しむことができました。スノーシューではなくアイゼンのためスムーズに滑って行きます。「キャー!止めて〜スピード出過ぎや〜!ブナに当たる〜!」尻ソリのおかげで下山時間は大幅に短縮され、「えっ、あれもう集落やんか」 そんな感じで民家の屋根が見えてきました。
↑さっささんもシリセードでおおはしゃぎ…これがあるから雪山はサイコー
無事に帰ってきたぞー あかん下山したら目まいがしてきたわー
赤い三宝橋の袂でアイゼンを外して溝の流れを利用して洗い、滑らぬように細心の注意をはらい歩いていると、高価そうなりっぱな手袋が片方落ちていました。「落とした人は寒かろうになぁ〜両手あれば誰かに拾われているかもね」と話ていると落とし主が探しに引き返してこられました。「手袋でしょ?あのあたりの雪の上に置いてますよ」と言うと「ありがとうございます」とうれしそうでした。(私達は紛失防止対策として手袋にゴムをつけて使わないときは腕にはめるようにしています。)

そんなこんなでアッと言う間に駐車場まで戻ってきました。時間はまだ1時をすぎたばかりです。車の中でゆっくりと食べ残した行動食や温かいスープを飲み落ち着いたところで、「帰りに栃餅を買いに、朽木本陣・道の駅に寄ろう!」・・・こんなん言うのはジョンに決まっています。高島トレイルで何度も訪れた道の駅は朝市こそ終わっていましたが店内は買い物客で賑わっていました。お目当ての栃餅を買い、混雑もなく大阪福島まで送って頂き助かりました。
お誘いを頂いたことに感謝を申し上げ車を見送りましたが歩いていると「プップップー」と車のクラクションの音がしました。振り返ると先ほど別れたばかりの「kanさん」がオーバー手袋が片方無いのに気が付き引き返してこられていました。ジョンの荷物の中に入っており無事持ち主の手元に返りました。

ところでJON、目まいは治りましたか
うん山に居る間は快調やったけど、大阪に帰ってきたらクラクラするわ。今週末は小女郎池までスノーシュートレッキング、その時は治るやろうなあ…でもその後がなあ。10日間ほど信州辺りで湯治かなあ。富士見平小屋で荒療治かなあ。

 (今回の教訓)  【登山者のマナー】
●目ざし帽は必携
●アイゼン装着時は靴の雪を完全に落とす
●昼食はごはん系でなくパン類が食べやすい
●出発前に靴とアイゼンが装着可能であることを確認
●帽子・ヘルメットの中の頭髪は外気に触れないようにする
登山者のマナーの悪さにも少々閉口します
すれ違い時の挨拶と交わし方の悪い人が目立ちました
トレースを塞ぐようにして休憩している方も何組かいました
15人ほどの団体さんがトレースの中で休憩しているのには参りました
高年の女性の単独行が目立ちました
0 美智子姫:記0000