2013  
 2013.01.10 (THU) 十日戎の日
アイランドピークから戻った11月から、一度も山の土を踏んでいませんでした。どこかに行きたい、行かなくっちゃあ!でも体が動かない・・レポートが書けないよぉとあせりつつも2ケ月という月日が過ぎてしまいました。戎さん便りが聞こえてくる10日、やっと相棒も「どこかへ行こかっ!」と言う気分になったのです。人はみなこの時期、雪原に足跡を残していると言うのに、ちょっと出遅れました。初登りは六甲地獄谷アイゼントレーニングと決めました。
リュツクの中は登攀道具、雨具、ヘルメット等で10㎏くらいはあります。久々に重い荷物を背負った気がします。ヒマラヤではポーターさんが荷物を運んで下さり自分自身は合羽と行動食、500ミリリットルの飲料水などせいぜい5㎏から7㎏でした。だからなのかズッシリと肩に食い込む気がします。阪神淀川駅午前8時出発で電車の中は通勤の人達で座席はいっぱいです。「年甲斐もなく大きなリュック背負ってっ~と、きっと変な目で見られてるで~」隅っこの方に小さくなって乗っていましたが尼崎駅でドッと乗客が降りてしまいましたので当たり前のようにドカッと腰かけました。椅子の下からほんわかと温風が吹きお尻がとても気持ちよく「なぁなぁ終点まで乗って、折り返してまた終点まで乗っていたいわ~」と言いましたが却下
されました。無情にも40分後には芦屋駅はすぐにやってきました。
阪神電車・芦屋駅から芦屋の高級住宅地を抜けていきます
 外はそんなに寒さを感じることはありません。阪急電車芦屋川駅は平日ということもあり広場には登山者らしき人が1名だけ誰かを待っている様子でした。久しぶりの高座の滝道を少し歩くと汗ばんできました。
ポッチーは既に額から汗を流しています「一体何枚着てるん?」
信号待ちの間に1枚、2枚と脱いでいきました。ジョンもパッチが暑いと言い始めました。外気温10度はあるでしょうか、風もなくおだやかな日和です。衣類調整は歩き始めは少し寒いぐらいがちょうどいいみたいですね。
       
地獄谷の入り口でアイゼン、ハーネス、ヘルメットを装着 
さあいよいよ地獄谷へと入っていきます
「身体が重たいなぁ~」「足が上がらんなぁ」と言いながらきつい上り坂を言葉少なに歩いていきました。本当に今日は誰も見かけません。ときおり朝の散歩を終えた近所の人達が戻ってくるぐらいです。地獄谷に降りてジョンは「暑過ぎる」とパッチを脱ぎ、ハーネス・アイゼンを装着しました。
ピッケルはアイランドピーク登頂記念にと富士見平小屋の相川さんから頂いた「アイカワ・ピッケル」で、本日が初の使い始めです。
今日は地獄谷も空いています 休日ともなればハイカーがどっと入ってきます 危険ですねえ
果敢に攻めていく…ひ め
地獄谷の中は姫が先頭、ポッチーが真ん中、その後ろをジョンが歩くことに決めました。いざ出発をするのですが最初の岩場で「なんかこわ~い」と予想外の姫の声。アイゼンを履きピッケルを持っているとはいえ今までに何度もトレーニングしている場所なのですが朝の第一歩は岩が怖くて結構時間を浪費してしまいました。地獄谷の水量はチョロチョロと少なく水しぶきに濡れることはありませんでしたが一歩、一歩大切に登って行きました。

アイカワピッケルはなかなか上物のようです。ヒマラヤに置いてきた物より岩への食いつきが良いみたいに感じます。岩を登るとき、トラクション、ハイダガー、ミドルダガー、ローダガーと持つ位置は局面に併せて変えていきますが基本的には右手からピッケルは離しません。
安心して加重を移していけます。
地獄谷はトレーニングにはもってこいです…でも他の登山道ではひんしゅくものですね
いつものサメ岩で休憩中、ポッチーが「昨日テレビで見たんやけど雪道の下りではアイゼンの後ろだけで下るって言うてたけどホンマでっか?」と質問がありジョンが実践をすることになりました。アイゼンの後ろの爪だけで下るとオットット危ない!危ない!「そんな嘘をどの局のどの番組で行ってたのか?」と問いただしましたが覚えておらず、間違った知識を排除するように指導してもらいました。
アイゼン歩行の基本はフラットフィッテングで氷結した雪面の登り下りは12本爪の前爪以外の10本を全部使って上から打ち付けるように下ります。

サメ岩を過ぎたところにアイゼントレーニング時には無視して通過してはいけない大きな岩場があります。出発当初、姫が「今日はあの岩は登りたくな~い!」と訴えていたのですが岩の前でジョンの足がピタリと止まりました。「登れって言う事?」と聞くと「あったり前や!」と言われ、ピッケルを用いて右足、左足と何とか落下せずにクリアしました。降りると足がブルブルと震えていました。こわかったです。
歩行姿勢を保ちアイゼンの爪をきちっと利かせて一歩一歩
アイゼンの前爪とピッケルを使いバランスよく登って行きます
トラクション、ダガーポジションを使い分けます 
間もなく小便の滝に到着です。ここからA懸尾根を通り風の無い所を選んで早めの昼食を済ませA懸岩でクライミング練習をすることにしました。アイゼンを履き、ピッケルを持ってリードで登ります。それだけでも怖いのにジョンが写真撮影をするからポッチーにビレイを頼んだのです。こんな恐ろしいことが世の中にあるのでしょうか!2ピン目を掛けない限り私は落ちたら大怪我をしてしまいます。嫌とは言えず、命を預けることにしました。1ピン目・・2ピン目・・・無事ロープが掛かりました。その瞬間左足が攣り始め岩場の真ん中で立ち往生。何とか体制を立て直し登り終えて支点を取り登攀器具の「GIGI」を使いジョンを上でビレイします。 
ポチのビレイは怖いって…うーん「まあ、大丈夫でしょう」 
懸垂下降になったらことのほか嬉しそうな…ひ め 
中央稜を下ります ゲートロックはまだ崩落中です よく使っているホワイトフェイス
芦屋の町もくっきりです
お互いが2回登攀練習を終え、ことのほか疲れてしまったことから第一鉄塔にあがり中央稜を通り戻ってきました。高座の滝の横にあるお稲荷様に怪我のなかったことを感謝して手を合わせました。

往路には閉まっていた茶店に電気がついており「飲んでいこかっ?」ということになり寄り道をしました。駅までのくだりは少々足に身が入っているため「ビスタリー、ビスタリー」と言いながらゆっくりと駅まで歩いて戻りました。ホームに上がると丁度、快速電車が入って来て尼崎まで乗ることにしました。途中の駅で駅員さんが「次はにしのみやえびす~。にしのみやえびす~」と車内放送が流れました。「えっ?そんな駅あったっけ?」と停車駅の看板を確認すると「西宮駅」でした。季節限定の駅名の様です。本日は十日戎のため車掌さんのサービス放送のようでした。
「にしのみやえびす駅」からは本戎で福を授かった参拝者が笹を持って沢山乗り込んできました。阪神電車はん!粋なことしはりますなぁ~
 みんなの感想
●ポッチー
今年の初っ端で身体が硬く、思うように足運びができませんでした。地獄谷は何度も通過しているのですがアイゼン・ピッケルでの歩行は難しく途中でギブアップしましたが天候もよく、遠く地平線まで見れて気分爽快でした。来てよかったです。
 ●ひ め
今日の一番怖かった事は何と言っても「ポッチーのビレイ!」でした。アイゼン履いて・ピッケル持って・リードで、しかもポチのビレイ・・・命の縮まる思いでした。こわかった~!
しばらく歩いていなかったので疲れも大きかったのですがやはり日々努力が必要だと痛感しました。
 ●ジョン
久しぶりのゲレンデでは思うように体が動きませんでした。登山のためのトレーニングで岩登りは月一回はやっておかなければいけませんね。
今のコンディションを保つ努力をしなければ…ねぇ

アイカワピッケルは使い勝手が良かったですね。このピッケルはピック・ブレード部が鍛造で出来ているため、岩に対する食いつき感が非常に良かったです。
岩稜帯の中ではいつも50cmバイルを使っていたのですが久しぶりにシャフトの長いものを使ってみると歩行中に安定の良さを感じました。
アイカワピッケルとは仲良くやっていけそうです。
0 みちこ姫:記0000