2013
ハイキングでこんな楽しいコースは初めてや〜危険だらけの神爾谷コース
大和葛城山のツツジの美しさに魅せられ、堂満岳でも石楠花が美しかったことを思い出しました。時期的にもう遅いかも知れませんが出かけてみることにしました。車のナビを「JR比良駅」にセットし登山口を目指します。今日は「神爾谷コース」を選びました。かなりの難所コースの様です。堂満岳は、滋賀県大津市にある標高1,057?の山で、別名は近江八景の「比良の暮雪」にちなみ「暮雪山」とも呼ばれています。 比良山地の稜線が琵琶湖寄りに張り出したところにあり、山麓や琵琶湖の対岸からよく目立ち落ち着いた美しい山容を見せてくれるはずです。 途中の標高約500?の地点には、ノタノホリという池があり、モリアオガエルが生息していることで有名です。山頂付近や金糞峠にかけての尾根に咲くホンシャクナゲを求めて訪れることにしました。頂上直下は、かなり傾斜のきつい個所もあり気を抜かずに山行を楽しみたいと思います。
イン谷口スタート 振り返ると旧ロープウエイの駅舎が見える
タイムスケジュール
06:30 大阪発
08:17 イン谷口
09:00 ノタノホリ
09:10
11:05 堂満岳 
11:22
12:00 金糞峠
12:25 北比良峠 (昼食時間含む)
12:45
13:00 神爾谷分岐
15:23 神爾の滝分岐〜神爾の滝往復
15:33
16:00 リフト山麓駅跡
16:15 イン谷口ゴール
大阪から2時間足らずでイン谷口に到着しました。橋を渡った出合山荘跡付近に駐車しました。先客の車が既に数台停まっています。出発準備を済ませ、橋を渡るとすぐ山道になっています。初めは少し下り坂で体調を整えるのに最適です。しばらく下り坂を歩いて行くと「ノタノホリ・堂満岳」と道標がありました。日差しはきついのですが木立が日蔭を作ってくれて心地よい登山道が続きます。鹿除けのビニールテープを巻き付けた大木が立ち並び、日差しを遮り、水が流れ、心地よい風を通してくれるため夏には絶好のコースです。姫がトップ、ジョン、ポッチーと続きます。「靴の長さだけ前進」し、ゆっくり、ゆっくりと進みます。バスの時間を気にしなくてよいので気楽に歩けます。
モリアオガエル
いくつもの分岐がありますが、道案内標識が整備されていて、迷うことはありません。手製の標識も掛かっており、「ノタノホリ」「堂満岳」方面、と覚えておけば大丈夫です。大和葛城山で遭遇し道迷いで「後ろを付いて行ってもいいですか?」と言う人達もいません。静かな山道を登っていきます。

出発から35分くらいで、ノタノホリに着きました。ひっそりとした池です。モリアオガエルが生息することで有名なので、まずはタマゴを産み付けているであろう木にぶら下がる泡を探しました。ありました!ありました!モリアオガエルの産卵期は大きく分けて「早春」と「梅雨時」らしいので沢山ぶら下がっていました。池の樹上の、泡の中に産み落とされた卵は、泡のなかで卵からオタマジャクシになり、約7〜10日かけて、孵化し水面へ落ちて、水中生活が始まります。落ちた泡は、オタマジャクシの餌になるのです。モリアオガエルの泡は粘り気があり、木の葉や枝をからめてつくり風がふいても落ちることはありません。途中の登山道で休憩している様子の大きなカエルを踏みつけそうになりました。
何という名前のカエルなのでしょうか。帰って調べたところモリアオガエルでした。もう少し良く観察すればよかったなあ。
ノタノホリより先は、道案内標識が少なくなりましたが道に迷うことはありません。しっかりと踏み跡がついています。
モリアオガエルの卵
尾根へ出て、急に視界が開けました。南壁の上です。目の前には烏谷山の稜線、そしてその後方にうっすら見えるのは、比良岳でしょうか。それとも打見山なのでしょうか。琵琶湖も水墨画の様に美しく見えていました。
 今日のレーションのメインはオレンジ、きゅうり、パイナップルです。暑い時は食べやすく、美味しいです。 

その他羊羹、ドライフルーツを携行しました。 
オレンジ きゅうり パイナップル
登山道にはこんな樹木がありました 飛び出すところは飛び出して、へこむべきところも飛び出して…
石がゴツゴツと現れ、木の根混じりの歩きにくい急坂となってきました。これは頂上直下の特徴なので、間もなく頂上が近いことをゴツゴツ石が教えてくれた気がします。小さな山頂部ではありますが堂満岳の山頂に到着です。5人ほどのグループが休憩をしており挨拶を交わしました。石楠花は1輪もありません。残念というより「やっぱり〜!」と言った気持ちですがショックは少ないです。 
「お先に〜」と声を掛けて、頂上から金糞峠を経由して北比良峠に向かいます。山頂に「金糞峠」と矢印入りで書かれた小さな看板に従って進みます。目印テープも少なくなり、踏み跡を頼りに進んで行きました。眼下には近畿の水瓶である琵琶湖が美しく見えていました。水墨画の世界にうっとりと見惚れてしまいました。

南比良峠からの道と合流する地点には、立派な道案内標識がありました。堂満岳山頂から40分ほどで、金糞峠に到着です。 順調な足取りです。金糞峠を直進し、花の咲いていないシャクナゲ尾根を歩きます。 突然、優雅に舞うアサギマダラを見つけました。富士見平では乱舞するアサギマダラのダンスを見ましたが比良山系では独り舞台に立つアサギマダラでした。自然の中の感動って心癒されますね。
アサギマダラの成虫は長年のマーキング調査で、秋に日本本土から南西諸島・台湾への渡り個体が多く発見され、または少数だが初夏から夏にその逆のコースで北上している個体が発見されている。日本本土の太平洋沿岸の暖地や中四国・九州では幼虫越冬するので、春から初夏に本州で観察される個体の多くは本土で羽化した個体と推測される。 
北比良峠の目印の廃屋が見えてきました。直進すると廃止になったロープウエイ山頂駅跡です。
道標に従い、右折れの神爾谷コースへの道を降りて行きました。するといきなり、アリ地獄とも呼ばれる、砂地の急坂、鎖場に出ました。かなりきついコースであることは下調べ時点から理解していましたが、これほどまでにきついとは考えていませんでしたので、コースを見た瞬間、心臓が止まりそうでした。
「これが登山道?信じられない!滑落せよと言うこと?!」看板には「危険コース」と言う意味の文字が書かれており慎重に行かなければなりません。  20mロープを出し、スワミベルトにカラビナ・ATC等を装着して設置してある錆びた長い鎖に沿って自分たちのロープを出しました。鎖にシュリンゲとカラビナで支点を取り、安全が確保されたところで、まずはポッチーを降ろしました。ロープは20mしかないのでロープの残りがわずかになれば、足場の良いところで鎖に自己ビレイを取り待機するように指示をし、二番手を姫が行きました。
ザレ場が滑り台となり落石が常に起きていますので細心の注意をして待機しなければなりません。
姫が20m降りたところで自己ビレイを取り、ATCでジョンを確保し3人同じ場所に到着したらまた同じことを5回繰り返して100mある垂直の登山道を無事降りることが出来ました。緊張しましたが、ハイキングでこんなに楽しいコースは今まで体験したことがありません。
滑り落ちるかも知れないと岩を握った手の先に「イワカガミ」と「コケモモ」と「スミレ」の群生に出合ました。人知れずひっそりと美しく咲いていました。具体的な群生場所は自然環境を守るため秘密ではありますが3000m級の山々にだけ群生するのかと思っていましたが比良山系にもこんなに沢山咲いていたとは夢心地でした。堂満岳の石楠花は有名ですがおそらくこの花たちの存在はあまり知られていない気がします。
垂直の登山道が終わったら次は谷歩きです。芦屋の地獄谷を10倍の距離にしたほどの谷を下りました。滝に出合うとロープを出し、何度も懸垂下降をして降りて行きます。残置しているトラロープは安全確認が出来ませんので自分たちの用意したロープを使いました。クライミングを経験した人と一緒でなければこのコースはお勧めできません。勿論単独でなんて論外です。単独山行で、この場所で滑落し骨折したとしても登山者の通過はないと思った方がよさそうです。

ロープ操作に時間がかかりましたが「超」が付くほど楽しいコースでした。ロープは水の中に浸かり、移動するたびにロープを巻く首筋がビショ濡れになりましたが「実践するってこういうことなんやね」と教えてもらったことを全部駆使し安全に難所を通過することができ身体は疲れているものの満足感で一杯でした。

鎖場が終わっても、岩場の急下りが続きます。「クライミングを習っててよかった!」と思う瞬間です。私達がクライミングを学ぶのはフリークライミングを楽しむためではありません。岩場の場面に遭遇したときに不安なく通過出来るためのクライミングなのです。「岩には登らない・そんな危険なことはしない」「剱岳に行くんやったらそう言ってくれたらクライミング習うやんか〜!」と二連発パンチを食らったことがありました。見解の相違ではありますが近畿の山々でも、かなり険しい岩場を通過することがあります。岩場を目の前にしたらクライミング体験が役立つことが理解して貰えると思います。
危険だぞー

私とジョンが滝の横渡りを躊躇して、危険回避のために残置ロープを利用せずに懸垂下降をしようと準備していました。
残置ロープの端は粗末な細い木で支点が作られており、体重をかければ危険きわまりないと判断し懸垂下降に用いる大木を探している間に、恐ろしいことが起こってしまいました。

ポッチーが「大丈夫、大丈夫」と、残置ロープを使い、滝の横渡りを平気で通過してしまったのです。落ちていたら命はありません。大胆と言うか怖さ知らずと言うかほんまに怖かった一瞬でした。

(滑落した場合の救助はどうしてしようかと脳裏を走った瞬間でした)
なかなかハードなコースですが、私は岩場の多い道が好きです。ダラダラと登山道だけを歩いていると「まだかなぁ〜まだかなぁ〜」と思うようになりますが岩場だと「えっ?もうおしまいなの?」と残念に思うほど時間が早く経ってしまいます。ゴロゴロ石の神爾谷は、どこから湧き出したのか、少しずつ水を含み、水の量が増え、次第に大きな流れとなり、見た目にもわかるようになりました。これが神爾谷の源流なんですねぇ。そして壮大な神爾の滝へと導かれて行くのです。以前に四万十川の源流を訪れたことがありますが、ほんの一滴が偉大なる川、母なる川「四万十川」として存在するのですから自然の不思議さに驚いてしまいます。
ロープウエイが廃止されたことで頂上には建物もなく人の住処もないため、清く透き通る水が涼しさを分けてくれました。
天神社参道の石灯籠
タニウツギ 天神社の鳥居
水量がだんだん豊かになり、清水が美しい沢を作り始めました。しばらく歩くと山の中だと言うのに(標高800m付近)に赤い鳥居が二基立っているのが見上げられました。ここには天神社の祠が祀られているそうです。神爾谷へ下り始め、谷歩き、沢筋歩きを経て爾の滝の道案内標識が見えました。4〜5人の滝見物の人達が分岐で休憩をしていました。5分ほど降りれば滝に到着です。規模の大きな滝が美しく流れ落ちていました。滝壺は白砂が敷き詰められた感じになっており、山の緑、岩の苔色と砂の白がとても美しく感じました。神爾の滝は7滝の滝群といわれています。「雌滝」落差12mもあり滝群最下流の標高470m、その上流の「分岐滝」落差10m、雄滝17m、更に上流の「小滝」落差5m、下流二滝は登山路から渓流への急峻下り路が危険なため案内標示はされていないそうです。「雄滝」段瀑(ハネ滝)標高520mは登山路に標示板で「神爾の滝」と案内されています。雄滝上流には堰堤を越えた谷の上部に崩れかかった小さな滝があるようで、それらを含めた7滝群の総称を神爾の滝というのだそうです。雄滝の上流に落ちるとされる三滝は水量が無いそうです。
 旧ロープウエイ駅舎  ストックに攻撃してくるサワガニ  ゴール・今から温泉行きです
神爾の滝の見物を終え、分岐まで戻り、後は快適な山道を下ります。滝から30分ほどでリフト山麓駅跡が見えてきました。リフト山麓駅跡の廃屋の前で記念撮影をし、さらに15分ほどアスファルト道を歩けばゴールの「イン谷口」駐車場所に到着です。15分間ほどアスファルトの道を歩きましたが、クッションのないアスファルト歩きは苦痛でたまりませんでした。「こりゃあ膝に悪いはずやなぁ」と最後の15分間だけ不満を漏らしました。帰り支度を整え、帰り道にある「比良とぴあ」で入浴を済ませ、大阪で夕食を済ませ、自宅にたどり着き、バタンキュー!
(そんなはずありません。洗濯も済ませて就寝しましたよ)
♪「琵琶湖哀歌」♪

遠くかすむは 彦根城 波に暮れゆく 竹生島 三井の晩鐘 音絶えて なにすすり泣く 浜千鳥

瀬田の唐橋 漕ぎぬけて 夕陽の湖に 出で行きし 雄々しき姿よ今いずこ ああ青春の 唄のこえ

比良の白雪 溶けるとも 風まだ寒き 志賀の浦 オールそろえて さらばぞと しぶきに消えし若人よ

君は湖の子 かねてより 覚悟は胸の 波まくら 小松ケ原の 紅椿 御霊を守れ 湖の上
みんなの感想
 ポッチーの感想
堂満岳の頂上直下はきつかったなぁ〜神爾谷コースは景色も綺麗だったし珍しい花とも出合えてよかったです。
滝の横渡りは後で2人からこっぴどく叱られました(笑)
 ひめの感想
想像以上の難コースでしたが楽しくて時間を忘れてしまうほどでした。遭遇する現場で色々なロー
プの使用方法を実践で学べてとても勉強になるコースでした。また行きたくなるコースでした。
 ジョンの感想
こけたー。「その大きな石、13歳の女の子は通れたかぁ」 
そのこころは[マタゲナイ]
そんなアホなこと言いながら歩いていたら、コケター。神爾谷 マタ イコー
    美智子姫:記0000