やまたび倶楽部メンバーの山行記

北八ヶ岳の天狗岳、入門的な雪山とは言え自分で計画してうららと2人だけで挑むのは初めての経験だ。3月21,22日は連休なので21日の方が登山客は多いはず、しっかりとトレースをつけてもらって22日に登る方が安全と判断した。
21日 大阪・豊中を出発
たてしな自由農園堀店 渋御殿湯 渋御殿湯出発 黒百合ヒュッテに向けて
21日早朝に豊中を出て、12時に渋の湯を出発できれば2時半には黒百合ヒュッテに着く。夕食までの時間はヒュッテの前には急な斜面があるのでうららに滑落停止の練習でもさせればよいと思っていたらちゃっかり尻ソリがリュックにくくりつけてあった。
連休で高速道路は1000円、渋滞を避けるためにガレージを出たのが5:08、その効果か名神吹田から中央道諏訪IC(10:40)まで全く渋滞はなかった。恵那を過ぎて駒ヶ根あたり、楽しみにしていた駒ヶ岳や南アルプスは全く見えない。始めの内は曇っているせいで視界が悪いのだと思っていたがバックミラーに写る車体がやけに白い。黄砂が飛んでいるのだ。

諏訪バイパスを少し南下してメルヘン街道へ出、県道191号で奥蓼科温泉郷渋の湯を目指す。いつの間にか黄砂は気にならなくなっている。途中道の駅でもあれば山菜を買うのにと探しながら運転をしていると右手に「宮坂高原野菜直売所」というのをうららが見つけたがやり過ごしてしまった。Uターンしようかと思っていたところに「たてしな自由農園堀店」の看板が左手に見えた。たらの芽、蕗の薹、ヤブカンゾウ、ウコギ、ノビルなど新鮮で種類が豊富でパックが大きく値段も大阪の半値。渋の湯への山道は雪もなく巾も広い。駐車場に車を入れて渋御殿湯へ駐車の申し込みに行く。二日で2000円、キーを預ける。
21日 渋御殿湯から入山
御殿湯の前を上ってすぐに登山道入り口がある。ここまで雪は無いが橋を渡った所で滑って登れない登山者が多数いるのを見、橋の手前でアイゼンを着けて登山道に入る。滑るのは道理で坂は全て凍っていた。地図でイメージしていたよりは登りは急だ。「これはオオシラビソあれもそう、ほんとのシラビソはなかなか無いな」と林の中で高度を上げて行く。植生がほとんどシラビソの為か高度が高い為か動物の足跡が無い。雪の窪みは明らかに黄色い、黄砂の影響はここまで及んでいる。
左手に森林限界が見え出した頃「しんどいな、まだやろか」右にも斜面が見えた。そこから50mも行かないうちに大きな太陽光発電のパネル、その横は黒百合ヒュッテだ。
受付を済ませて荷物を壁際に置いて外の斜面で遊ぼうと靴を履こうとしたらなんと外は吹雪に変わっていた。
夕食までは他の登山客と酒を飲みながら談笑、5時ごろに「何々さんのグループは荷物をお持ちください。二階のお布団へ案内します」それまでは一階のいずれも畳み敷きの談話室と食堂に客をプールしておくシステムだ。
食事はバイキング式とネットに載っていたので好きな物を取って食べるのだと思っていたが何のことはないハンバーグや煮しめが6人分ずつ大皿に盛ってあるだけのことだ。ここの奥さんの家庭の味が黒百合ヒュッテの売りだとか、切り干し大根、ひじきなどはうららの味に似ていた。勿論ハンバーグも手作り、冷凍物ではないことは一口かじればすぐ分かる。点いていても薄暗い明かりだが消えると部屋は真っ暗、久しぶりに闇を体験した。
22日 天狗岳にアタック
外はええ天気やで 小屋を出発 中山峠
5時起床、「外はええ天気やで」とうらら、気温は−14℃
6時、朝食を済ませ、アンダーシャツに厚手の山シャツ、その上に雪用のアウター、下はフリースのズボンに直接雪用のオーバーズボンで服装を整え、非常用にダウンのジャケットとツェルトにシェラフカバーをリュックに入れて6:48外へ出た。空は真っ青に晴れ上がっている。念のため8mmのロープ、スリング4本、カラビナ4個、スワミベルトを携行
ヒュッテの周りにはシラビソが、細かい葉に一粒一粒の氷を付け折り重なり、幹は冷え冷えと皮の表面に霜を抱えて林立している。始めてみる息を呑むような樹氷の形だ。所々に日を受けて張り付いた氷がキラキラと輝く。暫く見とれて7:15出発。
 10分もしないうちに中山峠に着いた。切り立った崖の向こうに雲海が太陽の光をはね返している。道を右に取り、樹氷のシラビソ林の中を少し上ると急に展望が開け、東天狗岳と西天狗岳が競い立っているように見えた。東天狗岳の左は雪庇になって切れ落ち、その雪庇の右を短い列が幾つも登っている。遮る物のなくなった登山道には右から突風が吹きつける。
ピッケルを前について脚を踏ん張る耐風姿勢を何度もとった。トレースは雪が風で飛ばされるためか意外なほど薄く、他に登山客がなければ心細い思いをしただろう。
急登の部分はピッケルのピックを雪に差し込んで左手で雪を押さえ込み三点支持とは言いながら四つんばいで這い登るという感じだ。頂上付近は険しくはないが岩場も結構多い。鎖場の支柱や鎖は埋まってしまってビレイの支点に使おうと思っていたが当てが外れた。うららの足は他の登山者に比べても遜色なく結局ロープは使わずじまいだった。
山頂にて 滑落停止訓練
頂上近く急登を登りきった所で突然、阿弥陀岳、赤岳、硫黄岳が姿を現した。根石岳で見慣れた光景とは言えやはり美しい。右には真っ白な西天狗、東天狗とのコルを人が歩き頂上にも一人立っているのが見える。後立山連峰〜槍穂高、乗鞍、御岳、目を元に戻せば阿弥陀岳の後ろに北岳、甲斐駒、仙丈、後を振り返れば右に浅間山左に蓼科山。
そこから更に道は奥へ続き頂上に立ったのは8:51。昨日は曇り今日は晴れたが明日にはもう天気は崩れると言う、サスケはよくよく好天に恵まれ実に運がいい。
強風の吹きつける頂上には長くは居られない。凍った岩場をアイゼンの刃をもっと尖らせておけばよかったと思いながら下った。
帰りの車中で見た八ケ岳連山
ヒュッテに戻ったのは9:22、デポしていた荷物を詰めなおし斜面で少し遊んで10:21渋の湯へ向かった。帰路は高見石からの道を通って往路の最初の分岐へ出た。渋御殿湯へ戻ったのは11:45。帰りの高速は3回の渋滞に巻き込まれた。帰宅は8時前であったか。
写真はサスケのページのギャラリーをご覧ください。   http://picasaweb.google.com/sasuke.urara/100322#
文:サスケ 00000写真:うらら

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