2013
「富士山滑落事故・4人アンザイレン」の疑問解消トレーニング
10日前までは、お掃除のおばさんを悩やませていた銀杏の葉たちは、既に地面に落ちてところどころに小さな「落ち葉のお山」を作り収集車を待っています。
わずか10日前だというのに季節はすっかり冬支度を整えています。それもそのはず暦の上の「大雪」が過んだ後はジングルベルの音色が町中に鳴り響き「大掃除は済んだか?正月の準備は出来てるか?」と追い立てられているような気がしています。
そんな中、今日ものんびりとアイゼントレーニングに出かけることにしました。
過日起きた富士山滑落事故の「4人アンザイレン」がどうしても気にかかるのです。
4人でのアンザイレンが危険なのか、危険でない方法もあるのかとピラーロックで実証し事故を未然に防ぐ訓練をするのが目的です。
午前8時30分。阪神・淀川駅でジョンと合流し、急行や特急に乗り換えるでなくのんびりと1時間かけて車窓から移りゆく季節を楽しみました。通勤に急ぐ足音、病院行きかなぁ、大物駅で下車しそっとおばあちゃんに寄り添うお爺ちゃんなどさまざまな光景を目の当たりにしながら、山を歩ける自身の健康を喜びます。やがて電車は芦屋駅に到着しました。ここから阪急芦屋川駅まで15分歩いて更に高座の滝まで30分ばかり歩いて行きます。これがウオーミングアップの道のりです。
「今日のコースは久しぶりにロックガーデンから中央稜を経て第一鉄塔からアイゼン履いてA懸垂岩に下り2回ほど登攀練習をしてピラーロックに行こう」という事にしました。第一鉄塔では初めてだと言う若いアベック1組と山ガール2人に爺さん付きのおもろいコンビが腰を下ろしていました。爺さんが私達がアイゼンを履く姿を見て「あれはアイゼンと言うてなぁ・・・」と説明をすると「えっ〜!私達持ってないんですけど〜!」「いやいや今日要るのではのうて、あの人達は雪山に行くための訓練に来ているのや」と丁寧に説明していました。途中で「ピラーロックに行きたいのですがどっちに行けばいいのですか?」と爺さんに訊ねたらしく毎日散歩道にしているので案内を買って出た様子でした。
滝の茶屋からロックガーデン中央稜線に入ります ここはロックガーデンの試し岩的存在です
私達は,第一鉄塔からきつい下りを降りて行きますがアイゼンを履いているので滑る心配はありません。A懸垂ではアイゼン・ピッケルを持ったままリードで支点を作りに登攀するのですが登山靴と違いアイゼンを履いたままだと3倍ほどの緊張感が走ります。落ちたらアイゼンの刃、ピッケルの刃でやばいことになりそうです。何とか1ピン目のヌンチャクを掛け終わりました。「よっしゃ!それで下までは落ちへん!ガンバレ」ビレイヤーのジョンから檄が飛びます。2ピン目、3ピン目と無事支点位置に到着です。「ビレイ解除〜」自己ビレイを取り終わり支点操作に取り掛かりましたが足の筋肉がパンパンに張っているのがよくわかります。上でジジを使ってビレイをすることにしました。ガリッガリッとアイゼンと岩の音が不気味に聞こえてきます。

←ロックガーデンの中の岩場を楽しみながら登っていきます
ゲートロックは崩落中! 中央稜をすすんでいきます 第一鉄塔から下ります
A懸垂岩をアイゼンで登下降
いつもと同じA懸垂岩のラッペル…アイゼン装着で楽しいなあ
二番手をポッチーが、最後にジョンが登攀しました。
懸垂下降で降り、昼食を済ませ傾斜を利用して「富士山滑落事故・4人アンザイレン」を再現することにしました。今回は3人しかいませんがトップと最後尾以外は真ん中に何人入っても理論は一緒なので3人でも再現できます。トップ、真ん中、ラストと入れ替わりながら身体に感じる衝撃を体感しました。
「ここの傾斜はゆるいからピラーロックでしよう」ということになり、私とジョンはアンザイレンを組み、ポッチーはフリーで歩くことにしました。「限りなく難しいラインを歩け!」尖った場所があればその先端を歩き、急な下りはアイゼンをきちっと効かせて通過し、一歩一歩鬼のような特訓を受けながら進んで行きました。
尾根を想定して滑落…止まった 中間部はカラビナをスルー…きちっと踏ん張る踏ん張る
ピラーロックでリュックをおろし、姫の疑問とする「4人アンザイレン」の再現をしました。トップはロープをダブルエイトでセットします。最後尾もダブルエイトでセットします。なぜエイトかと言うと、ひとりがクレバスに滑落し2人目が同じようにクレバスに落ちる危険性が生じた時2人一緒に命を落とさずとも助かる命は大事にすると言う意味でハーネスにタイインする固定結びではなく、環付カラビナをダブルでセットしておけばロープを外し易いと言う意味でアンザイレンの時は固定にしない方がよいとの見解でした。(な〜るほど)

まずは急斜面を10bほどジヨンが落ち、瞬時に止める練習です。止める役目は姫のロープ操作で簡単に出来るはずです。ポッチーは急斜面を落下者がいてもカラビナスルーだと衝撃が無いことを体感する実験です。ではっ!勢いよくジョンが斜面を下りて行きました。「はよっ〜はよ〜止めてんか〜っ!」ジョンの叫び声がだんだん遠くで聞こえます。指導を受けた通りにロープ操作をしたのですが止まらずジョンは10b落ちてしまいました。仕方なくジョン自身がピッケルで滑落停止をして止めた時にはザレ場の下まで落ちていました。いやはや・・すんまへん。訓練でよかった〜。

これはパートナーチェックのミスでした。ジョンも怒るに怒れず…すまんすまん。

再度挑戦…今度は5mくらいのところで衝撃もなくして止める事ができました。
勢いよくジョンが飛び込んだ斜面です 止まった止まった…衝撃もなしに止まりましたッ
続いてポッチーの落下、姫の落下とそれぞれがポジションを変えながら体験していきました。こんな素晴らしい講習を私達だけが受けるのはもったいない気がします。さきほどジョンを落下させてしまったことから落下停止に力が入りすぎ急にロープを締めたため体に負担がきすぎて、膝をザレ場で擦りズボンに穴が空いてしまいました。アイゼントレーニングの時は使い古しの着衣が最適です。私はいつもジャージと決めています。 

雪の上では障害物さえなければ、瞬時に止めて衝撃を受けるのではなく、ロープは出してもかまわないとのことです。ただ全てのロープが出てしまうまでに止める事が大切なようです。
アンザイレンによる滑落停止はトレーニングあるのみです…アンザイレンは怖いなどと無責任なことはいわず、メンバー相互間の安全を担保するためにも積極的にトレーニングを積んでいただきたいものです。
この日のトレーニングは今期初めてだったのでザックは背負わないでやりましたが、本来はザックを背負った山行スタイルでやるのが望ましいようです。
雪上での歩行ステップ…イン・アウトステップ
基本位置 左膝を右膝のまえに上げる 元の位置より1足前に着地 右膝を左膝のまえに上げる 元の位置より1足前に着地 
フラットフィッティング・ショートステップ   
 肩幅に開いた足を平行に足踏むするように半足分ほど出しながら降りる   ピッケルはバランスとりに 
イン ザイド キックステップ 
膝下を後方に引き上げる アイゼン、靴の重さで下ろす 元の位置より半足前に 大股にならないように ゆっくり歩く 
全ての講習を終えると午後2時30分と下山に丁度よい時間となりました。ポッチーが帰り道は高座谷を通りたいと希望しましたのでポッチーを先頭にめずらしく高座谷を帰ることにしました。あとで理由をきくと「中央稜は石道・岩道だから苦手」なのだそうです。
「だ・か・らトレーニングになるんじゃないか〜!」とジョンと姫にステレオで言われていました(最初から理由を聞けば中央稜コースを利用したのになぁ)この日は平日とあって人にも合わず、イノシシにも遭わずで高座の滝まで戻ってきました。いつもの様にお稲荷様に手を合わせて本日の講習の終了です。
阪神・芦屋駅で電車に乗ると通勤帰りの人達や通学の学生さんたちでかなり混雑していました。隅に大きなリュックを3つ並べて立っていると、おもむろに「どうぞ」と女学生さんが席を譲ってくれました。
 見ると優先座席に座っていた様子でした。せっかくの善意ですので、すかさず「ありがとう」と言って座ったのは・・・勿論ポッチーです。あとで聞くと
「オレ身体弱いから」ですって。あんな大きなリュック背負っていて席を譲られるのも戸惑いがあったのですがポッチーは平気だった様子です。 
キャッスルウオール横の岩壁が崩落! 茶屋の付近の紅葉 車窓の外は暮れなずんでいました
淀川駅に着いたら時間はまだ5時前だと言うのに薄暗くなっていました。「ではでは」と帰るはずがありません。近くにある「かつかつ」と言うレストランに入り美味しい夕餉を楽しみ1日の疲れをご馳走で掻き消しました。いまポッチーが「ヘリコプターピロリ菌」とやらの治療中で医師から禁酒を言われているためアルコールは抜きではありましたが帰宅後の夕飯の準備を省略することが出来ました。。それにしてもピロリ菌って聞いたことがありますがヘリコプターピロリ菌って胃の中を飛び回っているのかしら?(正式な菌の名前はヘリコバクターピロリ菌)

アイゼントレーニングもさることながら手袋をしたまま片手でカラビナ操作が短時間で出来るように日々の練習が大切だということを痛感しました。

そういえば昔、九州の坊がつるに行き、強風で飛ばされそうになった時、参加者全員が1本のロープにカラビナスルーでアンザイレンしたことがありました。参加者の中にひとりだけ「私は大丈夫」という人がいて特別参加者だったため腕に自信があるのだろうとアンザイレンをせずに歩いていたところ突然の強風で2メートルほど吹き飛ばされたことがありました。アンザイレンさえしていれば飛ばされることはなかったと思っています。
富士山事故の様に「4人でのアンザイレン」が危険なのではなく、その方法や気象条件に問題があったのかも知れません。この問題は参加者の中の生き残った人の義務として、登山者全般に公表していただきたいとと願っています。
  私がお伺いしたいのは
・4人1組のアンザイレンではなく、2人1組のアンザイレンでは駄目だったのでしょうか。
・太さ何ミリ×長さ何メートルのロープを使っておられたのでしょうか。
・各自、直径約何センチのループを何巻持っておられたのでしょうか。
・各メンバー間は何メートル間隔で、どのように結んで歩いておられたのでしょうか。その結び方はどうだったのでしょうか。
・最初に滑落したのは何番目の人だったのでしょうか。
・どのような順番で引きずり込まれていったのでしょうか。
・ヘルメットは着用されておられたのでしょうか、頭部のお怪我は無かったのでしょうか。
・また、入山前にピッケルのピックやスピッツェ、アイゼンの爪は研ぎ上げられていたのでしょうか。

みんなの感想
ポッチー
アイゼンの装着も時間がかかるし、カラビナ操作もまだまだ練習が必要だと思っています。練習時には雪がないものの、本番ではこれに寒さも加わって大変だろうなぁと感じています。練習あるのみ!
寒いとことは駄目、危険なところはなお駄目、でも…雪山はだーいすき。
山に登れなくても、温泉さえあればどこでもいくよ。
ひ め
アイゼンを履いてのリードは「落ちたらどうしょう」と言う気持ちが大きくなりその分、足がもたついてしまいます。
「前回スムーズに行けたのだから行ける!」を励みとして日々頑張っています。
今シーズンの課題はロープワークを完璧にこなせること。これを目標にいきます。
美しい雪原と出合える日が待ち遠しいです。
JON
雪山に有効なステップは数多くあります。キックステップは有名なところですがショートステップ、インアウトステップ、リトルピッチサイドステップ、フロントポイント、インサイドステップ、アウトサイドステップ、ヒールライジングステップ、ローリングステップ、トラバースステップ、etc。雪に有効とは言いますが全て無積雪期の歩き方が基本です。
各スポーツに基本があるように山歩きにも基本があります。

 美智子姫:記0000