2017
 
思い起こせば去年の5月以降、本格的なクライミングをしていません。講習の形で地獄谷には何度も入りましたがロープワークが主体で登攀はしていなかったのです。「金比羅さんに行きませんか?」同じ地区に住む若きクライマーからお誘いをうけました。今回は奥様の「МUーさん」もご一緒です。車の提供も、運転もお任せの大名扱いです。ラッキー!
何度か道すがらで出会い、会釈を交わしたことはありましたが時間を共有するのは初めてです。午前7時、いつもの場所まで車で来てくれて合流。「МUーさん」も初めてとは思えないほど親近感が湧きました。
名神・吹田入口から走行しましたが案外スーイスイと走れました。1時間ほどで見覚えのある江文神社に到着です。準備をして出発。わずかな距離を歩くと、もうゲレンデに到着しました。
▲Y懸尾根のスタート地点ではクライミングの講習が行われていました。 
金比羅山はクライミング初心者の講習場として利用する人達が多く、蓬莱峡のような要素を持ったゲレンデです。
ゲレンデでは多くのクライマー達が所せましと登攀下降を繰り返していました。ほとんどが地元の人達です。駐車場の車も「京都ナンバー」が多かったです。そういえば去年「大阪の人がここまで来なくても六甲山にもゲレンデがあるでしょ?」と言われたことを思い出しました。

混雑する1ピッチ目は人混みを掻き分けるようにして通過させて貰い、私達は、koumeiさんチームとジョン&姫チームで、それぞれが同時にスタートしました。アルパインなので混雑を苦にすることはありませんでした。
姫チームは「ツルベ方式」で互いにリードとビレイを交代しながら進んでいきました。
北岳バットレス登攀時には全てジョンがリードでした。回収したカムやスリングを2番手の姫が持ったままジョンに渡すことを忘れたことがあります。カムやスリング無しで次に進む羽目になりランニングビレイも取らずに命がけのクライミングをしたことがありました。あれから思えば「ツルペ方式」が利用できるなんて成長したもんだわっ~(笑)koumeiさんチームもリズミカル進んでいるようです。ご夫婦で仲良く掛け合う合図の声が山にこだましていました。同じ趣味を持つと言うことは羨ましい限りです。それに若いっ!

1ピッチ、2ピッチと順調です。3ピッチ目(?)で、てごわいルートのお出ましです。「落ちるとイヤヤな・・」姫チームはkoumeiさんにリードをしてもらい3人が引き上げて貰うことにしました。今日のkoumeiさんは輝くキャプテンです。
 ▲JON気いつけて上がっといでやあ
去年、同じルートを登攀していますので何ら不安はありませんが何せ1年間のブランクがあります。1年と言う年月は子供なら大きく成長し高齢者は大きく後退するのです。
「こんなんでは立山・龍王は行かれへんぞっ」ジョン自身に言い聞かせるが如くつぶやいていますが、みんな聞こえぬフリをしました。演技が上手くなったもんです。(笑)途中で休憩を取り振り返りました。麓を見下ろすと小さく見える京都の町並みと黄金色の田園が美しくみえました。空は限りなく青いです。夏の終わりを告げるミンミン蝉も賑やかに大合唱をしていました。街中なら「うるさい」と感じるのですが山の中では大合唱に心地よく耳を傾けられる心のゆとりがあります。不思議です。
▲ビレイもばっちり 
終了点到着です。日陰を見つけて座り込みました。緊張感から解き放たれドッと疲れが襲い掛かってきました。少し早いですがランチタイムです。
▲Y懸尾根を懸垂下降で下ります 
昼食を終え「下りは懸垂下降で降りましょう!」懸垂下降と聞いて疲れが吹っ飛びました。
いつもは登山道を下山するのですがこの日は懸垂下降を楽しめそうです。しかもかなり長いコースらしいです。(わくわくするわぁ!)しかし、しかし、あまりに長すぎてロープの長さが足りません。蓬莱峡大屏風でのロープ事故死を思い出しました。
「2本を繋ごう!」ゲレンデではありませんので木の枝や岩などの障害物を避けながら全員が長い長い懸垂下降を終えました。見上げると出発点が見えないほどでした。ロープ回収の引き抜き作業を開始したのですが・・・・何としたことか抜けませ~ん。どうも引っかかってしまった様です。よくある出来事です。ここは若者が登り返すしかありません。岩の隙間に挟まったロープの解除に向かったのは勿論koumeiさん。下から見上げていると「きつい!」「掴むところがない!」「お・ち・そ・う!」そんな電波がビリビリと流れてきましたが頑張ってもらうしかありません。
▲ちょこっと登り返し…こんなことも含めてアルパインだあ 
▲Kフェイスの終了点に降りちゃった…此処でしばらく待機だあ
あかんロープが抜けへん…岩角にひかかったみたい 登り返してくるわ 
やはりロープは岩に挟まっていた様です。手直しをしたとしてもまた同じ結果になると判断したのか「全員登り返してくださ~い!」悪魔のささやきに聞こえました。長い長い懸垂下降をしたコースを登り返せってか?覚悟を決めてまずは「МUーさん」から登り返し開始です。中ほどまで行くと下からの声が届かないほど離れてしまいました。「登りました~!」とかすかに声が聞こえ次なるはジョンと姫の登攀開始です。私達は1本のロープで同時に登り返すことにしました。ロープダウンしたとしても木の枝にひっかかってしまい危険です。2人同時に登り返せばロープが引っかかる心配はないのです。
すると上から「登り返しは大変なので横からトラバースして下さ~い。別行動しスタート地点で合流しましょう」
了解はしたもののトラバースもかなり危険が伴います。わずかな距離でもジョンはロープフリーで移動さすことをしませんでした。「こんな時に滑落するんや!」と慎重に慎重を重ね、姫を安全地帯まで移動させました。同じ様にしてジョンも移動。ロープをリュックに仕舞い込みました。急な傾斜には残地ロープがかかっています。体重を掛けずにバランス程度に残地ロープを掴み、危険個所を脱出すると踏み跡のある登山道らしき箇所に出ました。緊張から解き放たれたのです。ドッと疲れが出てしばし休憩です。そういえば冷たいジェリーが残っていたはず・・何かを食べれば元気も出ると最後の力を振り絞り登山道をひたすら下りました。「おお~い!」大きく手を振る二人を見つけました。合流です。それぞれにリーダーがいると言うことは心強いものです。
▲あーあー終わった…楽しかったなあ 
Y懸尾根の頭では多くの人たちが、それぞれに練習をしていました。突然トレイルランナーの若者が走ってきて危険な岩場を横断しはじめました。「危ないっ」何と無茶なことをするっ! 
 近くにある道の駅「妹子の里」に立ち寄りトイレ休憩と買い物を済ませ少しばかりの渋滞に遭い無事帰宅となりました。久々に本格的なクライミングでした。楽しかったです。
 【ホームページをご覧いただいている方で、9月10日金毘羅山を登攀されていた方へ】
昨日金毘羅山でビレイ点にいたKOUMEIくんにお声かけいただきましたこと ありがとうございました。「此花区の姫さんJONさんですかホームページ見てます」とお声かけいただきましたのに あの段階では下の棚にいまして お話もできず恐縮しております。またの機会にどこかの山でお目にかかれれば幸いです。
【後日メールをいただきました】
タイトル:金比羅で姫さんの声を聞く
はじめまして!京都のクックです。
日曜日、金比羅北尾根で横のKから「姫さん、ジョンさ~ん!」と呼ぶ声を聞きました。 真横の木々越しに姫さんの声も聞こえました。
このHPを時々訪ねているので、タレント?にでも会う気分!
でも、姫さんのお顔は見られませんでした。
残念! パワフルな姫さんにいつか会えると良いなぁ! 
【姫より】
京都のクック様へ
金比羅山でお声を掛けてくださった人は誰だろう?誰だろう?と大阪へ帰る道すがらお噂をしていたのです。これでスッキリ~っ!です
ありがとうございました。飛行機で言うところのニアミスですね(笑)
じつは週末に立山龍王岳東尾根にクライミングに出かけるためのトレーニングだったんです。台風接近でどうなりますことやら・・・
メンバーの中に初顔合わせの人がいて、事前に会っておきたいと金比羅山へ・・・下りは懸垂下降でと言うことで降りたのです、Kフェイスの終了点まで全員下降したまでは良かったのですが2本を繋いだロープが岩に挟まり、若者が登り返していたのです。失態です。
多分その時Kフェイス終了点でセミ状態で待機していた時に大声で交信していたのだと思います。
あとでお声掛けして頂いたとお聞きし、金比羅山のレポートの末尾にお礼の言葉を載せさせていただきました。
メールを頂き感動しています。またどこかで大声で騒いでいたら…お声をかけて下さいませ。京都のクックさんありがうございました。
 【KOUMEIくんの感想】
「急な日程にもかかわらず、同行頂きありがとうございました。今は馬力だけで登っていますが、JON-姫コンビのキャリアまで果たして登れているか不安です。若い人の追従待ってます!
 【姫の感想
リュックに何を詰めてよいのやら1年ぶりなので戸惑いました。(案の定、ヌンチャク入れ忘れてましたわぁ)慎重派のkoumeiさんチームと一緒なら大丈夫と決め込み、車の提供と運転をお任せして楽ちん移動でした。クライミング時のリュックは、かなり大きくなり電車での移動には辛いものがあります。今回は奥様ともご一緒きてうれしかったです。若いと言うことは何事においても輝いています。「昔取った杵柄は使わないと錆びる」と言うことを再確認しました。時々刺激を与えて貰うためにも機会があれば、懲りてなければまたお誘いいただけると嬉しいかなとおもう次第です。
 文:美智子姫