Yamatabi CLUB |
30日、西山谷の沢登りを終えてホームページ用レポートを作成中の午後10時前、ジョンからの電話がありました。「明日何か予定ある?」どうしたことかと聞くと、ジョンが所属している山岳会のメンバーが雪彦山で岩登りを予定してたんやけど、予定していたパートナーが急遽欠席のため女性のクライマーを探しているので行くかとのことでした。西山谷の沢登りで少々疲れていたため31日は自宅にて休養をしようと思っていたのですが「雪彦山」と聞いて「行くとも!行くとも!」と訳のわからないまま返事をしてしまいました。勿論ポチにはお留守番をしてもらわねばなりません。コースは「雪彦山地蔵岳東稜ノーマルルート」とのことホームページで検索をしたところ、とても私の手におえる代物ではありません。「返事をしたけど自信ないからやめるわ〜」とも言えず不安な朝を迎えました。 外は雨が降っています。「やった〜!クライミングは雨の場合中止や!」と思ってジョンに電話をすると 「大丈夫、雪彦山までいって岩場が濡れていたら雪彦温泉にでも入って帰ろう。とにかく待ち合わせ場所のJR六甲道駅まで行こう。」とのこと、 「あかん逃げられへん」 雨の中、傘をさしてクライミングギアのいっぱい入った重いザックを背負って、JR東西線の海老江駅を目指します。 神戸に入っても雨がシトシト降っています。朝7時、JR六甲道駅にジョンの所属するメンバー村上さんが車で迎えに来てくれました。 挨拶を済ませ六甲トンネル、六甲北道路から神戸三田ICへ、そこで中国自動車道に乗り継ぎ、福崎インターを出て一路雪彦山を目指します。 |
登山届けを出して賀野神社上部の車置場(公園横に路上駐車)で身支度を整え、出発したのが午前9時。ここから20分ほどで岩場の取り付きに到着だそうですが1時間さまよっても、1時間30分さまよっても到着できません。道に迷ったらしく雨に濡れた道なき道を藪漕ぎ、一つ間違えば崖下に転落するような危険箇所の連続を通過。途中で出会った若者二人も迷っている様子。やっとのことで岩場の取り付きにたどり着きました。 雨上がりで湿気も多く右足をヒルにかまれているのに気が付きました。丁度、時を同じくしてON薬品に勤務の好青年2人もクライミングに来ており挨拶を交わします。 その青年もヒルにやられて足は血だらけになっていました。 私達の方が準備が出来ていたため先にスタートすることになりました。1時間以上道迷いしたために、(おかげでというべきか)岩は完全に乾いていました。 【赤のラインが登攀ルートです】 |
見上げると今まで見たことの無いような岩壁が立ちはだかっています。 思わず、ゾクッ!岩の取り付きが午前11時08分、驚きのロスタイムではありますが3時間で雪彦山地蔵岳に到着する予定で「東陵ノーマルルート」をスタートしました。リードはすべてジョンの所属する山岳会の女性でこの会ではこの女性のことを「クライミングの天才」と呼んでいるそうです。 |
山頂まで260メートルを通常は8ピッチで登るのですが、私達は60mロープを使うことから1Pと2Pを同時に通過してしまうので全7ピッチで切っていきます。 下から見上げると、いままでに対面したことのない大きな岩が目の前にドデーンとそそり立っています。少しひるみますが、ここまで来て登らずに帰っては北鎌尾根に行ったことが帳消しになると奮い立ち、最初は「トレース」という方法でジョンの登ったすぐあとからついてのぼりました。1ピツチ(50b)、2ピッチ(30b)と難なくクリアできたのですが3ピッチ(45b)に立ちふさがる傾斜の強いチムニーの中に入り込み身動きができなくなりました。体制を立て直すために3ピツチの下に戻ると若者が 「リュックも靴の一部だと思いリュックをスリスリしながら頑張って下さい」と応援してくれました。 |
「ありがとう!頑張るね」勇気が沸いてきて何とか3ピッチをクリアすることができました。すると急にお腹が空いてきて「頂上でお昼って聞いたけど待てません。お弁当にしたいです」と訴えて3ピッチの上で弁当を広げることにしました。4ピッチはコンティニュアスで少し余裕ができ恐怖感が消えました。5ピッチ(45b)、は遭難碑の有る馬の背、6ピツチ(70メートルのコンティニュアンス)を難なく終え、残るは最後の7ピッチ(30b)に挑むことになりました。ジョンが出発前に「う〜ん7ピッチ目が行けるかなぁ」とつぶやいたのが少し気がかりでしたが、高さへの恐怖を初めて味わいました。「こわいです!。テンションかけてください!。ロープを持ってもいいですか?」どうしようもない状態になりビレイをしている村上さんに声をかけました。上にいる人影は全く見えません。見えるのは、そそり立つ岩場しか見えないのです。
7ピッチ目で後続のON薬品の若者に先を譲り、しばし登攀を見学させてもらいました。それは見事でした。若いと言うことと、センスが良いと言うことが紙面で伝えられないことが、もどかしいです。 |
いよいよスタート | ビレイヤーにも緊張が走る | みっちゃんもスタート | 1ピッチの上部で |
2ピッチ目をビレイ | 2ピッチ目をいく村上さん | 2ピッチ目のフォローをビレイ | 3ピッチ目のチムニー上部 |
5ピッチ目馬の背のスタート | 馬の背をいく | 馬の背をいくみっちゃん | 遭難碑を通過 |
最終ピッチを見学 | 最終ピッチ | 最終ピッチをビレイ | 最終ピッチをいく村上さん |
最終ピッチを登り切る |
姫が悪戦苦闘を終えて頂上に到着し全てを終了した時、先着のON薬品の若者が見守隊で待っていてくれ感動しました。山頂からは一般登山道をくだるのですが雨で濡れた道は「これでもか」と言わんばかりに私達を苦しめます。普段は古いロープは持たないようにと指導を受けているのですが、今日ばかりはジョンが先頭を切って古いロープや鎖をしっかり持ち、それでもスルッズルッと滑りながら、やっとの思いで、駐車場までたどり着きました。時間はすでに4時をすぎていました。 荷物の整理は車の中でということにして、あわてて神戸にむけてかえりかけた、その時、ワイパーを廻しても視界が遮られるほどの夕立が襲来し、クライミング中の雨でなかったことに安堵しました。車の中で左手指の間にヒルを発見し「ジョンさん取って!取って!」と叫ぶとカメラを構えるではありませんか!「何してんの?!写真を撮るんとちゃう、ヒルを指から取ってちゅうてんのや〜」姫に吸い付いたヒルは、まるまると太り、車外に放り出されてしまいました。 なかなか出血が止まりませんでした。
六甲道におりた頃には雨も上がり、この近くにポチの大好きな温泉「六甲乙女の湯」があることを思い出して、温泉の前で下車。ヒルが身体に付いているかも知れないと思っていたらジョンの靴下の中から、まるまると太ったヒルがポロリと落ちたそうです。
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雪彦山地蔵岳東陵ノーマルルートは私に更なる闘志を奮い立たせてくれた岩場でした。それにしても山岳会の村上さんは凄かった!やはり「天才」なのかも知れません。 帰りはJR六甲道駅から海老江駅に戻り、自宅到着は8時を過ぎていました。 |
この日出合った若きクライマー | 登攀を終えてホッと一息 |
雪彦は初めて…最終ピッチをリードするクライマー | |||
最終ピッチをフォローでいくクライマ− | |||
文:美智子姫00000 |
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